工藤會vs福岡県警 最終戦争勃発!? Vol.1
取材・文/東晴明
2012年7月26日、「特定危険指定暴力団」及び「特定抗争指定暴力団」の新設や当事者に代わって第三者機関が「暴力団」に代理訴訟を起こせる制度などを盛り込んだ改定暴対法案が成立した。
その前年である11年には、全国の都道府県及び一部の市町村で暴力団排除条例(暴排条例)が施行され、暴力団排除が加速している。
そうした中で、2012年12月に入って福岡県の公安委員会は改定暴対法に基づく「特定危険指定暴力団」及び「特定抗争指定暴力団」の指定のために、道仁会、九州誠道会、五代目工藤會に意見聴取を要請した。
聴取に応じた工藤會は、「他団体に比べ暴力的要求行為の件数は少ない」「他の団体よりどのように危険なのかを具体的に立証できなければ、指定は納得できない」などと反論、指定されれば取り消しを求める訴訟を起こす意向も示したことが報じられた。
日本経済新聞などは「公安委は年内にも指定」など、既に指定がなされたかのように報じ、公安委が市民に不当要求した組員を中止命令なしに逮捕できる「警戒区域」として、北九州市や福岡市など7市11町を提示したことを明らかにした。
《工藤會は最初から狙われていた?》
今回の法改定にさきがけ、2011年3月11日、福岡で県知事・公安委員長・県警本部長・北九州市長・福岡市長らによる「工藤會対策トップ会議」が開催された。この日、東日本では未曽有の大災害が起こっている。
知事らは、この会議の討論内容を「暴力団壊滅のための抜本的法的措置に関する要請」としてまとめ、翌4月に法務省や警察庁などを訪れ、要請行動をしている。
要請の前日、麻生渡福岡県知事は定例記者会見で「暴力団は『反社会的集団』であるのに、これほど長い間存続するということはおかしい。これに対する捜査は一般の市民とは違った原則でやっていいのではないか。またそうしなければ効果的な対策は取れない」と記者団に対して述べ、さらに、「(犯罪の捜査には)相当明確な物的証拠が求められるが、たとえば通信傍受は制約が多くて事実上使えない状態になっている。少なくとも指定暴力団に対してはこういうことが使えるようにする法律制度を整備してもらいたいということを中心に要請したい」と、暴力団取り締まりの重要性を訴えた。
要請の内容は、「暴対法の抜本的な改正や捜査権の強化」として、①事務所使用禁止など暴対法の強化、②暴力団に対する通信傍受法の規制緩和、③おとり捜査や司法取引の導入、④暴力団の所得に対する国税庁の調査権限強化、などが盛り込まれていた。
応対した当時の江田五月法相、安藤隆春警察庁長官、中野寛成国家公安委員長らは「前向きに検討する」と返答したと報じられた。
この要請や北九州市で相次いだ発砲事件などを受け、法案作成が進められたとされているが、「当初から警察庁主導だった」との見方もある。
「(北九州市内で相次いだ発砲事件の)犯人が捕まっていないのに工藤會をターゲットにしたのはなぜなんでしょうね。国内の全組織を網にかけるのは困難なので、幹部が自著を出版するなど知名度の高い工藤會だけにしただけではないか、との話も聞いています」(実話誌ライター)
《全国のパトカーが小倉に集結》
知事らの要請から間もなく、警察庁や警視庁が福岡県に対して異例の「職員派遣」を開始する。12年5月には警視庁が機動隊員150人を送り、パトカーも24台が輸送されている。隊員は6月上旬まで検問などの業務に当たったが、その後も全国から機動隊員が派遣され、10月には暴力団捜査専門の捜査員が10人以上福岡入りしている。
警察官らは、JR小倉駅や繁華街界隈、工藤會幹部の自宅周辺などをたくさんのパトカーや機動隊のワゴン車で無音走行し、高級車の職務質問などを繰り返している。
工藤會側は、こうした職務質問に対して対抗措置を取ったことも注目された。警察側とのやりとりを録音し、インターネット上の動画サイト「ユーチューブ」で公開したのである。(二回に続く)
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