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米中は必ず激突する!(by ミアシャイマー教授)|THE STANDARD JOURNAL

2014/10/02 17:45 投稿

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おくやまです

ニコ生の番組などでも話しておりますが、
私が翻訳をしたミアシャイマーとカプランの本が、
今月の末に出版されます。

これを書いている時点では、
原稿のチェックもすべて終え、
あとは出版されるのを待つばかりの状態です。

そこで今回は、このミアシャイマーの
『大国政治の悲劇』<改訂版>のエッセンスを、
出版にさきがけて、いち早くみなさんにご紹介します。

以下にご紹介する小論文は、
ミアシャイマーが2004年の末、
つまりいまから10年前に書いたものですが、
これがまさに、今回の改訂版エッセンスとなっております。

題名は「なんじゃそりゃ!?」という感じですが、
読んでみると「なるほど、納得・・・」という内容です。

これを読んでみなさんがどうお感じになるかどうかは別として、
とにかく極めて「リアリズム」にあふれる
彼の「骨太」の理論を感じてみてください。

===
※フォーリン・ポリシー誌上でのブレジンスキー氏との論戦※

「バンビよりもゴジラになるほうが良い」

中国が平和に台頭することはできないし、
もし今後20~30年間このまま劇的な経済成長が続けば、
中国とアメリカは(戦争の可能性を含む)
かなり激しい安全保障競争を繰り広げることになるだろう。

インド、日本、シンガポール、韓国、ロシア及び
ベトナムなどの中国周辺のほとんどの国々は、
中国のパワーを封じ込めるために、
アメリカ側につくことになる公算が大きい。

アジアの将来を予測するためにまず我々に必要なのは、
発展しつつある新興国がどのように行動し、
それに対して他の国々がその新興国に対して
どのように反応するのかを教えてくれる、
一つの理論(セオリー)である。

私の国際政治の理論(オフェンシヴ・リアリズム)では、
最強の国家というのは、自分の存在する地域で
覇権(ヘジェモニー)を確立しようとするのと同時に、
自分のライバルとなる大国が他の地域で
覇権を確立しようとするのを阻止するよう動くことが
予測されている。

全ての大国にとっての究極の目標は、
世界権力の分け前を最大化し、
最終的には国際システム全体を支配することにあるからだ。

国際システムにはいくつかのハッキリとした特徴がある。
その中で最も重要なのは、
「国家はアナーキー(無政府状態)の中で生きている」ということであり、
これは単純に「彼らの上には最高権威となる存在が無いという」ということだ。

全ての大国は、軍事的にある程度の攻撃力を持っているものであり、
これは彼らがお互いに害を与え合うことができる存在であることを意味している。

また、全ての国家は他国が一体何をしようと考えているのかを
確信を持って知ることができない、ということも挙げられる。

国家がこのような「国際システム」の中で
生き残るための最も良い方法は、
ライバルの大国よりも潜在力の面から
(相対的に見て)なるべく強力になることだ。

なぜなら国家が強力になればなるほど、
他国が攻撃してくる可能性が低くなるからだ。

大国というのは単に「最強の大国」になること
――もちろんそうなれれば嬉しいに決まっているが――
を目指しているわけではない。

むしろ彼らの究極の目標は、世界覇権国、
つまり国際システムの中で唯一の大国になることなのだ。

ところが現代の世界で世界覇権を達成するのは、
どの国にとっても不可能である。
なぜなら世界中へ到達することができる
戦力投射(パワー・プロジェクション)能力
を持って維持することは、困難を極めるからだ。

そういう意味では、アメリカでさえも
「世界覇権国」ではなくて「地域覇権国」だ。

したがって、国家にとって最も実現性の高い目標は、
自国の裏庭を支配するくらいのことなのだ。

自分たちの地元地域で覇権を得た国(地域覇権国)というのは、
さらに高い目標を持つものだ。それは
「自分の地域の外にある地理的なエリアを、他の大国に支配されてしまうのを防ぐ」
というものだ。

これを言いかえれば、
「地域覇権を達成した大国というのは、競争相手を欲しがらない」
ということだ。

地域覇権国は、他の地域をいくつかの国々に分裂させ、
その国々がお互いに争い合っているような状態を好むからだ。

冷戦終結直後の一九九一年に、ブッシュ(父)政権は、
アメリカがいまや世界最強の国家であり、
今後もその状態を維持していくことを大胆に宣言している。

ブッシュ(息子)政権が二〇〇二年九月に発表した
有名な「国家安全保障戦略」という文書の中にも、同様の文言がある。

この文書にある「先制戦争」の考え方のほうは激しい批判の嵐を起こしたのだが、
「アメリカは台頭してくる新たな大国を抑えるべきだ」、
「世界の勢力均衡において優位なポジションを維持するべきだ」
という意見については、全く批判の声は上がっていない。

中国は、アメリカが西半球を支配したのと同じやりかたで、
アジアを支配しようとするだろう。
中国は周辺の国々、
とりわけ日本やロシアとの間のパワーの差を最大化させ、
アジアのどの国も自分たちに脅威を与えてこないようにしてくるはずだ。

もちろん中国が今後も暴れまわって
他の国々を征服しまくるということは起こりそうもない。
しかし将来の中国は、アメリカが西半球で行っているように、
近隣諸国に対する自分たちの行動の自由を
最大限に確保したいと考えるようになるはずだ。

また、徐々に強力になって行く中国は、
アメリカがヨーロッパの大国を西半球から追い出したように、
アメリカをアジアから追い出そうとする公算が高い。

おそらく中国が台湾を取り返す唯一の方法は、
地域覇権の獲得なのかも知れないが、
これはある意味で当然のことといえる。

 「中国はアメリカとは異なる行動をする」という考えには、
そもそも論理的な根拠がない。

たとえばアメリカの政策担当者達は、
他の大国が西半球に軍事力を送りこもうとすると激しい反応をする。
なぜなら、これらの外国の軍隊は、
必然的にアメリカの安全保障における
「潜在的な脅威である」と見られるからだ。

中国はアメリカよりも一貫性があり、
道徳的で、ナショナリズムは少なく、
西洋人に比べて国家の生き残りに無関心なのだろうか?

もちろんそんなことはあり得ない。
だからこそ中国は、
アメリカのマネをして地域覇権を目指す可能性が高いのだ。

日本が強力で自分たちが弱かった前世紀には一体何が起こったのかを、
中国の指導者層と国民たちはよく憶えている。

国際政治というアナーキーな世界では、
国家はかわいい「バンビ」になるよりも、
恐ろしい「ゴジラ」になるほうが得なのだ。

===

さて、あらためてこれを読んでみて、如何でしたか?

10年ほど前のテキストにも関わらず、
ミアシャイマー教授の議論の核心部分にはブレがありません。
今回の『大国政治の悲劇』<改訂版」>
で書き換えられた第10章でも述べられているのが、

「19世紀のアメリカが、21世紀の中国のお手本になっている」

ということです。

「いやいや、中国とアメリカは文化も違えば歴史も違うでしょ?」

と、賢明なる「アメ通」読者の皆さんのツッコミが聞こえてきますが、
ゴリゴリのリアリスト:ミアシャイマー教授にとって
このような批判は無意味です。

なぜなら彼は、その前提として

「どの国もパワーのサイズが違うだけ、
 その行動は拡大を目指すところは一致しているから」

と捉えているからです。

ミアシャイマー教授は、ある国家に対して
「善い・悪い」という<価値判断>は一切しません。

「国際政治における国家の行動を決めるのは、
その国がどれだけ<パワー>を持っているかどうかである・・・」

これが「オフェンシブ・リアリズム」の真髄です。

この身も蓋もない、冷徹な視線をもって国際情勢を眺めることで、
中国だけでなく、このところ動きの激しいロシア、
さらにはアメリカや、日本の行動についても、
余計なイデオロギーなどに惑わされない判断ができる、
というわけです。

これまでに何度同じことを言って来たか
もはや覚えておりませんが(笑)、
この「リアリズム」に基づいた思考法こそが、
相変わらず弱肉強食の国際政治を見るときに
何としても、私達が身に付けなければいけない発想なのです。

( おくやま )





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