新しいセクションでXのプロデュースを手がける、という方針が正式に決まると、僕は全国ライブハウスツアーに同行して全てのライブを観てまわった。
ライブの様子をすべて動画で記録し、ライブ後の打ち上げでメンバーと語り合い、「とにかく大きな存在になっていく」という大事なビジョンを共有しながら、メンバーの人間性を見つめ続けた。
そこにはまだ「音楽的な作業」はなかったけれど、僕にとってはとても大事な時間だった。
僕のプロデュースの基本が「愛」だったからだ。
何よりも大事なのは
夢
夢
未来
可能性・・・。
それを実現する鍵はすべて、メンバーの人間性にあった。
そして僕は、5人を愛していた。
5人が生む作品とライブパフォーマンス、そしてその魅力とエネルギーをそのまま受けとめるファンに、深い愛情を感じていた。
ツアーの毎日でそのことを実感しながら、僕は自分が期待しているXというバンドの無限の可能性が揺るぎない確信となっていく幸せを、自分の大切なエネルギーにしていった。
1988年初夏。
僕はもう「Xという物語」を心の中で描き始めていた。
その物語はまだ始まったばかりだけど、いずれ数え切れないほど多くの人たちの人生を輝かせていていくだろう、という想いが、僕の心を奮い立たせた。
「大丈夫」
この言葉を、何度繰り返したことだろう。
本当は、もうだめだ、と思っていても、大丈夫。
前がまったく見えなくなっても、大丈夫。
この言葉に、魔法のような力があった理由。
それは、「たった一つ」だったからだと思う。
たった一つの夢を手にするために。
たった一つのやり方で。
たった一つのバンドが、
たった一つの闘いをしていた。
5人だけど、たった一つになって。
そんな気持ちで送る毎日は、青春そのものだった。
辛いことがあればあるだけ、未来が見えた。
流す涙が多ければ多いほど、自分達のエネルギーが自信に変わった。
気がつくと、僕はメンバーと共に大きな炎の中にいた。
熱い熱い炎は、ひたすら広がっていくばかりだった。
(「すべての始まり」より)
(「すべての始まり」より)
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