意外ともうその日はそれ覚悟というか、それメインで、お菓子とか山ほど買い込んじゃったりして、「パパ運転がんばってね」とか言われて親父も親父で「今日はこれいつ帰れるかわかんないぞ、覚悟しろよ」とか言いながらテンション上がって、サービスエリアがある度にクルマ停めて満面の笑みでデジカメに向かってVサインで記念撮影なんかして、「腹が減っては戦ができぬ」とかわけわかんないこと言ってラーメンとかカレー食べてラジオで渋滞の情報聴いてまた興奮して、家に着く頃には下手したらディズニーランドで遊んだ奴らよりもテンション上がってたりするからね。だから周りが心配するほど当事者達はそのことを悲劇だと思っていないという。
競馬もそれと同じかもしれない。
周りから心配されて「負けたみたいだけど大丈夫?」とか「今度の日曜は教会で賛美歌を一緒に歌おう」とか気を遣ってもらえるのはとても有り難いが、当事者は競馬に負けた事をそれほど何とも思っていない。
かつて黒鉄ヒロシは言った。「俺は競馬で負けて帰る、その帰り道も好きなんだ」と。競馬仲間とジョッキーの悪口言いながらトボトボ帰る哀しい惨めな気分も含めて競馬なのであると師は代弁してくれた。
そんなGWが終わって間もなくの頃、かつて14年前に消息を絶った競馬仲間のK氏から久しぶりに電話があった。公衆電話の受話器からK氏は「今、東京にいるから明日会えないか」と言った。
俺は二つ返事で了承して翌日新宿で落ち合った。西口の呑み屋「八吉」に入って、この空白の14年間についてK氏は淡々と語ってくれた。あのあと競馬から足を洗ったこと、地元の女と結婚したこと、子供が二人いること、四浪して医学部に入学したことなど、とめどなく話してくれた。俺は安心したのと同時に、もうあの帰り道を一緒にトボトボ歩けないのかと思うとたまらなく寂しくも感じた。俺たちは、また飲む約束だけをして改札で別れた。
今週は5週連続東京G1開催の2週目、牝馬限定G1ヴィクトリアマイルである。今年で10年目になる当レースは、未だかつて6歳以上が連にすら絡んだことのない、若い牝馬が活躍するレースとなっている。
そんな中、今年狙いたいのは岩田騎乗、4歳牝馬ヌーヴォレコルトだろうか。相手には同じく4歳ショウナンパンドラ、ベルルミエールという人気薄二頭の伏兵を指名したい。決戦の日本ダービーまであと二週間。それまでになんとか軍資金をためてダービーで大勝負。がっつり的中させて、お盆の頃にはサービスエリアでVサインを決めたいものである。
2015年5月17日
新爆