音楽プロデューサー 津田直士の 「人生は映画 主人公はあなた」

【新連載】 津田直士エッセイ 『想いのすべて』 001.〜自分らしい生きかた

2016/08/13 20:00 投稿

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たまに悪い夢を見る。
目覚めて「ああ、良かった。夢だった」
と安心する。
その内容をぼんやり思い出しているうちに、あることに気がついた。
 
 
たまに見る悪い夢というのは、仕事や人間関係など、自分のおかれている環境に不満があって、がっかりしている夢だ。
で、目覚めると見ていた夢より、遥かに恵まれている今の現実に気づく。
 
決して裕福ではないけれど自分の能力が活かせる仕事、不思議な運命で巡り会えた大切なパートナーたち、華やかではないけれど自分らしさを全うできる日々の生活、そして現状にはまだまだ満足していなくても、輝く未来を目指していける人生。
 
これはみんな中学生や高校生の頃、自分が望んでいたことだ。
 
ではその中学生や高校生だった40年前、眠っているとき僕はどんな夢を見ていたか。
 
これもたまにだけれど、夢ではそういった望みが何かと叶っているわけだ。
つまり嬉しい夢だ。
 
でも起きるとそれはただの夢・・・。
 
現実はひたすら学校へ行き、授業とテストの毎日が続く。
 
それがとてもやるせなく、悔しかったことを思い出す。
 
そう、ちょうど今と反対だったわけだ。
 
じゃあ、いったい僕は、
いつから『自分らしい毎日』を送れるようになったのだろう?
 
冷静に考えると、過去も今も、根本的な問題やうまくいかないことに悩み、不安や後悔と闘いながら生きていることには全く変わりがない。
 
中学生の自分と今の自分を比べて、喜怒哀楽の割合やその質に大きな差があるとは思えない。
 
悩みや悲しみ、苦しみは、たとえうまくいっていようが失敗しようが、生きている間は常に同じだけ自分を攻め続けるものなのだろうか、と思ってしまう位に、絶えることはない。
 
なのになぜ、昔は「夢が輝いていて現実は灰色」、一方で今は「夢が灰色で現実が輝いて」思えるのだろう。
 
そんな素朴な疑問が、8月6日のワンマンライブが終わった翌日に浮かんだのだ。
 
 
 
ちょうど、日々想うことをエッセイの形で発表していくスタイルのブロマガ新連載を考えていたので、僕はエッセイのテーマを、その疑問への答えを探すところから始めることにした。
 
何故なら、このニコニコチャンネルの大きなテーマが『人生は映画 自分はその主人公』だからだ。
 
 
 
40年以上、喜怒哀楽の割合やその質にさほど差がなかったにもかかわらず、14才の頃より遥かに自分らしい毎日を送れている一番の理由は、おそらく『自分らしい生きかたをしたい』という想いを14才の頃、強く持っていたからに違いない。
 
『自分らしい生きかたをしたい』という想いを何より大切にしながら40年も過ごせば、実現する可能性も高くなる。
 
「石の上にも三年」だ。
 
 
では『自分らしい生きかたをしたい』と僕が切実に思ったのはいつ頃、そしてなぜだったのだろう。
 
 
 
小さな頃から僕は、「何が一番大切なのか」を考える癖があった。
今思うと、それは「本質を理解する」ことにもつながっていた。
 
幼いなりに、一番大切なことがわかれば、たいていのことは何とかなるし、他の瑣末なことはそれにつられてやってくる、ということに気づいていたようだ。
 
だから僕にとっては、授業よりも『星の王子様』や『トム・ソーヤの冒険』、『坊ちゃん』の方が大切だった。
 
なぜなら自分が求める人生への答えが、それらの本にはたくさん書いてあったからだ。
 
パッと読んだだけでは分かりにくい書き方だったけれど、僕にとっては間違いなく、それらの本に書いてあることこそが一番大切なことだった。
 
 
 
それらの本から僕が見つけたとても大きな真実は
『多くの大人は嘘だらけの社会をあきらめていて、目に見えない本当に大切なことには目を向けずに生きている』
ということだった。
 
これはマズイ、と僕は思った。
 
なぜなら僕たちこどもは、毎日学校で「大人」から数え切れないことを教わっていたからだ。
 
そして教えられることのほとんどが「絶対に正しいこと」として上から降って来るからだった。
 
騙されてはいけない、僕はそう思った。
 
上からたくさん降って来るものの中から、本当のことを自分で見つけなくてはならない、と僕は思った。
 
そうして僕は、「嘘だらけの社会をあきらめていて、目に見えない本当に大切なことには目を向けずに生きる大人」になりたくない、と思った。
 
さらに『絶対にならないぞ』と心に決めたのだ。
 
 
決心してから注意深く観察すると、そんな世の中の嘘とか、大切ではないのに大切だとされていることなどが、学校やテレビなど目につくところに沢山ある、と気がついた。

僕は少しづつ変わっていった。

まず、早く大人になりたい、と思った。

子どものままだと嘘だらけの決まりに騙されやすいからだ。

そして、自分だからこそできる特技を身につけて、早くそれを仕事にしたい、と思った。

そうしないと、世の中の嘘に負けてしまう気がしたからだ。

で、ひたすら『目に見えない本当のこと』を探すようになった。

それは学校にはなかった。

本と、一部のテレビドラマやアニメに、それは隠されていた。

暗号を解くように、僕は探し続けた。

早く大人になりたい、と願いながら。


(つづく)


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