マル激!メールマガジン

内山節氏:座席争いからの離脱のすすめ

2017/01/11 23:00 投稿

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マル激!メールマガジン 2017年1月11日号
(発行者:ビデオニュース・ドットコム http://www.videonews.com/
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マル激トーク・オン・ディマンド 第822回(2017年1月7日)
座席争いからの離脱のすすめ
ゲスト:内山節氏(哲学者)
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 2017年の最初のマル激はゲストに哲学者の内山節氏をお招きし、ブレグジットやトランプ旋風に揺れた2016年を振り返るとともに、ますます生きにくくなってきたこの時代を如何に生き抜くかについて、神保哲生と宮台真司が議論した。
 高校を卒業後、独学で哲学を学びつつ、群馬の山村に移り住み、地域社会と関わりながら独自の世界観を開拓してきた内山氏は、まず国家が人々の幸福を保障できる時代がとうの昔に終わっていることを認識することが重要であると語る。
 先進国が、かつて植民していた途上国からただ同然で資源を調達できたことに加え、工業生産による利益を自分たちだけで独占できた時代は、先進国の政府が国民に対してある程度の豊かさを保障することが可能だった。しかし、そのような時代が長く続くはずがなかった。グローバル化の進展で、先進国から新興国へ、そして途上国へと富の移転が進むにつれ、先進国は軒並み、これ以上大きな経済成長が期待できない状況に陥っている。閉塞を打破するためのイノベーションが叫ばれて久しいが、そのような弥縫策で乗り切れるほど、この停滞は単純なものではない。昨今の先進国の経済停滞が構造的なものであることは明らかで、そうした中で無理に成長を実現しようとすれば、弱いセクターを次々と切り捨てていくしかない。当然、格差は広がり、共同体は空洞化し、社会は不安定化する。
 内山氏はむしろ、これまでの考え方を根本から変える必要性を強調する。国家に依存することに一定の合理性が認められた時代は、国家が提唱する価値基準を受け入れ、学歴や出世のために頑張って競争することにも意味はあったかもしれない。しかし、国家がわれわれを幸せにすることができないことが明らかになった今、この際つまらない座席争いからは離脱し、自らの足で立ち、自ら何かを作る作業に携わってみてはどうかと、内山氏は語る。それは単なる「物作り」とか「手に職を」といった類いのものだけではなく、例えば共同体を作るといった作業も含まれる。
 これまでの方法で国家が人々を幸せにできなくなった時、人々は2つの選択肢に頼るようになる。一つは、これまでのルールや価値観を曲げてでも、より強いリーダーシップを発揮できる指導者を待望することで、ロシアのプーチンやハンガリーのオルバーン、フィリピンのドゥテルテなどにその兆候は顕著だったが、ここにきて遂にアメリカまでトランプ大統領を誕生させるに至った。もう一つが、新たな枠組みを模索する動きだ。アメリカ大統領選でもサンダース候補を支持する若者の間にその萌芽が見えたが、実際は世界中で新たな社会のかたちを模索する動きが始まっていると内山氏は指摘する。
 その2つの動きのうち、今後、どちらが優勢になるかはわからない。しかし、これまでの民主的な政府にはもはや寄りかかれそうもないので、より強権的な指導者を待望するというのは、少々危ういように思えてならない。どうせやるのなら、新しい時代を切り開くムーブメントに自分なりの方法で参加してみてはどうだろうか。内山氏とともに考えた。

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今週の論点
・建前より本音で生きよう、という時代へ
・国民国家、市民社会、資本主義は、欧州の特殊事情でできたもの
・キーワードは「関係性」と「場」
・「自己実現」という言葉から卒業を
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■建前より本音で生きよう、という時代へ

神保: 2017年、宮台さんはどういう年になると見ていますか?

宮台: 「産みの苦しみの年」になればいいなと思いますね。僕はトランプの当選を待望していたし、実際ある程度予想もしていました。それは今までの直線的な、あるいは激しくなっていく流れに抗う、ブレーキをかけるいいチャンスになるからです。遅ければ遅くなるほどマズく、クリントンが当選すれば遅くなる。しかし、このトランプの当選に始まる混乱、あるいはブレグジットの予告に始まる混乱をどのぐらい早く収集できるのかということ次第では、そのブレーキがかかって新しい道に歩むということではなくて、ただカオスの中に怒涛のように突入して終わる可能性もあります。

神保: もっとヤバい方にいくルートもある。

宮台: つまりマクロにはなかなか難しいが、やはりこれで気付いた人たちがたくさんいるので、ミクロにはいろんな試みがなされて、ある種の戦いになるんだと思う。行政や市場の巨大システムへの依存を続ける人たちと、自分たちの共同体自治、あるいは生活世界という場を立て直し、再構築しようという動きがおそらく、拮抗するのでしょう。

神保: 今回はまさにそんな話をしたくて、哲学者の内山節さんにお越しいただきました。この番組は初めてですが、以前からご著書を読ませていただいています。また、個人的には釣りの話も非常に関心があります(笑)。

宮台:『日本人はなぜキツネにだまされなくなったのか』という本を出されたのが10年ほど前(2007年)ですが、大変印象深くて。

神保: さて、内山さんは哲学者ですが、大学などではなく、独学で学ばれたと。

内山: はい。ただ、哲学の歴史を見ると、そういう人は多いんです。もともと哲学は総合学問のような意味合いから来ているので、旅をし続けているような哲学者もたくさんいました。ですから、今が妙にある型で生きる時代になっているだけであって、長い歴史で見ると、そんなに珍しい話ではありません。

神保: そもそもなぜ哲学者を志されたんですか?

 

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