マル激!メールマガジン

西田宗千佳氏:LINEはそんなに危ないのか

2021/06/09 20:30 投稿

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マル激!メールマガジン 2021年6月9日号
(発行者:ビデオニュース・ドットコム https://www.videonews.com/ )
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マル激トーク・オン・ディマンド (第1052回)
LINEはそんなに危ないのか
ゲスト:西田宗千佳氏(フリーライター、ジャーナリスト)
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 結局のところLINEはそんなに危ないのか。他のアプリと比べてどうなのか。そもそもこれはLINEに限ったことではなく、ネットを利用する限り不可避なリスクと考えるべきものなのか。もし仮にそうだとしたら、われわれはそのリスクに対する自覚が麻痺してきてはいないか。今回はそんな疑問をITライターの第一人者の西田宗千佳氏にぶつけた上で、ではどうするべきかなどを議論してみた。
 今年3月、通信アプリのLINEの中国内にあったサーバーに保管されていた個人情報が中国国内で閲覧可能になっていたことを朝日新聞が伝えると、これまで無節操にLINEを利用してきた中央官庁や地方公共団体などが一斉に行政サービスにおけるLINEの利用停止を発表するなど、あたかもLINEという通信サービスが危険なものであるかのような扱いが相次いで見られるようになっている。
 今回の問題発覚を受けて、LINEは全てのトークデータの保管を国内のサーバーに移すことを約束しているので、とりあえずこの先、われわれLINEユーザーの情報が、例えその一部であっても中国国内に保存されることはなくなると考えてよさそうだ。しかし西田氏は、今回のLINEの中国サーバー問題は、大きく分けて2つのより重大な問題を露呈していると指摘する。それはまず、今回朝日新聞が3月17日にこの問題をスクープした時点で、LINEの少なくとも経営陣は、どの情報がどこのサーバーで保存され管理されているかを把握できていなかったこと。また、日本ではことメッセージアプリに関しては8,800万のアクティブユーザーを抱えるLINEの独壇場となっており、LINEを使わない場合に他の選択肢が事実上無いに等しい状況になっている点だ。
 今や日本では行政サービスもLINEに依存するものが多いが、LINEというサービス自体が元々、ネイバー社という韓国の大手IT企業の日本法人が提供するサービスであることは知る人ぞ知る事実だ。会社の資本や出自がどこに国にあろうが何の問題もないが、そのサーバーが一部とはいえ中国に置かれていたり、アプリケーションが中国で開発されていることなどは、われわれユーザーは説明されていない。また、現在のLINEの日本の経営陣がサーバー周りなどの技術面を正確に把握できていなかった理由は、そもそもLINEという会社が技術面では韓国のネイバー社に主導権があるところに原因があると指摘する向きも多い。
 また、これはLINEに限らず、ネットを利用する限り、自分たちの情報が何らかの形で外から見られるリスクとは常に隣り合わせであることは、この際再認識しておく必要があるだろう。その意味では、アップル社がiOS14.5から導入した、アプリケーションのプロバイダーに対してトラッキング(自身の閲覧履歴の参照)の可否をユーザーに選択させるサービスを導入したことの意味は大きい。
 このたびアップルがiOS14.5からこれを導入したのを受け、スマホのもう一つの雄であるアンドロイドを提供するgoogleも、アプリをダウンロードするgoogle playにおいて同様のサービスを開始する予定を発表している。(期日は未定)PCにおいてもブラウザーの「サードパーティ・クッキー」がオンになっていれば同様のトラッキングが可能だが、今回アップルがiOSでこれを選択制にしたことで、本人が知らない間に自身の行動履歴情報が売買されていたことを多くの人が知り、PCでも「サードパーティ・クッキー」をオフにする動きが顕著に見られるようになっているという。
 今回のLINE問題はLINEという企業のガバナンスの問題としては重要だが、それはLINEが改善した上で社会に説明責任を果たせばいいこと。しかし、ネット上の情報漏洩という意味においては、これは特にLINEに限った問題ではなく、ネットを利用する際に必ずついて回るリスクの一環と考えるべきものだろう。いたずらにLINEを危険視しても何の問題解決にもつながらない。むしろ、今回の事件を奇貨として、自分たちが無自覚なまま自らのプライバシー情報の提供を許可している状態にあることを改めて再確認した上で、コンビニエンスとリスクは常に表裏一体の関係にあることを今一度認識する良い機会にすべきではないだろうか。
 今回のLINE問題の中身とそこからわれわれが受け止めるべき教訓、アップルのトラッキング選択制度の持つ意味などについて、西田氏とジャーナリストの神保哲生、社会学者の宮台真司が議論した。

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今週の論点
・日本のインフラとなったLINEに見えたガバナンスの欠陥
・韓国企業から始まったLINEのルーツ
・大きく動き始めたウェブサービスの「トラッキング」問題
・リターゲティング広告の危険性とリテラシーの重要性
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■日本のインフラとなったLINEとそのルーツ

神保: 今回はフリーライターでITの専門家の西田宗千佳さんをゲストにお迎えして、LINEの問題を取り上げます。今年3月、ユーザーの個人情報の一部が中国で見られるようになっていたということで騒ぎになり、自治体や中央官庁がLINEの使用を制限しましたが、実際に何が起こっているか、必ずしも正確に理解できていないところがあると思います。
 簡単に時系列でまとめると、2018年8月〜2021年2月にかけて、中国にあるLINE Digital Technologyという会社の4人の技術者による、中国内サーバーの個人情報へのアクセスが判明。3月17日に朝日新聞がスクープし、中国では国内にあるサーバーについて、政府がアクセスできるようになっており、中国政府が望めばそのまま筒抜けになってしまうという問題が指摘されました。同19日にはLINEが外部検証委員会を設置、31日にはLINEに立ち入り検査が行われています。4月23日には同委員会がLINEに対し、業務委託先への適切な監督を求める行政指導。LINEはすべてのトークデータの日本国内への移管を発表しました。

宮台: トークデータが漏れているということは、新聞を読んでもわかりませんでした。

神保: そこはきちんと説明しないとわかりませんね。その後、総務省がLINEに行政指導を行い、データ管理やサイバーセキュリティに関する有識者会議を設立。最初にデータを紹介しておくと、LINEのMAU(マンスリー・アクティブ・ユーザー)は国内で8800万人にも及んでおり、全世界では1億を超えているといいます。本当にインフラと言っていいものになっている。

宮台: 事実上、日本の大人は全員使っているようなものですね。 

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