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【新爆の競馬放談】 横領金5千万円を紙屑に変えた名馬ステイゴールド急逝

2015/02/07 20:30 投稿

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今週木曜夕方、ステイゴールド急逝との一報が俺の携帯に舞い込んだ。死因は不明。現役時代はもちろん、種牡馬となってからもオルフェ―ヴル、ゴールドシップ、ドリームジャーニーなど個性的な馬を多数輩出した名馬であった。

思い出すのはやはり98年の天皇賞(春)。G1での2着4回、シルバーコレクターとして名を馳せるキッカケとなったレースである。その前日の土曜日、当時ハタチになって1か月が経ったばかりの俺は友人の木下と京都競馬場に朝一で向かっていた。天皇賞の馬連4-5のオッズが知りたかったからだ。馬連4-5とはその1か月半前の阪神大賞典でマッチレースを演じたメジロブライトとシルクジャスティスの2頭。何度やっても同じ結果だと思わせるそのレース内容からして、天皇賞は間違いなくこの2頭の馬連にブチ込もうと決めていた。ちなみにその阪神大賞典の馬連配当は160円と安い。ただ天皇賞には別路線組のダイワオーシュウ、ローゼンカバリー、大穴テンジンショウグンが出走するとのことでオッズが割れて馬連200円は付くだろうと各紙が予想していた。もうこの1点しか考えられない。問題は、いくら突っ込むか、それだけだった。

しかし土曜の京都競馬場に着いた俺と木下はオッズモニターを見て目を丸くした。なんとその時点での馬連4-5のオッズは140円だったのだ。金曜発売での異常オッズは稀に起こるが、G1の馬連でここまで低いオッズは後にも先にも記憶がない。結局その日の後半にはどうにか200円前後まで回復したが、その異常オッズの原因が判明したのはそれから数週間後のことだった。なんと某会社役員が会社の金に手を出して馬連4-5に5千万円突っ込んでいたというのだ。総額では7億5千万円を使い込んでいたらしく、起死回生、藁をも掴む思いでの馬連4-5だったんだろう。むろん会社役員だけでなく、俺や木下も金に困っていた。当時ハタチの俺達に馬連一点に張れる額はせいぜい一人5万。それでも5万がかなりの確率で10万になる。もう当たったつもりでいた俺達は浮足立っていた。

四条大宮の木下のアパートに泊まり、天皇賞当日も再び京都競馬場へと向かった。スポーツ紙の一面はX JAPAN・hideの訃報だった。俺と木下は午後2時半、馬体重を見てから震える手で馬連4-5を5万ずつ購入した。長野五輪が開催され、横浜ベイスターズが38年ぶりの日本一となり、映画「タイタニック」がアカデミー賞を獲った1998年、曇天の5月3日、ゴールデンウィーク真っ只中の日曜だった。

結果は直線に入ってブライトとジャスティスが阪神大賞典と同じように鼻づらを合わせて並んだが、残り100メートルで10番人気のステイゴールドがジャスティスを交わした。結果1着ブライト、2着ステイゴールド、ジャスティスはステイゴールドに差されたことにより失速して4着だった。

あの時、ステイゴールドが差してこなければ横領金5千万を突っ込んで一世一代の勝負をした会社役員の人生は変わっていたのだろうかと今でもふと思う。俺や木下はどうなっていたのだろうか。あの大舞台で、すべての本命党の夢を打ち砕いた伏兵ステイゴールドはやはり名馬だったと言わざるを得ない。この馬の名前を俺は一生忘れることはないだろう。


今週はその京都競馬場で伝統ある出世レース、きさらぎ賞が行なわれる。情で馬券を買うつもりは更々ないが、ステイゴールドの仔、アッシュゴールドに重き印を打ちたい。対抗には武豊のポルトドートウィユ。奇しくも馬連4-5なのは何かの偶然だと信じよう。

新爆
2015年2月7日

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