THE STANDARD JOURNAL

今、日本が連携すべき相手とは|THE STANDARD JOURNAL

2014/06/06 10:52 投稿

コメント:2

  • タグ:
  • 奥山真司
  • 地政学
  • リアリズム
  • 戦略学
  • アメリカ通信
  • STANDARDJOURNAL



おくやまです

読者の皆さんもご存知の通り、
現在の国際情勢を眺めてみますと
ウクライナ情勢が相変わらず混沌としていたり、
南シナ海では中国の傍若無人ぶりが際立っております。
また、最近では、オバマ政権が
捕虜を取り返すためにタリバンと取引した?!
という話題でアメリカ国内が大騒ぎとなっているようです。

いずれも国家の安全保障に関わる大問題なわけですが、
今回は、日本の安全保障にとって
大きな意味をもつ国を取り上げてみます。

その国というのは「オーストラリア」です。

「え?おくやまさん、今回もまた唐突に、なんで豪州なの???」

という声が聞こえてきました。

最近では、捕鯨問題でのあれこれもあって、
日本の、とくに保守系の人には
オーストラリアという国はあまりウケがよくないかもしれません。

ですが、このところ話題になることの多い、
戦略家ルトワック氏の著書『自滅する中国』でも、
わざわざオーストラリアのことを言及しておりまして、
その重要性を皆さんにも認識しておいて頂きたいのです。

本題に入る前に、『自滅する中国』から一部ご紹介しておきます。

===『自滅する中国』第13章より===

現時点の動きからわかるのは、オーストラリア政府の狙いが、
利害を共にする国々と長年に渡って行ってきた「二国間協議」から、
中国の拡大主義に抵抗するための「同盟構築」という
新しい戦略目標へシフトしているということだ

・・・オーストラリアは自分たちが戦略面で
脅威にさらされていると感じている。今回の脅威は中国だ。

中国はあらゆる分野で急速に成長しており、
領土拡大への欲求まであらわにしている。

しかし今回のオーストラリアは、明らかに
アメリカのリーダーシップに従って動くのを座して待つつもりはない。
なぜならオーストラリアはアメリカの能力について
盤石の信頼をおいていないからだ。

===

ここでルトワック氏が指摘しているのは、
オーストラリアが実は中国のことを「脅威」であると捉えていて、
しかもアメリカの動きを待つことなく、
独自の行動を取りたいという動機を持っているということです。

-:-:-:-:-:-:-:-:-:-:-:-:-:-:-:-:-:-:-:-:-:-:-

さて、それでは、具体的にオーストリアは何をしているのか?
というと、中国に脅威を感じている東南アジアの国々との間に、
安全保障関係を着々と築いております。

実は、オーストラリアはアジア太平洋地域でも、
最も好戦的な部類に入る国でして、古くは両大戦から朝鮮戦争、
そして最近ではアフガニスタン・イラク侵攻の時なども、
米軍に協力して軍事的に積極的な役割を果たしております。

そして、この国の面白いところは、
アメリカ軍でさえもほとんど関係を持っていない、
マレーシア軍との間にも深い関係を持っていること。

その関係系のルーツはどの辺りにあるのかというと、
60年代末に、イギリスがスエズ以東から軍事的に撤退したことを受けて、
その当時、英連邦に属していた五カ国(英、豪、乳、昭、馬)が、
当時政情不安だったインドネシアに対抗するために締結した軍事同盟、
「五カ国防衛取り決め」というものがありまして、そこまで遡ります。
(the Five Power Defence Arrangements: 1971年)

そして、ここがポイントなのですが、
この「五カ国防衛取り決め」という枠組が、
今でもけっこう活用されておりまして、
その中でリーダー的な役割を果たしているのが、
実はオーストラリアだったりするわけです。
そして、この枠組をかつての「対インドネシア」ではなく、
そのまま「対中国」という枠組みに入れ替えて使おう
と目論んでいるフシがあるのです。

この五カ国の中で唯一、エリート層が白人ではないという、
いわゆる「非白人国家」マレーシアは、
前述のように米軍との関係性も含め、
非常にユニークな存在と言えます。

何がユニークなのか?と言えば、それはマレーシア空軍です。
ここが軍事的には極めて特殊なことをやっておりまして、なんと、
アメリカ製のF/A-18D(ホーネット)と、ロシア製のSu-30(スホーイ)MKM
という2つの異なるタイプの戦闘機を持っているわけです。

オーストラリア軍はマレーシアのバタワース航空基地
というところに常駐して、マレーシア軍を訓練しているのですが、
それだけではなく、お互いが持っている飛行機を取り替えて
訓練したりもしております。ということは・・・
オーストリア空軍のパイロットたちは、通常、
基本的には西側陣営の人間では乗れはずのない、
「ロシア製のスホーイ」に乗れてしまう!というわけです。

つまり、オーストラリアは同盟国であるマレーシアを通じて
ロシア側の兵器などの情報をしっかり(ちゃっかり?)仕入れているのです。

-:-:-:-:-:-:-:-:-:-:-:-:-:-:-:-:-:-:-:-:-:-:-:-:-

さて、読者の皆さんが今回の冒頭でツッコミを入れたであろう、

「え?なんでオーストラリアなの?」

の答えがそろそろ視えてきたのではないでしょうか?

オーストラリアが(密かに)ターゲットとしている中国は
このところの一連の言動によって、
世界中からの警戒感を高めてしまったことは、
読者の皆さんもご存知の通りです。

あたかも「中国封じ込め」が展開されるが如くで、
国際情勢の潮流がジワリと変わってきたようです。

軍事的規模としては決して大きいとは言えなくとも
実戦経験が豊富で、独自の情報網や情報の獲得ルートを持っており、
そして、アメリカとの微妙な距離感を意識している
「島国」であるオーストラリア。

その在り方から日本が学べること、
参考にできるところはたくさんありそうです。

そう言えば、東日本大震災の時に
世界で最初に被災地に駆けつけてくれた外国の首脳は、
オーストラリアのギラード前首相でしたね。

アメリカのプレゼンスが不安定化する東アジアの中で、
日本にとっての安全保障面の大切なパートナーとして
オーストラリアとの連携をしっかり考えるべき時ではないでしょうか。

リアリスト戦略の3つのルール
・柔軟であること
・選択肢をもつこと
・冷静であること

こう考えると、オーストラリアという選択肢は
日本にとって十分にあると思います。

( おくやま )






ee510bc5b799d33de6ec625fd8d507299235dc14


8c13dd3dbf86c5431d97cf728d32897c2482d303



806dfcce70e94558b413f45ae6b3a339dd8bcccf


67eeb08a5be59b243fb587929b17e5574aa41583

ブロマガ会員ならもっと楽しめる!

  • 会員限定の新着記事が読み放題!※1
  • 動画や生放送などの追加コンテンツが見放題!※2
    • ※1、入会月以降の記事が対象になります。
    • ※2、チャンネルによって、見放題になるコンテンツは異なります。
THE STANDARD JOURNAL

THE STANDARD JOURNAL

スタンダードジャーナル編集部

月額:¥550 (税込)

コメント

今朝のニュースで「オーストラリアの国防相が日本の潜水艦部隊を視察する」という記事がありました。
今回のブログの記事と関連がありそうですね。

No.1 127ヶ月前

ご存知だと思いますが、オーストラリアはカナダと同様に中国人移民問題が深刻化していますから危機感もひとしおでしょう。
さらに水資源の問題を抱えるオーストラリアにとって、中国の人口攻勢は単純な生存においても脅威なのかもしれません。

No.2 127ヶ月前
コメントを書き込むにはログインしてください。

いまブロマガで人気の記事

スタンダードジャーナル(THE STANDARD JOURNAL)

スタンダードジャーナル(THE STANDARD JOURNAL)

月額
¥550  (税込)
このチャンネルの詳細