松崎英吾氏:ブラインドサッカーに学ぶ、パラリンピックを100倍楽しむ方法
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マル激!メールマガジン 2021年7月21日号
(発行者:ビデオニュース・ドットコム https://www.videonews.com/)
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マル激トーク・オン・ディマンド (第1058回)
ブラインドサッカーに学ぶ、パラリンピックを100倍楽しむ方法
ゲスト:松崎英吾氏(日本ブラインドサッカー協会専務理事)
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自国民が緊急事態宣言下に喘いでいるという時に、世界中から1万を越えるアスリートを集めて華やかなスポーツ大会を開催するというのが、常軌を逸しているとの謗りは免れない。しかし、何があろうともオリンピックをやらないわけにはいかないというのが、現在の日本の政治の現実であり、またそれが実力でもある以上、われわれとしてはその間、できる限り感染症の拡大を防ぐことに努めつつ、むしろ日本政府とIOCの傍若無人ぶりを奇貨として、オリ・パラの市民社会にとっての価値を最大化することに心を注ぐべきだろう。
その意味でオリンピックに続いて開催されるパラリンピックは、これまでわれわれの社会に足りなかったのが何かを再点検し、それを克服する絶好の機会を与えてくれるに違いない。2015年にスポーツ庁ができるまで、一般のスポーツが文部科学省の所管だったのに対し、パラスポーツは厚生労働省の管轄下にあったという事実が、日本におけるパラスポーツの位置づけを反映している。そうした中、日本ブラインドサッカー協会は40人もの専従職員を抱える、パラスポーツの競技団体としては最も成功を収めている団体となっている。
2007年から事務局長として同協会を牽引し、現在は代表理事も兼務する松崎英吾氏は、ブラインドサッカーの認知度が上がっていることを歓迎しつつも、まだまだ日本の市民社会の障がい者スポーツに対する認識は、「かわいそう」や「気の毒」、「大変そう」といった、同情や上から目線で見ている傾向があり、立ち後れていると指摘する。
しかし、一度予断を抜きに観戦すると、多くの人が純粋にスポーツとしてのブラインドサッカーに魅了される。晴眼者に手を引かれながら、やや頼りなさ気にピッチに入ってきた選手たちが、いざ試合が始まると完全なアスリートに変身する。心身ともにトップアスリートとして鍛え抜かれた彼らは、聴覚、嗅覚、触覚など視覚以外のすべての感覚をフル稼働して、音源(鈴のようなもの)の入ったボールの動きや、選手自身や監督、コーラー(ブラインドサッカーでは一定の制約の下で、選手以外に監督とコーラーの2名の晴眼者がピッチ上にいる選手に言葉で指示を出すことが認められている)からのかけ声によって敵、味方の位置を把握し、ドリブルで相手を抜き、味方にパスを繰り出し、最終的にはピッチ上の唯一の晴眼者であるゴールキーパーの裏をかいた鋭いシュートをゴール隅に叩き込む。
2002年に初めて見た日からブラインドサッカーに魅せられたという松崎氏は、代表チームに入るようなブラインドサッカーの選手たちは、類い希な空間認識能力を持っていると語る。誰がどこにどのように立っているかを認識する上で、健常者は視覚情報に頼ってしまうが、実は人間には2つの耳があるため、音源に正対することで聴覚情報から音の発信源の位置や距離をかなり正確に推し量ることができるのだという。つまり、彼らには健常者とは違う意味で、見えているのだ。この面白さが分かってくると、何気なしにみていた一つひとつのプレーのすごさがわかってくる。
松崎氏は頭や言葉で偏見はいけない、差別はよくないと教えられ、自らもそう納得しているつもりでいても、それが実際の行動として反映されるまでには、越えなくてはならないハードルがあると語る。そして、そこでは実体験が大きなカギを握る。例えば、松崎氏が詳しいことは何も知らずに初めてブラインドサッカー合宿を見学に行った時、そのプレーぶりに衝撃を受け、たちまち虜になった。しかし、もし自分がいろいろ「宿題」、つまりいろいろと事前に勉強をして、ブラインドサッカーに対する特定の構えを作った上で合宿を見学に行っていたら、同じような衝撃を覚えることができたかどうかは疑問だと言うのだ。
日本ブラインドサッカー協会では企業や教育委員会からの要請を受けて、ブラインドサッカーの体験学習会を開催している。そうした体験プログラムの中で実際に目隠しをしてボールを追いかけたり、他の人と手をつないでお互いの位置を確認し合うような体験をするだけで、どんなに多くの言葉を重ねるよりも、目が見えないとはどういうことか、困っている時に助け合うとはどういうことか、そして引いてはダイバーシティ(多様性)とはどういうことなのかを理解してもらえる場合が多いと松崎氏は言う。言葉で理解することはとても重要だが、その次の一歩が更に重要なのだ。誤解を恐れずに言えば、目隠しをすると、年齢、性別、外見、障がいの有無などに対する偏見は、かえって目が見えることによって助長されている面があることにも気づくかもしれない。
今週は五輪開催を目前に控え、ブラインドサッカーを入り口にパラスポーツの魅力、パラリンピック開催の意義や障がい者に対する構えなどについて松崎氏と、ジャーナリストの神保哲生、社会学者の宮台真司が議論した。
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今週の論点
・ブラインドサッカーの選手たちが「見える」理由
・先天的に目が見えないプレーヤーが有利な面も
・人々の潜在的バイアスを探る「IAT」
・ハード面に頼り切らない、真のバリアフリーを目指して
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■ブラインドサッカーの選手たち「見える」理由
神保: 東京オリンピックの開催が1週間前に迫っており、どこも持っていないようなスクープ情報があれば何かやろうと思いますが、それはもういいかなと。ただ、世論調査で菅政権の支持率が急降下しています。
宮台: 3割を切り、危険水域に入りました。
神保: かと言って立憲民主の支持率もそれほど上がっていない。自民が21.4%、公明が2.5%、立憲が少し増えて4.5%です。内閣支持率は29.3%、不支持率が49.8%という数字です。例えばパラリンピックが中止になり、そこで日程が空いたりすると、完全に政局の時間ができてしまいますから、とにかくそれを作りたくない。実際に、韓国ドラマの権力闘争を凌ぐような事態がいま起きており、来週はそんな話をしたいと考えています。
宮台: マックス・ヴェーバーが「没人格」と呼んだようなクズが政治家をやっているという、本当に日本人にふさわしい状態になりました。
神保: そのクズぶりを臆面もなく隠さなくなりましたね。来週はそんな内容なので、今回はオリンピック、パラリンピック絡みの番組をぜひやりたいということで、「ブラインドサッカーに学ぶ、パラリンピックを100倍楽しむ方法」というテーマを企画しました。ゲストをご紹介します。僕にとってはICUの後輩でもあり、学生時代にはビデオニュースのアルバイトもしてくれていました。日本ブラインドサッカー協会の専務理事で事務局長の松崎英吾さんです。
松崎: よろしくお願いします。ここに座れて光栄です。
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