まず結論から言えば、老後に1億円かかるというのはその通りとも言えますし、そうではないとも言えます。
そもそも老後に1億円かかるという根拠ですが、生命保険文化センターというところが「老後にゆとりある暮らしをするために必要な額」というアンケートをとっていて、その金額が約35万円、年に直すと420万円です。60歳で会社を退職して平均年齢近くの85歳まで生きた場合、25年間の生活費は1億500万円かかります。
一方、公的年金で同じ25年間受け取れる金額は前回お話したように6,750万円(一定の条件の下)です。したがって3000万円から4000万円不足するというのが、多くの金融機関の言い分で、「だから保険にはいりましょう」とか「投資信託を買いましょう」と勧めてくるのです。
確かに月35万円かかるのならこの数字は正しいと言えます。でも私の実感では、特に贅沢な生活をしなければそれほどかかることはありません。
あなたの生活スタイルは?
現に私の年齢は63歳。定年退職して3年経過しましたが、妻との二人暮らしにかかるお金はだいたい月に20万円程度です。
年額にして240万円。たまに旅行に行ったり、外で美味しいものを食べたりしても年間300万円使うかどうかです。25年間では7,500万円ですから、少し余裕を見て1000万円くらいあれば十分です。
但し、これには条件があります。まだ子供が学校に行っていたり、住宅ローンが残っていたりすると、この生活費ではとても無理ですし、賃貸住宅に入居している場合も家賃を考えると月20万円では厳しいかもしれません。
残りの人生でいくら必要なのかを把握する
要は、その人の状況とどんな生活スタイルをとるかによって生活費は全然違ってきます。ですから大切なことは、まず公的年金で受け取れる金額をきちんと知ることです。
さらにサラリーマンであれば、退職金や企業年金を受け取れる場合もあります。
それらの金額を合わせて入ってくる額を、まず把握する。そして次にどんな生活スタイルをするかを考え、それにかかる費用を考えた上で足らない分は自分で用意するという順序が大切です。
マスコミや金融機関に踊らされて、まず3千万とか4千万ありきという強迫観念にかられないようにすることが大切です。
現役時代にはもちろん貯蓄や投資も大切ですが、それ以上に大切なことはできるだけ早くローン等を返済し、もし退職後も子供の教育費が必要なのであればその準備を現役時代にしておくこと。
すなわち老後の生活コストをできる限り下げておくことの方が、ずっと優先だと思います。