マル激!メールマガジン 2018年12月19日号
(発行者:ビデオニュース・ドットコム http://www.videonews.com/ )
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マル激トーク・オン・ディマンド 第923回(2018年12月15日)
フェイクニュースの加害者にならないために
ゲスト:笹原和俊氏(名古屋大学大学院情報学研究科講師)
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今週は、あおり運転で停車させられた車が後続のトラックに追突され、子どもたちの目の前で両親が死亡した事故の被告に、懲役18年の判決が下されたことが大きなニュースになったが、実はその事件でも、事件発生の直後に大変なフェイクニュース被害が起きていた。
容疑者の苗字と同じ名前の建設会社が、容疑者の親族が経営する会社だとの偽情報がネット上で大々的に拡散されたために、その会社は1日100件を越える嫌がらせや中傷の電話に晒され、一時は業務継続が困難な状態に追い込まれていたことは記憶に新しいはずだ。
何か大きな事件やニュースで取り上げられるような注目のイベントなどがあると、必ずといっていいほどどこからともなくフェイクニュースが現れ、それが猛スピードで拡散していくことが、今や日常茶飯事となっている。
その最たるものが、2016年の大統領選挙だった。あの選挙では、ヒラリー・クリントン候補を中傷する根も葉もないフェイクニュースが無数にSNS上に投稿され、それを信じた人たちによって拡散され、結果に大きな影響を与えたと考えられている。しかも、そのフェイクニュースのかなりの部分が、実はロシア政府の管理下にあるトロール部隊が、トランプ候補を勝たせる目的で意図的に流していたものだったことが判明するというおまけまでついている。ことほど左様にフェイクニュースの影響はとどまるところを知らない勢いだ。
実際、このまま放っておけば、世界はフェイクニュースに飲み込まれ、社会は何を信じればいいのかがわからないような状態に陥ってしまいかねないと言っても過言ではないだろう。計算社会科学が専門の笹原和俊・名古屋大学大学院情報学研究科講師は、もともと人間は「見たいものだけを見る」、「似た人とつながり影響し合う」という傾向を持っており、それがSNSの特性と合わさって、フェイクニュースに勢いを与えていると指摘する。
事実に拘束されることなく、情報をより人の感情に強く訴えるように面白おかしく加工されたフェイクニュースは、事実よりも遠く、深く、早く、幅広く拡散される。実際、誤情報がリツイートされる確立は事実よりも70%高いことがわかっている。仮にどんなに立派な訂正情報が後に発信されても、それは「事実」であるがために、誤情報の拡散スピードにはまったく追いつかない。
しかもフェイクニュースの中には、単にクリック率を上げてお金儲けを目的とするものばかりではない。中には、政治やビジネスなどで優位に立つために、特定の個人や勢力を陥れるような誤情報を拡散する、悪意に満ちたフェイクニュースもある。特に、情報源が不確かな情報は、信じてはいけないのみならず、それを拡散することで、知らぬ間に自分がフェイクニュースの加害者になってしまう可能性があることは、認識される必要があるだろう。
今週は計算社会科学の観点からフェイクニュースの発生原因や対策を研究している笹原氏と、フェイクニュースとの向き合い方について、ジャーナリストの神保哲生、社会学者の宮台真司が議論した。
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今週の論点
・フェイクニュースを推し進める、「情報過多」と「認知バイアス」
・認知バイアスの4分類と、リベラルが不利な理由
・フェイクニュースはなぜ、事実に勝ってしまうのか
・フェイクニュースの時代に、処方箋はあるのか?
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■フェイクニュースを推し進める、「情報過多」と「認知バイアス」
神保: 今回はこれまでとは少し違うアングルから「フェイクニュース」を扱おうと思います。例のあおり運転事件で、求刑23年に対して懲役18年という判決が出たことが、大きなニュースになっていますが、容疑者の名前が「石橋」だったことで、なぜか北九州の建設会社・石橋建設の息子だという話が拡散され、炎上したという問題があります。今回はそんなことも含めて、名古屋大学大学院情報学研究科講師の笹原和俊さんにお話を伺います。本屋で笹原さんの『フェイクニュースを科学する』という本を見て、計算社会科学というアングルから考えると、また違う処方箋も出てくるのかなと思いました。
今回の炎上にかかわる問題のあらましを説明すると、2ちゃんねるに石橋容疑者がこの建設会社の親族であるという書き込みが出たら、それがたちまち広がり、当日だけでも100件を超える電話がかかり、業務に支障が出て被害届も出されました。最終的には11人が、名誉毀損容疑で書類送検されています。これもやはり、フェイクニュースの一種ということになるでしょうか?
笹原: 誤情報の一種だとは思います。
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