僕は、頭を使うマンガが大好きだ。
しかしその一方で、
「このマンガは頭を使うから疲れるな」と思うこともある。
これは一見矛盾しているように見えるが、
感覚的には、何となく区別できる。

それに関して、少し言語化できそうな気がしたので、メモしておく。

まとめ:頭脳バトルは面白い。頭脳展開は疲れる。


【好きな頭脳マンガ】
ストーリーの中長期的な展開がシンプルで、明示的。

・「誰を倒すのか」(ゴール)

・「敵の目的は何か」(倒せば何が起き、負ければ何が起きるか)
・「手段、ステップ」(どういう道筋でゴールに進んで行けばよさそうか)
・「作中の物理法則」(何があり得て、何があり得ないかというルール)

などの基本骨格がシンプルかつ明示的で、コロコロ変わらない。

この中で、「手段、ステップ」内の
数話で解決するレベルの
短期的な事件解決(各バトル)だけは、複雑でもいい。

複雑な頭脳バトルはOK、
複雑な展開はNG。

各バトルで描かれる複雑な思考は、
バトルを終わらせる最後の一撃のためにある。
バトル後には尾を引かない。

※上記が満たされないと、「頭を使うから疲れる」と僕が感じるようだ。


(例1)
例えばハンターハンターは、
各念能力バトルは緻密な頭脳バトルだが、
バトルの外の枠組みが曖昧になる事は無い。
(大どんでん返しで枠ごとひっくり返る事はあるが、
 何が起きたのか、なぜ起きたのかは、非常によく分かる)

例えばGI編、
ゲンスルーを倒す過程は緻密で複雑だったが、
倒す相手、
倒す理由、

成功した場合の影響、
失敗した場合の影響、
道筋、(具体的には知らないが、
    何か修行してて、作戦も練ってるんだな、と読者はわかっている)
作中の物理法則(念能力バトルの範囲は逸脱しない)
などは明確にイメージできる。
大きな枠組みは侵食されない。
大きな枠組みの侵食とは例えば、

【嫌いな展開例】(かなり雑)
・ゲンスルーが実はビスケとグルで、途中からビスケが謎の動きをする
・ゲンスルーの仲間の妹が不治の病だと分かり、ゲンスルーを倒すのをやめて、
 病気の直し方を模索しはじめる
・ゲンスルーが実は「裏グリードアイランド」の首謀者で、
 バトル中に「よし、合格だ」とか言い始め、ゴン達は裏グリードアイランドに招待される
・ゲンスルーを倒すとグリードアイランドが消滅すると分かり、葛藤が始まる
・念の上位能力「裏念」が実はあり、それで倒す

書いてて自分で思った。めんどくせぇ!
やっぱ目の前の敵は気持よく倒したい。
ぶん殴るための準備は複雑でも大変でもいい。
でも、気持よく全力でぶん殴りたい!


(例2)
キングダムも、戦闘自体は頭脳バトルだが、
バトルの勝敗で何が起こるのか、という部分はかなりシンプルだし、
政治的な陰謀が発生しても、
大国同士が争い合っているという根底の世界観は変わらず、
かなりイメージしやすい。

【嫌いな展開例】
・中華統一を目指して各国が戦っていたが、途中でヨーロッパ勢が攻めてきて、
 色んな利害関係が一新され、新たなゲームバランスになる
 (途中で、というのがポイント。キリがついた後ならOK。)
・A国はB国と敵対していると思われていたが、
 実は裏で手を組んでいた。
 と思ったが、そう見せかけてやっぱり敵対しており、
 更にその裏をかいた黒幕が、
 A国B国両方を出し抜いて、新C国を作ろうとしている。
 それにD国が気付き、阻止しようとしている。
 それを全て知っているE国。
 そして、そのE国こそが、実は本当の意味ではA国であり、中華の始まりだった。(??)
 主人公は誰に味方すればいいか分からないし、
 誰が本当の敵かも良く分からない。
 目の前のバトルに勝つべきか負けるべきかも分からない。


(例3)
カイジなどもっと分かりやすい例で、
各ギャンブルは非常に複雑で緻密な騙し合いだったりするが、
その外の枠組みは滅茶苦茶シンプルである。
目の前の頭脳バトルで、目の前の敵を倒せば、とりあえずはオッケーそうだと分かる。
ラスボスの倒し方が具体的に分かっている訳ではないが、
目の前のギャンブルに勝ち続けていけば
いつかはゴールに辿り着けそうな雰囲気が、読者の中にある。


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これはあくまで、僕の好き嫌いなんですが、
皆さんはどうでしょうか。

とりあえず、自分の作品にも悪い意味で思い当たる節がまぁまぁあるので、
「少なくとも避けるべき事柄のチェックリスト」みたいなのは常に意識して、
気をつけたいと思いました。

「こうするべき」というシナリオ論はアテにならないが、
「これは避けるべき」というシナリオ論は便利である。

日々精進っす!!!!!!

@taks_zxim