おくやまです。

前回の放送で和田さんがVIZIOという
アメリカの新興テレビ会社について話をされていたことについては、
番組をごらんになったみなさんはすでにご存知のことと思います。

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▼ニコニコ動画|奥山真司の「アメ通LIVE」(20150113)
http://www.nicovideo.jp/watch/1421229078

▼Youtubeチャンネル|THE STANDARD JOURNAL
http://youtu.be/Z8A-Zrgcqv8
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この時に和田さんが使った概念が「戦略の階層」。

もちろんこれは、私がイギリスに行って一番最初に指導教官であった
コリン・グレイ教授に教えてもらったアイディアでありました。

この「戦略の階層」ですが、
私は実にさまざまな現象の分析に使えると思いまして、
本メルマガの他、地方に講演に行かせていただいた時も
必ず説明するようにしております。

なぜ私がここまでこの概念にこだわるのかと言いますと、
それはこれを知らないがために、日本人は今までかなり損をしている
と考えているからです。

たとえば和田さんが使った例を参考にすれば、
日本はテレビや家電の「技術力」では世界でもダントツなのに、
技術より上の階層にある「戦術」や「作戦」などで
勝負をしかけてくる韓国系、
さらには最近では中国系や(消滅したはずの)
アメリカの会社に負けはじめております。

とくにVIZIOという会社、たった90人ほどの社員で、
ハードウェアの技術の部分はさておき、
企画や販路やマーケティングという「上の階層」で勝負することにより、
創立してからたった十年ほどで、アメリカ国内での販売台数トップになってます。

「いや、それでも技術があればいいんだ、ものづくりが優れていればいいんだ」

というのは、たしかにその通りかもしれません。

ただしいくら技術が優れていて、ものづくりが優れていようとも、
それが活用されたり、作ったものが売れてお金が入ってこなければ、
破産して終わりなのです。

では破産から逃れるにはどうすればいいか。
それは、より上の「階層」で対処することです。

この場合は技術だけでなくマーケティングや販路の開拓、
そして究極的には製品や会社、
さらにはトップ個人のイメージやアイデンティティという
「世界観」の部分で勝負していくしかないのです。

実際にそれをやって日本の企業を駆逐してきたのが韓国系のメーカーであり、
その究極の形のものを実現しているのが、
今回のアメリカのVIZIOであることは言うまでもありません。

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では日本の会社や個人が、
このような技術のような下の階層で負けるような状態から
脱却するにはどうすればいいのでしょうか?

そのヒントとなる歴史の一例が、
私が専門とする地政学の話の中にあります。

第二次大戦時のドイツといえば、
世界最強の軍隊としてその名が知られており、
いまでも日本の軍事マニアの人々の中では
世界最強だったと賞賛する人は多数おります。

たしかによく見てみると、技術レベルだけでなく、
戦術や作戦、さらに軍事戦略の面でも最強でした。

単純にいえば、軍事的には
周辺国に負ける要素はまったくありませんでした。

ところが20数年前の第一次世界大戦の時と同じように、
1945年の5月にはボロ負けしてしまいます。
世界最強の軍隊を持っていたにもかかわらず、です。

ではなぜ負けたかというと、
「戦略の階層」でいうところの「大戦略」のレベルが
極端に弱かったからです。

この「大戦略」のレベルは、具体的には軍の準備、
つまり兵站や軍の編成、そして国が持っている軍事同盟のような、
安全保障全般にかかわる大きな問題がかかわってくるレベルのことです。

私が翻訳した『幻想の平和』という本の中で、
著者のクリストファー・レインというリアリストの学者は、

大戦略では

「国家の同盟相手や、海外への軍事コミットメント、
既存の国際秩序の中におけるそのかかわり合いの概念、
そして軍隊の規模と構造などが決定される」

と述べております。

たしかにそういわれてみれば、当時のナチス・ドイツは、
軍事的、つまり「戦略の階層」でいうところの
「軍事戦略」のレベルまでは最強でした。

ところがそれ以上のレベル、
つまり「大戦略」やその上の「政策」などのレベルでは、
失敗につぐ失敗をしておりまして、
結局は国を滅ぼしてしまいました(この点では日本も一緒)。

さて、その反対だったのがイギリス。

当時の彼らは軍事的にはそれほど強くなかったわけですが、
その上の「大戦略」では強かった。

その一例が、同盟国として(第一次世界大戦の時と同様に)
アメリカを味方につけて戦争に引き込んだことや、
大きなレベルでものごとを考えていた点にありました。

とりわけイギリスではマッキンダーのような人間が、
まさに「大戦略」であるところの地政学の知識を
語れるような土壌があったということが大きいわけです。

ちなみにマッキンダー自身は自分の理論が
「大戦略」のレベルにあることを自覚しておりまして、
晩年最後の1943年(第二次大戦中!)に
フォーリン・アフェアーズという雑誌に載せた記事の中で、

「アメリカ人の書いたものの中には、
しばしば大戦略という言葉が登場する。
しかしこれを完成させるためには、歴史や経済問題ばかりでなく、
地理的な面でも大きな一般概念で整理しておくことが必要である」

と述べておりまして、自分の地政学的な理論は
「大戦略」であることを認めているのです。

結果的にイギリスは戦争で徹底的に疲弊し、
戦後には植民地を手放さなければならくなったわけですが、
それでも戦争では「勝者」として
戦後の世界秩序の担い手として参加しております。

そしてこの勝因は、ドイツとくらべて「軍事戦略」のレベルではなく、
ひとつ上のレベルである「大戦略」において優れていた点にあると言えます。

ようするに、上の階層で勝っていれば、なんとか勝てるのです。

ライバルがある一定のレベルで優れているなら、
その上のレベルで勝負をかける・・・

これは国の運命を決める戦争だけでなく、
実は個人でも企業でも、
まったく同じようなことが言えるのではないでしょうか?

そのようなことを考える際の最大のヒントとなるのが「戦略の階層」です。

みなさんがものごとを戦略的に考える際に、
ぜひこの概念を参考にしていただければ幸いです。

▼「戦略の階層」を徹底解説するCD
http://www.realist.jp/strata.html

( おくやま )


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