音楽プロデューサー 津田直士の 「人生は映画 主人公はあなた」

【新連載】 津田直士エッセイ 『想いのすべて』 002 〜 自分らしい生きかた

2016/08/20 17:00 投稿

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今思うと、生きていく上で大切なことを、学校で教えてもらうことはなかった。

それが学校の限界なのであれば、別にしようがないと思う。

でも「テストで良い点をとる」とか、「校則に疑問や不満を抱かずにただ従う」とか、『現実の社会では単なる手段に過ぎない程度のこと』を『一番大切なこと』であるかのように教えるのは、勘弁して欲しいと思う。

学校で教えることはすべて副次的なことで、生きていく上で本当に大切なことは、いったい何なのか。

もしそれを伝える能力がないのならせめて、それらが本や映画、ドラマやアニメの中に描かれているのだ、とちゃんと伝えて欲しかった。

学校では教えてくれないから、結局、僕は生きていく上で大切なことを、大好きな本の中に見つけていった。

それを無事見つけることができたのは、本当にラッキーだったと思う。

なぜなら誰も教えてくれなかったからだ。

ただ、教わるのではなく自分で見つけた結果、僕は生きていく上でとても大切な姿勢を身につけることができた。

それが

『自分らしい生きかたをする』

という姿勢だった。



****************


形あるものや目に見えるものについては、世の中の様々な力や人に助けられながら、僕たちは生きている。

ケガや病気は医者に救ってもらえるし、事故や火事は警察・消防に、そして基本的な人権に関する危機は日本国に守ってもらっている。

けれど、心の中や目に見えないものを、誰かに救ってもらったり守ってもらったりすることはない。

自分しか頼りにならない。

心が弱って先が見えなくなったり、不安や後悔で生きる気力を失っても、誰かに直接助けてもらことはできない。

ポジティブなことについてもそうだ。

未来の輝きや希望の光を見つけて自分を高めていく方法を、誰かに教えてもらうことはない。

何かに夢中にある喜びも、誰かを愛する幸せも、すべて他人ではなく自分ひとりで見つけ、育てていくものだ。

そう考えると、自分が自分を救ったり、自分が自分を引っ張っていくことがいかに重要なことなのか、よくわかる。

けれど、心の中や目に見えないものについてのアドバイスや知恵は、本や映画、ドラマやアニメの中にぱっと見、分からないように描かれている中から見つけるしかない。

宗教はどうなのか、というと、これはまさにそのためにあると言ってよい位に適しているのだけれど、ひとつ残念なのは教えが洗練され過ぎていて、ある程度の精神的な成長を遂げていないと、しっかり正しく理解するのが難かしい。
これは宗教が、ある一面だけを伝えるのではなく、人間に関わるあらゆること、例えば原則として、今に加えて過去と未来について伝えるようにできているほど広範囲のことを扱っているからで、答えを求めるこどもが、直面しているひとつの悩みへの答えを求めようとしても、なかなか答えにたどり着けなかったりする。
さらに、宗教は学ぶ人間にとってリアルさが足りない、というところもある。
何といっても、教えが生まれた時代が紀元前なのだから、今という時代のリアルさはさすがに期待できない。


こうやって考えてみると、心の中や目に見えないものについて自分なりに答えを見つけていくのは、決して簡単ではないということがわかる。

でも、ただただ組織や社会の歯車・部品のように生きるのではなく、自分という存在を大切にしながら、自分の人生という映画の主人公として生きていくためには、たとえ簡単ではなくても、常に答えを探しながら生きていかなければならない。

それはすべて、個人の尊厳や心の自由のためだ。

おまけに、そうやって自分らしく生きていくことがそのまま『本当の幸せ』に直結していると、僕は思っている。

多くの人が勘違いして幸せだと思っていること、つまり目に見える「お金」や「名声」や「人気」といったものが、決して幸せそのものではなく、それどころか幸せを保証してくれるものですらないことは、今話題となっている国民的人気グループの最年少メンバーの心の中を想像してみればわかるだろう。

どれだけ「お金」や「名声」や「人気」というものに囲まれていても、個人の尊厳や心の自由が危機に瀕していれば、決して幸せではいられない。

****************



こういったことを小学生の頃から探し続けた僕はたまたま中2の頃、音楽と作曲、そしてピアノという、自分をそのまま活かせるフィールドを見つけて、『自分らしい毎日』を構築し始めていった。

では実際に『自分らしい毎日』を送れるようになったのは、いつの頃からだったのか。

プロのミュージシャンになった20才でも、Sony Musicの制作スタッフとなった23才でもない気がする。

なぜなら、Xのプロデュースが始まった頃、『自分らしい毎日』を送りたくて、必死でもがいていた記憶があるからだ。


(つづく)

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