TRUMPシリーズ短編小説「賊は月夜に死す」
一
雪のように白い肌が砂にまみれていた。
どれぐらい眠っていたのかわからない。月明かりが頬に触れる気配で少女は目を覚ました。
瞼を開けると、廃墟の外郭が月の光に照らし出されている。
城壁のあちこちが崩れてしまった瓦礫の城。野ざらしといっても差し支えのないその場所が、少女の住処であった。さながら少女は廃墟城の姫君か。
目覚めた姫の傍らには王子の姿があった。
王子の皮膚には、ひび割れた枯れ土を思わせる皺が深く刻まれている。口元を覆う髭はすっかり色が抜け落ち、毛先は砂漠に生えるウェルウィッチアの葉のように捻じくれている。あちこち抜け落ちた歯並びは、この城の外壁と同じだ。剥いだ獣の皮を何枚も継ぎ合わせた外套を肩から羽織り、王冠はなかったが、代わりにその手には猟銃が握られていた。
「……おじい?」
少女が呼びかけようすると、老人は、ささくれ立つ人差し指
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