世の中にはたくさんの職業があり、それぞれの職業にはきちんと尊い役割がある。
 
 そして、職業に従事する人によって、職務への価値観や使命感はおそらく様々だろう。
 
 私たちが実際にお世話になる場合、医師や官吏などには、できれば自分と同じような価値観と、明確で強い使命感を持っている人と出会いたい、と思うものだ。
 
 他にも、例えばお店で食事をする際、料理に対して深い情熱と責任感を持った人が作ったものを食べたい、と思うのは決してわがままではないと思う。
 
 そう考えると、私たちは常に様々な職業の人と接し、どこかでその相手の職務への向き合い方に期待をしているということがわかる。
 
 
 
 私たちが慕い、その作品に心奪われるアーティストというのもまた、れっきとした職業だ。
 
 アーティスト・芸術家という存在がきちんと職業であるからこそ、私たちは安心してアルバムを手にし、コンサートを観に行ける。彼らが社会的に正しく認められた職務を果たしているからだ。
 
 とは言え、アーティストあるいは芸術家が、単なる職業ではなく、もっと夢のある、どこか奇跡に繋がるような不思議な存在だと感じている人は多いと思う。
 
 それもまた正しい。
 
 アーティストや芸術家を、そのような存在として受けとめるのは、彼らが私たちに感動を与えてくれ、夢を見せてくれるからだ。
 
 その力が、目に見えないからだ。
 
 目に見えない不思議な力で、人生すら変えてしまうからだ。
 
 
 
 そのような、夢のような存在でありながら、私が敢えて、アーティストや芸術家もまた職業だ、と書いたのには理由がある。
 
 本人たちにとっては、そのことを意識する機会が常にあるから。
 
 そしてもうひとつ。
 
 今回の文章のテーマに繋がるのだが、アーティスト・芸術家の中には、単に職業として従事しているだけ・・・の人も数多くいるからだ。