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現代の大戦略家エドワード・ルトワックが「孫子」から学んだこととは?|THE STANDARD JOURNAL 2

2016/01/22 18:08 投稿

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おくやま です。

実は現在、エドワード・ルトワックという
世界的な「戦略家」の人のインタビュー本の原稿を仕上げております。

もちろん聞き手は私、おくやまでして、彼が去年の10月に来日した時に、
6回ほどインタビューをしたものをまとめたものです。

テーマは私が翻訳した『自滅する中国』(http://goo.gl/KYMPTj)の
続編のような位置づけとなる中国の戦略分析で、より具体的には、
日本がいかに対中戦略を考えればいいのか、というところまで踏み込んだもの。

発売はいまのところ3月頃を予定しておりますので、
それまで詳しい内容や結論などはお教えできません。

が、「アメ通」の購読者のみなさんだけに、
いくつか重要なポイントをこっそり先に教えます。

第一が、ルトワックの戦略理論の真骨頂である
「逆説的論理」(パラドキシカル・ロジック)です。

「いやいや、おくやまさん、それって、他の本でも解説されてますよ・・・・」

と言われるのはもちろん承知です。

このロジックというのは、当然ながら
私が翻訳した『自滅する中国』でも紹介されておりますし、
おそらくこれまでルトワックの思想について日本で最も詳しく解説されている、
石津さんの『大戦略の哲人』(http://goo.gl/iFjiSZ)
という本の中の章でも触れられております。

また、ルトワック自身が自ら記した
『エドワード・ルトワックの戦略論』
(http://goo.gl/KII6PA)という主著の中で、
それが詳しく説明されていることをご存知のかたも多いかと。

ところが問題は、ルトワック本人の説明が下手で
(なんてあえて言ってしまいますが;汗)、
彼の本を読んでも、いま一つわかりづらいところがある、という点です。

余談ですが、前述の石津さんもルトワックのこの概念については
正確に把握できてはいないようで、ちょっと残念。

しかもこの概念は、ルトワックが中国をはじめとする
世界の「大国」たちが行ってくる行動を分析する際に、
最もよく活用するものなので困ったものです。

ですが、われわれ日本人には、
それを理解するための重要な知的武器があります。

それが「陰陽論」です。

「いやいや、陰陽なんてルトワックの戦略論と関係ないだろ!」

とツッコミが入りそうですが、
これまでの「アメ通」をお読みの方はすでにご存知の通り、
その陰陽論を戦略論のベースにしていたのが、孫子です。

そしてその孫子の陰陽論的な考え方から影響を受けていたのが、
なんとルトワックなんですね。

ホントかよ、という人のために、前述の『エドワード・ルトワックの戦略論』が、
日本語版の「まえがき」の中で書いていたことを引用しておきます。彼によれば、

『孫子の兵法』の最大の長所は、
普遍的で変わることのない戦略の逆説的論理
(例:戦わずして勝つなど)を、
古代ギリシアの風刺詩ヘラクレイトスよりもわかりやすく、
カール・フォン・クラウゼヴィッツの『戦争論』よりも
全体的に簡明な形で示している点にある。(p.6)

ということなのです。

で、その肝心の孫子の「逆説的論理」とは何かというと、
それは「敵と味方の相互作用によって発生するダイナミックな関係性」であり、
それを孫子は「道」、つまり陰陽論として表現しているわけです。

「なんだか、いよいよこんがらがってきたぞ・・・・」

とお感じになっているかもしれませんが、
陰陽論そのものは至ってシンプル。

なぜならその原理は、
自然のものごとの動きの中にすべて示されているからです。

たとえばわれわれは毎日、昼と夜を経験しております。
また、これをお読みの間にもみなさんは呼吸をしておりますし、
季節はめぐったりしております。

これらはすべて、自然の中のダイナミズム。道(タオ)です。

そして孫子も、そしてそこからインスピレーションを受けたルトワックも、
ある現象が片方に極端に触れると、それが「反」という作用を起こして、
反対側にふれる動きにつながると言っております。

これは実は人間の活動でも同じで、
社会も政治も、そして戦略でも、
このような一方の極端から一方の極端へと振れる
呼吸のような動きか観察できるというのです。

とくに戦争では、敵と味方という二つの極が、
互いに作用を及ぼしながら展開されている、
いわば戦略のドラマが存在するのです。

孫子にはこのようなルトワックが感じとった陰陽論、逆説的論理、
つまりパラドックスを中心とした理論が、縦横無尽に展開されております。

ぜひ孫子のCDから、このようなパラドキシカルな論理を学んでみてください。

( おくやま )



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