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なぜ、今「孫子」を学ぶ必要があるのか?|THE STANDARD JOURNAL 2

2015/12/25 16:14 投稿

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  • 奥山真司
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おくやま です。

発売開始した孫子のCDですが、
その内容についていくつかお問い合わせをいただいております。

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たとえばその質問の例として、

「新しい孫子の解釈とか言っているけど、どこが新しいの?」
「具体的には孫子のどの強調されているの?」
「いまさら新しい解釈なんてあるの?」

というものです。

これについて、私は以下の3つの点において、
今回の孫子CDの大きな特徴があると考えております。

第一に、テーマがあくまでも「戦争」(war)であるということです。

もちろんわれわれの住む日本は幸いなことに
現在「戦争をしていない」と言えるのかもしれませんが、
本CDの中で強調されているのは
極限状態の中における国家(と個人)の生きるか死ぬかの闘争状態。

「いやいや、そんな状態、われわれの現状には当てはまらないですよ」

という解釈には私も同意しますが、今後はどうなるかわかりません。

ましてや日本周辺の安全保障環境が不透明さを増しており、
しかも古代中国のような常に緊張を強いられるような状態から
生まれてきた思想を信奉している国が日本の近くにあることを考えれば、
その考えの根本を成す「戦争」的な考え
を理解しておくのが不可欠だとは思いませんか?

「戦争とは血の流れる政治であり、血の流れないのが政治である」

とは毛沢東の言葉ですが、
国際政治においては常に戦争の可能性が想定されて政治が行われている
という点に、われわれはもっと敏感になるべきでしょう。

そしてのその苛烈さを教えてくれるのが孫子なのです。

第二に、この戦略には「相手が想定されている」ということです。

日本で一般に流通している孫子本は、
それはそれで非常に役立つものですが、
決定的に欠けているのは「戦う相手」という存在。

日本で「戦略」というと、どうしても自分が打ち立てる計画ということになり、
本来の孫子が強調しているような「敵と一緒につくりあげていくもの」
というダイナミックな面は見えなくなってしまいます。

ところが本CDで紹介されている孫子は、
その関係性を「道」という言葉で表現しておりまして、
そこに相手と自分の相互作用があることが強調されております。

西洋の戦略論、とりわけエドワード・ルトワックのものでも、
こちらのアクションと相手のリアクションが戦略のダイナミズムを形成している
ことが認識されており、これはとりもなおさず非常に「孫子的」なのです。

第三に、孫子の考えのエッセンスは「相手をしっかりだませ」だということ。
残念ながら、日本の孫子本ではこの部分の理解も弱いと言わざるをえません。

これを表す有名な言葉が「兵は詭道なり」というものですが、
どうも日本の解釈だとやけに「お上品」なものとなってしまい、
「柔軟にやることだ」と説明されたりしてます。

ところが本来の意味での孫子の「詭道」は、
もっとはるかにドギツイものであり、むしろ日本の戦略文化にそぐわないものです。

なぜならこれを突き詰めて考えれば、

「相手に徹底して迷惑を押し付けろ」

ということになるからです。

そしてそこには、日本人の好むような
「正々堂々としたサムライの姿」や「騎士道」
のような精神はひとかけらも感じられません。

「うわっ、キッツイな」と感じられた方は、それはそれで正しい反応です。
なぜなら日本人が本来学ばなければならなかった孫子の戦略論というのは、
まさにこのような「キッツイ」戦略論だからです。

この孫子の戦略論ですが、私はこれをそのまま個人の生活に応用しすぎると、
その人の人生は破綻すると考えております(苦笑)

ところがそれを信奉している国や、そのような戦略的な行為を日本に対して
(おそらく孫子そのものを知らずに)行ってきている国がある、
もしくは国際政治というものが常にそのような状態にあるということを考えると、
やはりわれわれとしては、最低限の知識として、
このまやかしのない「戦略論としての孫子」を知っておく必要があるのです。

この正月休みを機に、ぜひこの冷酷な孫子のCDをご堪能いただければ幸いです。
( おくやま )



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