マル激!メールマガジン 2024年8月28日号
(発行者:ビデオニュース・ドットコム https://www.videonews.com/ )
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マル激トーク・オン・ディマンド (第1220回)
災害関連死を防ぐ被災地支援には現場のニーズの吸い上げが不可欠
ゲスト:山岸暁美氏(在宅看護専門看護師、慶應義塾大学医学部講師)
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能登半島地震からまもなく8カ月が経とうとしているが、当初から懸念されていた災害関連死が100人を超え、申請中の件数を含めると今後も増えることが予想されている。石川県災害対策本部の発表では8月21日午後2時時点で災害関連死は110人、死者の数は339人(行方不明者3人)となった。既に全体の3分の1が震災後に亡くなっている。
災害関連死は市町村が医師や弁護士などの専門家と協議して認定するもので、統一した基準があるわけではないため、認定されるまでに一定の時間がかかる。そのため現時点での災害関連死の数がそのまま被災地の現状を反映しているわけではない。しかし、現在も被災者の多くが震災当初と変わらないほど深刻な状況に置かれていると、能登町小木地区で開業をしている医師の瀬島照弘氏は指摘する。
ビデオニュース・ドットコムでは震災発生から間もない1月中旬に、瀬島氏に同行し支援の手が届いていない老老介護の在宅避難の状況をお伝えしたが、瀬島医師が訪問している被災者の中には、今も電気も水もない半壊の自宅で暮らす高齢女性がおり、熱中症や感染症が懸念される状況にあるという。バスが復旧していても運行されている本数が少ないため、実際には医療へのアクセスが困難だったり、精神的疲労などで家に引きこもっている被災者もいる。
阪神・淡路大震災以降、幾度となく震災を経験してきた日本は、さまざまな災害関連死を防ぐ取り組みを行い、支援の仕組みもできてきた。しかし、避難所や仮設住宅などの支援はあっても、ケアを必要とする在宅被災者に対する支援は未整備だ。この20年ほど国は、地域で最期まで暮らすことを目的に地域包括ケアシステムの構築を進めており、医療・介護・福祉の制度は在宅ケアにシフトしてきているが、こと災害支援については、いまだに病院・救急医療が中心の制度になっているのが実情なのだ。
こうしたなか、災害支援の経験があり厚労省の在宅医療関連の部署に勤務したこともある在宅看護専門看護師の山岸暁美氏は、コミュニティケアを推進してきた訪問看護師やケアの専門職を派遣するDC-CAT(Disaster Community-Care Assistance Team)を起ち上げ、全国の700人近い仲間とともに能登半島地震の被災地支援を行っている。発災直後は避難所支援、その後は福祉施設のスタッフの支援など、時が経つにつれてニーズが変わる被災地の現状に合わせて、地域に根ざしたケアのあり方を模索してきたという。
避難所の被災者のケアに関する公的支援が終了したあと、山岸氏は被災者が夜間に相談できる電話相談を始めた。仕事を再開したり、日中自宅の片付けなどをして避難所に戻った被災者が夜間に体調不良を訴えても、避難所には相談する場がなく、救急車を要請する前に相談できる#7119という制度も石川県になかったのだ。
そのため今も、全国の看護師が当番制で被災者の相談に乗っているという。現在は新たな仕組みとして、看護師が被災者のもとに寄り添ってかかりつけ医とオンライン診療を行い医療へのアクセスを確保できるような仕組み作りを、各自治体と相談しながら進めている。
被災地の状況が変わっていく中でどういう支援が必要になるかは、現場に入って地域の人たちと話をして一緒に考えながら進めていかなければわからないと山岸氏はいう。災害関連死のリスクは現在被災者が置かれている生活の中にあり、その状況を理解しないと対策も立てられないのだ。
さらに、こうした支援を進めるためにも、災害法制に福祉の視点がないことが問題だと山岸氏は指摘する。全国社会福祉協議会も同様の視点で提言を行っており2年前にまとめられた「災害福祉支援活動の強化に向けた検討会」報告書では災害救助法第4条「救助の種類」に福祉を追記するよう求めている。
コミュニティケアの視点で被災地支援を続けるために何が必要か、今も能登半島の現場に足を運び続けている山岸暁美氏と、社会学者の宮台真司とジャーナリストの迫田朋子が議論した。
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今週の論点
・能登半島地震の災害関連死をこれ以上増やさないために
・看護やケアの専門家集団DC-CAT
・有事は平時の延長線上にある
・人の繋がりと知恵がわれわれの最大の武器である
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■ 能登半島地震の災害関連死をこれ以上増やさないために
迫田: ニュースでは自民党の総裁選や立憲民主党の代表選が取り上げられていますが、今回のマル激では能登半島地震の被災地の話をしようと思います。被災地の暮らしをどういうふうに支援していくのかということで、今日は実際に支援をされている看護師の方から被災地がどうなっているのか、被災地で暮らしている方がどんな思いでいらっしゃり、どんな課題を持っているのかということを伺いたいと思います。
ゲストは在宅看護専門看護師で慶應義塾大学医学部講師の山岸暁美さんです。山岸さんは1月8日から被災地に入られていて、これまでも様々な災害支援にあたってこられました。山岸さんの目から見て現在はどんな状態ですか。
山岸: 被災6市町という呼ばれ方がされますが、各市町でそれぞれ状況が違ってきているということが浮き彫りになっている感じがします。災害ハネムーン期を終え、一段落してこの先どうしようかということで気持ちが落ち込む方も増えてきています。酒量が多くなる方や、持病が悪化しつつあっても医療へのアクセスが悪い方が増えているという状況です。
迫田: 広域避難によって多くの人が外に出てしまったので、高齢者に対する色々なサービスも少なくなっています。課題がたくさん出ているのですが、それに手がつけられていないという印象があるのですが、これまでの災害と比べてどうなのでしょうか。
山岸: 能登半島全体でかなり広域に被害があったということは特徴だと思います。特に珠洲と輪島では家屋も損壊していますし、一度市外に出た若い方が戻ってきていません。2007年と2023年にも地震があったので、この先住み続けられるのかどうかという不安や、仮設住宅は建てられても復興住宅については建てられる土地があるのかといった先が見えない不安が大きくあります。
その中で、医療介護の専門職も住民の1人なので、ここに残って仕事を続けるのか、家族の安全を考えて離れるべきなのか、その葛藤が大きいということを感じます。
迫田: 全国的な感覚で言うと、広域であるという感覚があまり持てておらず、能登半島のある限定的な地域での被害だと思っています。実際には非常に広域で被害を受けていて、それぞれが全然違うということですよね。
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