マル激!メールマガジン

小泉昭夫氏:「永遠の化学物質」汚染の拡大を止めよ

2021/12/29 20:00 投稿

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マル激!メールマガジン 2021年12月29日号
(発行者:ビデオニュース・ドットコム https://www.videonews.com/)
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マル激トーク・オン・ディマンド (第1081回)
「永遠の化学物質」汚染の拡大を止めよ
ゲスト:小泉昭夫氏(京都大学名誉教授・社会健康医学福祉研究所所長)
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 コロナ禍で見過ごされてきた問題の中に環境問題がある。特に日本では目の前にコロナのような切迫した問題があると、環境問題は後回しにされる傾向があるようだ。
 そこで2021年最後のマル激となる今週は、「永遠の化学物質」の異名を取るPFASによる環境汚染と健康被害の問題を取り上げる。
 PFASは人工的に製造され、非常に安定していてほとんど破壊されないために「forever chemical(永遠の化学物質)」の異名を取る「パーフルオロアルキル化合物、ポリフルオロアルキル化合物及びこれらの塩類」と呼ばれる化学物質の総称で、現在4730種類ほどが存在する。このうち、特に代表的なものとして、PFOA(ピーフォア=パーフルオロオクタン酸)とPFOS(ピーフォス=パーフルオロオクタンスルホン酸)の2つの化学物質が、様々なルートから生態系に放出され、それが体内に蓄積されることで深刻な健康被害をもたらしていることがわかってきた。世界では2021年に入ってから一斉にPFASに対する問題意識が高まりを見せ、アメリカやEUが規制に乗り出しているのに対し、日本ではほとんどこれが話題にさえなっていない状況だ。
 なぜここに来て、PFASがそれほど大きな問題になっているのか。それは、第一義的にはPFASが、焦げ付かないフライパンや炊飯器、消火器、撥水加工された紙や繊維(スキー用具や雨具)、化粧品など、われわれの日常生活とは切っても切れないほど密接な繋がりを持つ化学物質でありながら、実はそれが深刻な健康被害をもたらしていることが明らかになってきたからだ。また、この人工物質が「永遠の化学物質」の異名を取るように、一度製造され生態系に放出されると、容易には分解されず、生態系の中をほぼエンドレスに循環し続けることになるからだ。それは土壌、農産物、地下水、水道水、魚など、人間が口にするものを全て汚染していく。
 現時点で日本で基準を超えるレベルのPFOA、PFOS汚染が確認されているのが、沖縄の米軍基地周辺と、大阪のダイキン工業の摂津工場周辺、そして東京の横田基地周辺だ。ただし、もちろんこれから他にもいろいろ出てくる可能性はある。
 大阪の摂津市と沖縄の宜野湾市で住民の血液検査を実施した小泉昭夫・京都大学名誉教授は、両市で住民の間に高いPFOA、PFOS濃度が確認されたと語る。
 米軍基地の周辺では、消防訓練に用いられる消火器の泡消化剤にPFOAやPFOSが使われていることがわかっており、それが地下水などを通じて漏れ出して近隣の水源を汚染した可能性が高いが、今のところ米軍が汚染の事実を認めていないため、現時点では汚染源については仮説の域を出ない状況だ。
 この問題を取材してきたジャーナリストのジョン・ミッチェル氏によると、米軍は米国内の米軍基地(主に空軍基地)と韓国、ホンデュラス、ドイツなどの米軍基地では泡消火剤によるPFAS汚染があったことを認めた上で、その利用を中止するなどの措置を取ったことを公表しているが、日米地位協定によって米軍の権利が手厚く守られている日本では、まだ汚染の事実はおろか、PFOAやPFOSを使った消火剤を使ってきたことすら認めていないという。ただし、ミッチェル氏が米・情報自由法に基づいてPFASに関連した公文書を開示させた結果、米軍は1990年にはPFASの有害性にも、消火剤による基地内の汚染にも気づいていたことがわかっているという。
 小泉氏によると、PFOAやPFOSは現在、消火器やフライパン、撥水加工繊維などの民生品だけでなく、半導体製造装置など工業的な用途でも広範に利用されているため、有害性が明らかになっても政府は直ちに全面禁止などの措置は取りにくいだろうと指摘する。ということは、われわれは一人ひとりが賢い消費者となり、自分の身は自分で守らなければならないということだ。
 今年最後のマル激は、小泉昭夫氏に「永遠の化学物質」PFASの歴史や用途、毒性などをイロハのイから聞いた上で、こうした汚染から身を守るために何をしなければならないかなどを、ジャーナリストの神保哲生と社会学者の宮台真司が議論した。

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今週の論点
・壊れず、排出されづらい「forever chemical」による健康被害
・日常にあふれている、曝露の経路
・汚染源となる米軍基地を調査もできない状況
・日本の悲惨な現状と、今後への期待
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■壊れず、排出されづらい「forever chemical」による健康被害

神保: 今回のテーマは、少なくとも主要メディアではほとんど報道されておらず、2021年の最後を飾るにふさわしいものだと考えています。「永遠の化学物質」問題ということで、ゲストには京都大学の名誉教授で現在社会健康医学福祉研究所の所長を務めておられます、小泉昭夫さんをお迎えしました。
 さっそくですが、今日の主役である「forever chemical」についてご説明いただけますか。

小泉: まず、何がフォーエバーなのかということですが、これはものすごく壊れにくいということです。代表的なものと構造式を見ると、PFOA(ピーフォア=パーフルオロオクタン酸)とPFOS(ピーフォス=パーフルオロオクタンスルホン酸)。両方とも「オクタン」がつき、これはCが8個あるという意味なんです。
 

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