泉房穂氏:人に優しい社会に変えていくためには政治の決断と予算の組み替えが必要だ
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マル激!メールマガジン 2024年1月10日号
(発行者:ビデオニュース・ドットコム https://www.videonews.com/ )
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マル激トーク・オン・ディマンド (第1187回)
人に優しい社会に変えていくためには政治の決断と予算の組み替えが必要だ
ゲスト:泉房穂氏(元明石市長)
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2024年最初のマル激は、元明石市長の泉房穂氏をゲストに招き、深刻な機能不全に陥った日本の政治をどう立て直せるかを議論した。
歯に衣着せぬ発言で注目を集めている泉氏だが、その政治の原点は刺殺された故・石井紘基元衆院議員の秘書時代にあった。さきがけ、民主党などで1993年の初当選から国会議員を3期務めた石井氏は、税の使われ方が間違っていると主張し、特に国会の審議を経ずに省庁の裁量で雪だるま状に膨らんでいる国の「特別会計」の問題点を厳しく指弾するとともに、国民主体の国民会計検査院を設置する必要性を訴え続けていたが、2002年10月25日に右翼団体の幹部に刺殺された。
もし石井氏が生きていれば、日本の国家予算はもう少し国民のために有効に使われていたに違いないと考える人が今も後を絶たない。いや、きっと今頃、総理候補になっていてもおかしくない、それほど人望に篤い政治家だった。そして、その石井氏の遺志の継承者を自任しているのが泉氏だ。
泉氏はまた、自身の少年期の体験が今日の政治信条に大きく影響を与えたという。兵庫県明石市で生まれ、東京大学を卒業後、NHKやテレビ朝日勤務を経て弁護士資格を取得し、衆院議員を1期務めた後に明石市長に転身した泉氏だが、実は既に10歳の時に明石市長になろうと決めていたそうだ。障害を持つ弟に対して明石の人々がとても冷たかったので、将来自分が市長になって、明石市を困った人に手を差し伸べられるような優しい町に変えたかったことが理由だという。
実際に泉氏は47歳で明石市の市長となり、数々の画期的な施策を打った。無駄な予算を削りその分、子ども関連の予算を2010年度の125億円から21年度の297億円まで増額した。特に18歳以下の子どもの医療費や第2子以降の保育料、中学校の給食費などを、いずれも所得制限を設けずに無料化した。
数々の踏み込んだ子育て支援を実施した結果、2015年から2020年の5年間で明石市の人口は約1万人増え、その増加率は全国62の中核市の中で1位の3.55%を記録した。また、明石市の2021年の合計特殊出生率は全国平均1.30を大きく上回る1.65まで上昇した。予算の振り替えは役所や議会の抵抗を受けたが、市長自身が決断し反対派を説得することで、難しいと考えられていた施策を一つ一つ実現していったと泉氏は言う。
市長の仕事で重要なことは、方針を決め、予算をシフトさせ、人事を適正化することの3つだと泉氏は言う。この3つこそが政治本来の機能だが、今の日本の政治家は官僚の言いなりで、まともに政治をしている人がいない。官僚は現状維持が究極の目的なので、能動的にそれまでの政策を転換する理由は何もないし、政策転換を行った結果に責任を負うこともできない。しかし、自分を選んでくれた市民の利益のために仕事をしなければならない政治家は、市民のための政策転換を断行する権限が委ねられており、それをやることこそが政治の役目だと泉氏は言う。
日本はこの30年間、何ら政策転換を実行できなかった。その結果、政治も経済も社会も停滞を続け、今や日本はあらゆる指標で先進国の最下位グループに沈んでいる。しかし、1人当たりGDPがまったく上がらず、賃金も上がらない中、国民負担率だけは上昇を続けている。これでは国民の生活が苦しくなるのは当然だ。自身の生活が苦しくなれば、困っている人に優しくしたり、手を差し伸べたりする余裕が持てなくなるのも無理からぬことではないか。
人口が増加していた高度経済成長期は、特に難しい選択をせずに現状維持の政治を行っていれば、放っておいても国は発展した。その時代は事務処理能力に長けた高学歴の官僚に国の運営を任せていればそれでよかった。しかし、日本の生産年齢人口は1995年をピークに毎年減少を続け、その傾向が少なくとも向こう50年は続くことが確実だ。そのような時代に国の舵取りを官僚に任せていては、日本はますます沈み続け、国民負担は増える一方だ。
今こそ政治が大きな政策の転換を決断しなければならないのに、依然として日本の政治家は官僚の手のひらの上で踊らされている。それこそが日本を停滞させてきた原因だと泉氏は指摘する。過去の経済成長を支えた人口や国際環境などの外部条件が大きく変わった今、日本には大きな転換が待ったなしだ。
故・石井紘基氏が目指していたものは何だったのか。その遺志を引き継いだ泉氏は、これから何をしようとしているのか。政治の役割とは何なのか。2024年を日本再生のスタートの年にするためには何が必要なのかなどについて、元明石市長の泉房穂氏と、ジャーナリストの神保哲生、社会学者の宮台真司が議論した。
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今週の論点
・故・石井紘基氏が目指したもの
・明石市独自の子ども施策はなぜ実現したのか
・政治家の本来の仕事は何か
・2024年を日本再生のスタートの年にするために
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■ 故・石井紘基氏が目指したもの
神保: 今日は2023年12月28日の木曜日です。いつも新年号には特別なゲストを呼んでいて、できればリアルタイムのニュースだけではなくもう少し大きなテーマで話し、一年間を展望したいという思いがあります。今回のゲストは元明石市長の泉房穂さんです。
泉: 今は国民の生活がきつきつなので、すべきことは国民の生活を支えることだと思います。昨今の検察の動きを見ても、スカッとはしても生活は助かりません。そこを勘違いしてはだめで、国民を救うことが大事なのであり、単に悪い人をやっつけるだけではだめですよね。
また報道については検察の情報を垂れ流しているだけなので、マスコミはほとんどノーチェックです。そこは受け取る側が情報をしっかり読み取らなければまずいかなと思います。
宮台: マスコミに就職するのは普通の学生なので、そもそも国民がマスコミの情報を受け取るという営みの中で育ってくるのであれば、応募してくる学生もチェックするという意味が理解できません。そのようなレベルまで劣化が進んでいると思います。
泉: 簡単に言えば政治家も官僚もマスコミも、東京大学法学部を卒業した同じ人種で成り立っています。その方々が普通の生活の厳しさをどの程度のリアリティをもって感じているのかは疑問です。
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