マル激!メールマガジン 2019年5月8日号
(発行者:ビデオニュース・ドットコム https://www.videonews.com/ )
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マル激トーク・オン・ディマンド 第943回(2019年5月4日)
御代替わりに考える日本人とは何なのか
ゲスト:海部陽介氏(国立科学博物館人類史研究グループ長)
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30年あまり続いた平成が終わり、日本は新しい時代に入った。先週、マル激では御代替わりの今こそ、象徴天皇制をめぐる議論を深めようではないかと呼びかけたが、今週は新しい時代を迎えるに当たり、そもそもわれわれがどこから来たのかという視点から、日本とは何なのかについて考えてみたい。
実は日本列島は約3万8千年前まで、人が住んでいない無人島だった。アフリカを出たわれわれの祖先は、ヨーロッパ、中央アジアを経由し、南北に分かれてヒマラヤを迂回した上で今から4万年ほど前に再び東アジアで合流し、それから数千年かけて対馬、沖縄、北海道の3つのルートを経由して日本に辿り着いたようだ。その後、さらに弥生時代に大陸からの渡来があって農耕が始まり、それらの民族が交わりながら現在の日本が形作られていった。とかく日本は単一民族であるかのように言われることが多いが、その実はまさに多民族国家そのものだったのだ。
ちなみに、当時は今より海面が80メートルも低く、北海道と本州、九州、四国はいずれも陸続きだったと考えられている。4島が一つになった当時の日本列島を「古本州島」と呼ぶそうだが、日本列島は一つの島だったとしても、大陸から日本に辿り着くためには、少なくとも対馬と沖縄の2つのルートについては、何らかの形で海を渡らなければならない。果たして、3万年前の人類はどうやって海を渡って日本にやってきたのだろうか。
国立科学博物館の人類史研究グループ長で人類進化学者の海部陽介氏は、彼らがどうやって海を越えてきたかを検証するために、実際に当時の技術のみを使って台湾から与那国島まで航海する実験を重ねてきた。航海といっても、何せ3万年以上も昔の話だ。航海技術もなければ帆船もない。無論、舟を作るための道具も原始的な石器程度しかない。海部氏の「渡航再現プロジェクト」は、これまで与那国島に自生しているヒメガマという草をツル植物で縛って作った草束舟や、竹を組んだ竹筏舟でチャレンジしたものの、南からの強い黒潮を乗り越えることができず、いずれも失敗に終わっている。
そして、海部氏はこの6月、直径1メートルの杉の巨木をくり抜いた丸木舟で3度目の正直に挑戦するという。学説としては証明されていても、実際にそれを実践するとなると、幾多もの困難が待ち構えていて、予想もしなかった色々なことがわかるものだと海部氏は言う。
新しい御代を迎えた日本は、歴史上初めて人口減少のフェーズに入る。3万8千年前に日本に最初の人類が降り立って以来、初めての経験だ。そうした中で日本は今後、移民の受け入れの是非を真剣に議論する必要が出てくるだろう。長らく他民族の移民を受け入れずに来た日本は、他文化に対する寛容度が必ずしも高くないことはやむを得ないことかもしれない。しかし、一歩引いて長いスパンで日本の歴史を振り返ってみると、そう、日本は正に世界の方々から集まってきた多くの民族がここでまた新たに混ざり合ってできた、立派な多民族国家でもある。人口統計学的には正に歴史的なフェーズに入ろうとしている日本には、こうした歴史的な視座も必要かもしれない。
令和最初のマル激となる今回は人類進化学者の海部氏とジャーナリスト神保哲生、社会学者宮台真司が、無人島だった日本に最初の人類が降り立った時代に思いを馳せながら、日本の悠久の歴史を議論した。
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今週の論点
・ホモサピエンスだけでなく「いろんな人類」がいた時代
・全世界に拡散していった人類
・日本に人類が移入した、3つのルート
・「3万年前の航海 徹底再現プロジェクト」とは
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■ホモサピエンスだけでなく「いろんな人類」がいた時代
神保: 今日は2019年4月27日ですが、オンエアが5月4日で、改元後最初の番組ということになります。時代が変わり、「日本論」のようなものがいろいろと出てくると思いますが、ここではもう少し長いスパンの議論をしたいです。宮台さんの本ではありませんが、「私たちはどこから来て、どこへ行くのか」というテーマです。
宮台: 2012年1月に篠田健一さんをお招きして、同じタイトルで議論をしました。もともとゴーギャンの絵から来ている言葉で、DNAをベースに分子遺伝学の観点から僕たち列島に住んでいる人たちのルーツを探るという話で、大変面白かった覚えがあります。
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