マル激!メールマガジン 2023年7月19日号
(発行者:ビデオニュース・ドットコム https://www.videonews.com/ )
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マル激トーク・オン・ディマンド (第1162回)
少子化対策と医療・介護をバーターにしてはいけない
ゲスト:結城康博氏(淑徳大学総合福祉学部教授)
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「次元の異なる少子化対策」をスローガンに掲げる岸田政権は、少子化対策の財源にこれまで高齢者にかけてきた医療・介護予算を回すつもりのようだ。しかし、それは本当に可能なのか。
今国会でも「次元の異なる少子化対策」は中心的な議題となったが、結局財源問題は年末まで棚上げされた。
先月、政府が決定した「こども未来戦略方針」は、年間3兆円半ばの安定財源を確保するとしたうえで、財源確保を目的とした増税は行わないことを明記している。財源は、社会保障の制度改革や歳出の見直し、企業を含めた社会・経済の参加者全員が連帯し公平な立場で広く負担するとして、年末に結論を出すとなっている。これを翻訳すると、医療・介護給付を抑制することで公費負担を減らし、税金ではなく社会保険から捻出した財源を少子化対策に回そうという考えのようだ。
しかし、日本の社会保障負担と税金を合わせた国民負担率はすでに50%近い。2020年の段階で日本の国民負担率の47.9%は、高福祉高負担と言われる北欧諸国のスウェーデンの54.5%と大きく変わらないレベルまで上がってきている。その一方で、昨年度の税収は過去最高の71兆円となったが、内訳を見ると所得税と消費税がそれぞれ1兆円増えている。ここでも国民負担が増えていることが見て取れる。
介護保険についても、年末の取りまとめに向けた議論が始まっている。利用者自己負担2割の年収ラインの引き下げや高所得者の介護保険料の増額が検討される。来年は診療報酬・介護報酬の改定も行われる。利用者の負担が増えれば利用控えが起こり、医療・介護給付の抑制が見込まれる。今後も高齢者人口が増え続けるなかで持続可能な制度設計は重要だ。しかし、ここから少子化対策の財源まで捻出することが本当に可能なのか。
介護保険制度に詳しい淑徳大学総合福祉学部の結城康博教授は、このままだと医療も介護も使いにくいものになるだろうと懸念を表す。特に、今の70歳代半ばの団塊の世代が85歳になる2035年ごろ、団塊ジュニア世代が親の介護に直面するときにサービスが使えないという事態が起きることは容易に予測できると結城氏は語る。
社会保障制度は複雑で分かり難い。財源についての議論が年末までに先送りされているのは、解散総選挙が意識されているからだろう。どうしても目先の利益で判断しがちになる。ことに給与から税や保険料が天引きされているサラリーマンは負担額を認識するのがそもそも難しい。このままでは、いざ医療や介護が必要となったときには遅すぎるということが起こりかねない。
全世代型社会保障というなら介護離職を防ぎ多くの人が働きつづけられる制度設計こそが重要で、今がラストチャンスだと語る結城氏と、社会学者の宮台真司、ジャーナリストの迫田朋子が議論した。
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今週の論点
・少子化対策の財源は、高齢者政策を犠牲にすることで捻出されるのか
・あと10年で限界を迎える医療・介護制度は、ますます深刻さの度合いを増している
・国民全員に関わる福祉部門は公共事業として産業化されなければならない
・一人ひとりが助ける経験と助けられる経験を持たなければ世論は変わらない
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■ 少子化対策の財源は、高齢者政策を犠牲にすることで捻出されるのか
迫田: 今日は7月12日の水曜日で、第1162回のマル激トーク・オン・ディマンドになります。今日は、高齢者対策を少子化対策と合わせて見てみようというテーマです。
前の通常国会で異次元の少子化対策と言われたものの、財源が決まらないまま年末を迎えます。また、年末に向けて高齢者に関わるものも色々と始まります。介護保険部会で止まっていた議論が再開し、年末に向けて介護保険の改革をどうするのかなど、医療と介護の報酬の同時改定が来年に控えているという中で財源問題が議論になっています。
宮台: この国はいろいろなところで腐っているので、財源を確保すればうまくいくというわけではないです。予算が決まると税金が投入されますが、中抜きで末端には二割しかいかないといったことがあります。マイナンバーカードのデジタル化でも、青息吐息の日本のダメな電話産業に権益を配分するための公共事業という色彩が強いです。
迫田: 財源が決まっていてもそうだということですよね。
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