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木村草太氏:参院選:この6年の成績表と隠れ争点としての憲法改正

2019/07/24 20:00 投稿

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マル激!メールマガジン 2019年7月24日号
(発行者:ビデオニュース・ドットコム https://www.videonews.com/ )
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マル激トーク・オン・ディマンド 第954回(2019年7月20日)
参院選:この6年の成績表と隠れ争点としての憲法改正
ゲスト:木村草太氏(首都大学東京都市教養学部教授)
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 7月21日、日本は参議院選挙の投票日を迎える。無風と言われる参院選だが、この選挙がわれわれに問うているものは、決して小さくはない。
 各党がパンフレットなどで公約を発表しているが、マル激ではあえて今回改選を迎える参議院が、6年の任期中にどんな法律を通してきたかをチェックしてみた。公約は実現するかどうかわかったものではないが、過去6年の実績は否定しようがないからだ。
 2013年から2019年の6年間で、参議院は実に多くの法案を可決してきたが、中でも特に重要性の高い法案に着目すると、この6年間の日本の道程とその針路が鮮明に浮かび上がる。
 まず、この6年で与党は6本の法案を強行採決している。特定秘密保護法、安保関連法、労働者派遣法等改正、共謀罪・テロ等準備罪、働き方改革関連法、入管難民法改正の6本だ。いずれも、アメリカの意向や経済界の意向を強く反映する一方で、報道の自由や人権に対するリスクを増大させたり、弱者のセーフティネットを弱体化させる性格を持つ法案だった。
 また、加計学園への獣医学部認可の舞台となった国家戦略特区を創設する法律、司法取引の導入や盗聴権限の大幅拡大など検察の権限を大幅に強化する刑事訴訟法・通信傍受法の改正、日本の種を守ってきた種子法の廃止法案、外資の参入に道を開ける水道民営化法、依存症問題を棚上げしたまま大規模なカジノの建設を可能にするカジノ・IR法など、日本の民主主義のあり方や人権に対する姿勢、日本社会の保全に関わる重要な法案はほぼ例外なく、野党がこぞって反対する中、与党の賛成多数で可決している。重要法案と言えるもので与野党がともに賛成した法律は、非嫡出子の相続差別を撤廃したり再婚禁止期間を短縮する民法の改正案と、公職に立候補する候補者の男女の均等を求めるパリテ法くらいだ。
 首相の指名は衆院の議決が優先されることが憲法で定められているため、参院選は政権選択選挙とはならない。しかし、今回改選を迎える参議院がこうした法案を通してきたことは紛れもない事実だ。それをどう評価するかが、各有権者に問われている。
 この選挙はまた、参院でいわゆる「改憲勢力」と言われる政党が参院の3分の2以上の議席を獲得するかどうかが、隠れた大きな争点になっている。自民、公明、維新らで参院の3分の2を押さえれば、既に衆議院でも3分の2を持っていることから、憲法改正案を発議する力を得ることになる。安倍政権が憲法改正に強い意欲を見せていることから、選挙明けの政局では憲法改正が最大の政治課題として表面化してくる可能性が十分考えられる。
 現時点で自民党は、憲法9条に自衛隊を明記する案と、非常時に国会が召集できない場合は内閣だけで法律を作れるように緊急事態条項を改正する改憲案を出してきている。いずれも国の形や性格に大きな影響を与える重大な変更になる。
 憲法学者の木村草太・首都大学東京教授は、自民党の9条改正案は現在の自衛権の範囲を大きく拡げることになり、緊急事態条項は全権委任条項になりかねない危険性をはらんでいると指摘する。参院6年の実績と自民党憲法改正案をどう評価すべきかについて、木村氏とジャーナリストの神保哲生、社会学者の宮台真司が議論した。

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今週の論点
・「主体的に主体性を放棄」してきた6年間
・結集軸を見いだせない野党と、政治への期待値の低さ
・「やってる感」を出すだけの選挙公約
・国民が知らなければならない、改憲の論点
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■「主体的に主体性を放棄」してきた6年間

神保: 今日は2019年7月19日、金曜日です。参議院選挙が21日に迫っていますが、宮台さんが注目しているポイントはありますか?

宮台: れいわ新選組に関することは前回お話したのでいいとして、まず、若い人たちがほとんど政治の話をお互いにすることができない状態があります。

神保: 投票日を知らない人も多いですからね。

宮台: 政治の話などするとKYになってしまうということです。また非常に興味深いのは、多くの若い人たち――これは首都大生もそうですが、安倍さんのおかげで経済がよくなっていると固く思っている人たちが多いので、よく知られるように安倍支持が多いです。ここまでアベノミクスの失敗や持続不可能性という情報が出ているなかで、若い人たちの投票行動がどうなるのか、僕は特に気になります。

神保: まず選挙に行くかどうかですが、行ったとしても与党支持が多いということですね。さて、各政党とメディアが、選挙ごとに公約だとか、争点はこれだと言っていますが、勝手に決められる筋合いはなく、こちらが決めることです。そういう意味で、今回のテーマを設定しました。 

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