-解説-
 
本作は、2009年に演劇ユニット「ピースピット」の本公演として上演された『悪辣 The Dirty Play』のノベライズ作品となります。『悪辣 The Dirty Play』は、劇作家・末満健一によるレパートリーのひとつ《ネオジャパネスク・チャンバラ活劇》のシリーズ第ニ弾として発表されました。

シリーズ第一弾となった『SMITH』では、「移動要塞都市」というSF的舞台設定でありながら、江戸時代を思わせる「スミス」という都で、「カスタムヒューマン」と呼ばれる超人的剣客たちの戦いを描き出しました。少年漫画のような王道ストーリー、絢爛華麗な和洋折衷の世界観、見得切りや大向うなどの歌舞伎的演出を取り入れ、その外連味溢れる劇世界が人気を博した作品です。

第ニ弾『悪辣 The Dirty Play』は、すべての法と秩序が放棄された「悪辣世」と呼ばれる時代に、いかなる手段をもってしても生き抜こうとする剣客《悪辣》たちの因縁と衝突の物語を描き出しました。歌舞伎役者のようにそれぞれが「屋号」を持つ登場人物たち。「悪名番付」というランキング制度。その番付を示す「悪名札」を巡る争奪戦。立ち合いの際は、自らの名を名乗らなければならない「名乗り上げ」の作法。様々なギミックが剣劇の世界を彩りました。

物語は二部構成。第一部では、《悪辣》たちそれぞれの因縁が明かされる。そして、第二部では、因縁によって結ばれた十人の《悪辣》たちが、血桜の舞う鴉ヶ岳に入山し、凄絶なバトルロワイヤルを繰り広げる。そのバトルロワイヤルの裏で蠢く「悪辣院」の謀略。果たして、《悪辣》たちの運命は──?

《ネオジャパネスク・チャンバラ活劇》シリーズは、ピースピットでも屈指の人気を誇り、その後、劇団Patchにおいて、歌舞伎の『青砥稿花紅彩画(通称:白浪五人男)』を下敷きとしたシリーズ第三弾『白浪クインテット』へと繋がります。そして、今もなおファンの間では新作の発表が待ち望まれるシリーズです。

今回、その人気シリーズの中から『悪辣 The Dirty Play』を原作者・末満健一の手によって小説化。新たな形で、《ネオジャパネスク・チャンバラ活劇》の世界をお届けいたします。