マル激!メールマガジン 2018年5月16日号
(発行者:ビデオニュース・ドットコム http://www.videonews.com/ )
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マル激トーク・オン・ディマンド 第892回(2018年5月12日)
食品ロスを減らすためにできること
ゲスト:井出留美氏(食品ロス問題専門家)
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現在、地球には世界の全人口にあたる74億人のお腹を満たすのに十分な食料が生産されている。しかし、国連WFP(世界食糧計画)によると、今でも世界では8億人あまりの人々が、飢えに苦しんでいるという。その大きな悪因となっているのが、世界の食料生産の総量の約3割にあたる13億トンの食料が毎年廃棄されているという「食品ロス」問題だ。
日本でも食品ロスの問題が叫ばれるようになって久しい。余った食品を必要な人に届けるフードバンクなどの試みがメディアに取り上げられる事も多くなった。2008年には農水省内に「食品ロスの削減に向けた検討会」が設置され、様々な施策が模索されている。しかし、実際には日本の食品ロスはあまり改善されていない。
現在、日本は年間約646万トンの食品を廃棄している。これは全世界の食糧援助の総量を遙かに凌ぐほどの量だ。「まだ食べられる食品を捨てる」などという、経済面から見ても倫理面から見ても、どこからどう見ても正当化できない食品ロスを、なぜわれわれは減らすことができないのだろうか。
日本の食品ロスの内訳を見ると、家庭からの廃棄が289万トン、製造や流通、小売など事業者による廃棄が357万トンと、家庭系と事業系がほぼ半分ずつを占め、先進国の中では相対的に家庭の食品ロスが多い。家庭系では単に買い過ぎによる廃棄や、賞味期限切れのほか、食べ残し、知識不足や技術不足から本来は食べられる部位を捨ててしまうケースなど、やはり原因は多岐にわたる。
事業者と家庭に共通した原因が賞味期限問題だ。牛乳パックを僅かでも日付が新しい奥の方から取ろうとする買い物客の姿を見かけることが多いが、日本では特に消費者が商品の賞味期限を過剰に意識するため、賞味期限が1日でも過ぎた物は簡単に廃棄されてしまう傾向にある。消費期限と異なり、賞味期限はその日までに食べなければ危険という意味ではないが、その違いが必ずしも周知されていないのだ。
消費者の過剰な賞味期限へのこだわりは、事業者サイドにも大きな影響を与えている。『賞味期限のウソ 食品ロスはなぜ生まれるのか』の著者で食品ロスの問題に詳しい井出留美氏によると、日本の食品業界には消費者の敏感な賞味期限意識に対応するために、「3分の1ルール」なる不文律があるのだという。これは卸売業者はメーカーから賞味期限全体の最初の3分の1を過ぎたものは買わないし、小売店は賞味期限の3分の2を過ぎた商品は卸から買わないというものだそうだ。そのような業界内ルールによって、まだ賞味期限が大幅に残っている食品が流通の過程で大量に廃棄されているのだという。
3分の1ルールによって、卸からメーカーに返品される食品の総額は年間821億円にものぼるという。同じく小売が3分の1ルールを理由に卸に返品する商品は総額432億円だというから、1200億円分の食品が、この不文律によって廃棄されていることになる。ここで生じた経済的ロスは、最終的には消費者が何らかの形で負担することになるのは言うまでもない。
事業系にしても家庭にしても、食べられる食品を廃棄してもいいことは何もない。また、そもそも事業系の厳しい廃棄基準が、一体誰のためのものなのかも今ひとつ不明だ。家庭においても、賞味期限と消費期限の違いを知ることで、賞味期限が絶対的なものではないことを理解するなど、まだまだできることは山ほどありそうだ。
長年食品ロス問題に取り組んできた井出氏とともに、食品ロスが減らない生産、流通、消費の構造的問題や、フードバンクのような余った食品を必要としている人たちのために活かす活動について、ジャーナリストの神保哲生と社会学者の宮台真司が議論した。
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今週の論点
・データに表れない、見えないフードロスも
・ロスを加速させる、食品業界の「3分の1ルール」
・あらためて知る、「賞味期限」と「消費期限」
・ロスを減らすため、われわれにできること
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■データに表れない、見えないフードロスも
神保: 今回のテーマはいわゆる「食品ロス」、フードロスとかフードウェイストといわれるもので、実はきちんと扱ったことがありませんでした。
宮台: メインテーマではありませんでしたが、賞味期限問題のときに触れましたね。
神保: それにも関係する話で、賞味期限/消費期限というものが、食品ロスのひとつの大きな原因になっている、という話も今日は出ると思います。今回のテーマについて、宮台さんの方から最初になにかありますか?
宮台: 今日のゲストの方も書いていらっしゃることですが、冷蔵庫で保存していても、卵などは賞味期限より古くなってしまいます。僕は全然平気でどんどん食べるんですよ。子供たちにもそれを推奨しているのですが、「だから昭和は困るよね」というラベルを貼られてしまいます。
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