安いと、どうしてもこういう誤解が生まれやすい。

○すき家「200円卵かけご飯」安すぎ! 材料などは安全なの?
http://biz-journal.jp/2012/08/post_599.html

――あの、大変失礼なんですけど、たとえば原料があんまりいいものじゃないとか、そういうことではないんですよね?

http://biz-journal.jp/2012/08/post_599.html より)

卵をスーパーで買うと、1パック200円しない。1パック10個だから、卵1個で20円弱。そこにご飯と人件費もろもろと、いろんなものを加えて200円はどうなのか? って議論ならまだわかるんだけど、不当に安いと。安すぎると。安すぎるということは、やばいんじゃないのかと。ちょっとした陰謀論的な。

似たような話に、ファストフードのハンバーガー業界なんかでよく流布される「実は牛肉じゃなくて、○○の肉」っていう都市伝説がある。食用のねずみの肉使ってるとか、うさぎなんじゃねえのだとか、時にはミミズだとか。

窺い知れない安さの根拠を、自分が知らない食材に求める。

「自分が知らない秘密があって、その秘密の何かをやっているから、あんなに安いんだ!」
「Ω ΩΩ<な、な、な、なんだってー!!!」

しかしながら、この手の話が都市伝説や与太話にすぎないことは、常識的に考えればわかることであるし、ちょっと原価を計算してみればわかる。

すき家の話でいえば、我々がスーパーで買う際の小売価格ベースで200円卵かけご飯が成立するのだから、お店でも出せないことはないよねと。少なくても卵が1個100円とか、そういう値段にならない限りは問題なさそう。

あと、これは意外と顧みられない話なんだけど、「あんまりいいものじゃない」素材を、「あえて」仕入れるということは高く付く。

というのは、ある程度のチェーン店になると、店舗数があるため、1日あたりの消費量が半端じゃない。

○月次推移: 2013年 | IR情報 | ゼンショー ZENSHO
http://www.zensho.co.jp/jp/ir/finance/monthly/

すき家を展開するゼンショーのIR情報によると、2012年7月時点での店舗数は1,835店。1店舗あたり1日10杯の卵かけご飯が出るとする。そうなると、すき家全体で1日あたりの卵消費量は18,350個。30日で50万個を超える。

こういう規模になると、たとえ安くても、見切り品を仕入れることができない。そりゃ時に1,000個とか、2,000個とか、「モノは悪いんだけど、お安くしますよ」みたいなブツが出るかもしれないけども、日々1万個を消費する規模になると、そういう偶然に期待できないし、そういう偶然を前提に商品をつくったり、仕入れを考えたりすることはできない。

大規模なチェーン店のメニューに載るような商品の素材に必要なことは、それが安定的に均質なレベルの素材が納入されることで、たとえ破格値でも安定的に納入されないものであれば、それを使った商品がメニューに載ることはない。せいぜい季節限定とか、店舗限定だよね。

それに「あんまりいいものじゃない」素材を安定的に生産する人がいたとしたら、その人こそアレなんじゃねえかという。事故品だからお安くっていう話なんだろうけど、いっつも事故っている生産者を信用できるかと。いやいやいや、そりゃないよねえ。

事故が怖いとか、衛生管理的に云々という話以前に、ある程度の規模のチェーン店は、その規模のために突発的に発生する事故品が使えないし、生産量が少ないマイナーな食材もまたNG。特にマクドナルドとかになると、本当に一般的な素材じゃないと、扱う量が半端じゃないから、「マクドナルドが使う」というだけで高騰しちゃうリスクがあるし。

なんせチキンタツタですら安定的に供給できないという理由で販売中止になってしまったわけで。なんで時々思い出したかのように売るかというと、食材の仕入れに目処がたった時だけ売るためで、目処が立たないと売れない。つまりレギュラーメニューとしては出せないということ。あのサイズの鶏の一枚肉を仕入れるのが難しくなってしまったんだな。量の確保が。

ついでにいうと、チキンナゲットとか、他の鶏肉を使ったメニューが相変わらずあるのはなんでだろうか。チキンタツタと同じく、鶏肉を使った商品なのに、販売中止と継続の境目はなんなのか。ここを考えると規模の大きいお店の大変さがわかるかと思います。一枚肉だと肉を切るときに切り落としが発生するけど、成型肉ならその切り落としですらもミンチにできるとか。大雑把にいうとそういう話。大雑把すぎるな。

まあ、いろいろ大変なんですよ、飲食店も。

少なくてもアレな素材を使うことの非合理性に気づいていただければ幸い。