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第十四回 自分への人的資本投資、転職でリスクを背負わないためには

2015/01/04 17:00 投稿

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前回は、身も蓋もない当たり前の話が、投資を考える上でのキホンになると申し上げました。そして、ご自身への人的資本投資がもっとも効率的な投資であろうとも申し上げました。

人的資本投資というのは、よく「これって自分への投資」などと言ってエステに行ったりするのとは異なります。また、夜学に通いつめて専門外の領域を一所懸命勉強して疲弊する、というのも、ちょっと違います。

基礎教養を身につけることも人的資本投資として重要で、全ての土台になるものではありますので、まあ、人的資本投資の「一階部分」とでも申しましょうか。

では、人的資本投資とはどのようなものでしょうか。それをここでは、「自分に対して、現場での知識・技術の取得、人脈形成や皮膚感覚の醸成など、時間と費用を投入して生産性を上げるための試み」としましょう。

社会人として生産性を上げるための試みというと、まず思い浮かぶのはOJT(オンザジョブトレーニング)です。これは立派な人的資本投資。もっと広く、社内人脈の形成とか、稟議書の書き方とか、根回しの方法とか、そんなものも人的資本投資。要は、仕事をしていてデキる奴になるために手間も時間も費用も惜しむな、ということです。

ただ、ちょっとこんな図を見てみてください。

0104tanaka1.png

こんな図を見ると、特殊技能の方が高尚なもののように思えます。プロを目指すなら、特殊技能を身につけないとね。

でも、仕事をやる上での特殊技能って、社内人脈の形成だったり、根回しの方法だったりもするわけです。それって、他者に転職したらまるで役に立ちません。なので、特殊技能を二つに分けてみましょう。

こんな感じ。

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こうやってみると、ちょっと趣が異なってきます。さて、下図のようなAさんとBさんが、それぞれ転職したらどうなるでしょうか。

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Aさんは、その会社の中でデキるやつで、視野も広くかゆいところに手が届く有能な管理職。Bさんは、そうした気配りは苦手で、どちらかというと専門領域で勝負するタイプ。どちらも会社に貢献する不可価値の程度が同じだったとしましょう。その場合、一般的には同程度の所得となるはずです。

しかしこの両人が転職すると、専務の好みを知っているとか、当社特有の早く決済がおりる稟議書の回し方とか、そんなものは役に立たなくなりますので、Aさんのその部分の付加価値はBさん並みに落ちてしまいます。一方で、Bさんは転職してもあまり生産性は変わりません。まして、その専門性が転職市場でもてはやされているような状況なら、今の会社にいるより所得が増えるかもしれません。しかし、その部分の伸び率はBさんの方がAさんより大きいでしょう。

これは要するに、Aさんは転職向きではなく、Bさんは転職が苦にならない、ということです。むかし、とある大型倒産があったときに、転職市場で明暗を分けた事例があります。Aさんタイプの人は、面接で「あなたは何が出来ますか」と問われ「私は部長職ができます」と答えて失敗し、定職につけなかったそうです。というのは、転職後のAさんに前と同じ生産性は期待できず、そうすると前と同じ給料は払えないからです。

前々回の、住宅購入は所得低下リスクを負ってしまう、という話を思い出してください。勤めている会社の業績低迷による所得低下リスクは、Bさんなら転職することで回避できますが、Aさんはそうはいかないということです。もちろん、両者とも、今の会社が順風満帆なら、同じ船に乗って同じように航海できます。でも、一旦雲行きが怪しくなった時、対応できる方法には両人は差が出てきてしまいます。

人的資本投資の傾向性の違いは、大きな意味でのリスク分散に重要な違いをもたらしてしまう、というお話でした。

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