おくやまです。
おくやまです。 今回はいつもの国際政治のトピックとは 趣向を少し変えまして、 国内政治にまつわるお話をしてみたいと想います。 ブログでも少し触れましたが、 私は先週末に、自分の関係する学会の 年次大会に参加しました。 そこでの基調講演で、一部では有名な 元外務省高官の孫崎享氏が招かれておりまして、 1時間ほどのスピーチを私も聞きました。 この時の感想や気づいたことについて、 ご興味のある方は、ぜひ私のブログのエントリー (http://geopoli.exblog.jp/22513881/) を見て欲しいのですが、実はそれよりも気になったのは、 別の時間に登場した、ある人物のコメントでした。 今回はこの件について一言。 -:-:-:-:-:-:-:-:-:-:-:-:-:-:-:-:-:-:- その人物は、「元政治家」という経歴をお持ちの方で、 震災の時に首相をやっていた人物と非常に近い、 いうなれば非常に「リベラル寄り」の意見を持った方です。 専門は危機管理ということで、 以前は大学の先生もやっていたそうで、 いわゆる「知性派」に属する人物 といってもよいのかもしれません。 ところが彼がこのシンポジウムで述べた意見というのが、 いくら「元政治家」とはいえ、 あまりよろしくないパターンにハマってしまっているようで とても気になりました。 今回のこの学会は、基調講演やシンポジウムを通じて、 偶然なのか、意図的なのかは定かではありませんが、 共通して言えたのは、「安倍政権を批判する」 という、とてもわかりやすいスタンス。 「学会」の大会であるにも関わらず、 「政治的に偏っている」のはどうなのだろう? という素朴なツッコミを入れたくもなりましたが、 とりあえずは、その点は置いておきます。 実のところ、あくまでも私が聞いた限りではありますが、 孫崎氏の講演から感じたことは、 彼の場合は、率直に「リベラル」な姿勢が信条であり、 安倍さんやアメリカが嫌いという点では とりあえずスジが通っておりました。 これは「想定通りであった」という点で、 ある意味での「安心感」があったとも言えます。 ですが、「元政治家」である この危機管理の先生は、 「戦略的」にかなり問題のある発言を してしまっておりました。 なぜならこの方は、 自分の発言の機会になると、何度となく 「日本の社会は病んでいる、 この日本を改革していかなければならない」 という旨の発言を連発したからです。 日本のような民主制度の国の政治家というのは、 基本的になるべく多くの民衆から支持を得て、 選挙を通じて代表となるというプロセスを経て選出されます。 つまり彼は基本的に、 「民衆」(people)に依存せざるを得ない存在なわけです。 ところがその「民衆」の属する「社会」そのものを 「病んでいる」と言ってしまっているわけです。 これは非常に「反民衆」(anti-people)な態度であり、 およそ政治家がやってはいけない最悪の発言。 たしかに学者や評論家でしたら、一見、客観的に見える 「引いた」発言は「あり」なのかもしれません。 しかし彼は、まがりなりにも元政治家で、 しかもまだ再選のチャンスをうかがっている様子が ありありと見てとれる、政治指向の強い人物。 にもかかわらず、日本の社会を「病んでいる!」 と連呼してしまうのは、 自分を支援してくれる人々の支持まで失ってしまうリスクを わざわざ高めてしまっているのです。 同じく安倍政権に批判的だった孫崎氏ですが、 彼の場合は批判の矛先を向けていたのは あくまでも「安倍政権」や「自民党」や「外務省」であり、 けっして「日本の社会全体が病んでいる」 ということまでは言っておりませんでした。 人間というのは、概して、 自分の属していない集団への攻撃には喝采を送るものです。 その反対に、自分の「なわばり」を犯すような批判には 正直なところ、あまり良い気持を持たないというのが性(サガ)です。 人間というものは、「反民衆」のニオイを 敏感に嗅ぎつけます。 これは政治にかぎらず、 ビジネスや個人レベルの人間関係でも一緒のこと。 もちろん政治家(そして政治評論家も)というのは、 批判をしてナンボの世界に生きている という部分も多分にあるものの、 「大衆批判」というのは、政治家にとっては よほど注意して扱わないと、逆に支持を失ってしまう 危険なツールになってしまいます。 この先生や、彼の周辺のアドバイザーたちは このような点について、真剣に考え直すべきでしょう。 なぜなら安倍政権の危機管理を批判する前に、 そもそも自分の身の上の危機管理ができていないという、 最悪の事態に陥っているように見えるからです。 徳川家康は 「水はよく船を浮かべ、水はよく船を覆す。 ただこのことをよく心得られよ」 という教訓を自分の息子に残しておりますが、 この場合の「水」は「民衆」、「船」とは幕府や政府、 もしくは自分の身であるとされております。 そしてその「水」である「民衆」に対して、 政治家である「自分」(船)はどういう態度を示せばいいのか・・・ 「反民衆」という態度は非常にリスクがあることが この例えからもよくわかるというものです。
( おくやま )
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