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中国の「ハッタリ」と米国の「火遊び」には「リアリズム」で対抗せよ|THE STANDARD JOURNAL

2013/12/21 08:00 投稿

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イデオロギー対決議論はもうやめませんか?

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おくやまです。

先月末の中国による
突然の防空識別圏(ADIZ)の設置宣言から
はやくも一ヶ月がたとうとしておりますが、
ここまで見えてきたことに触れてみたいと思います。

これまでさまざまな識者たちによって
さまざまな解釈がなされておりますが、
ひとつだけ私が言えることは、
「中国が(一時的にせよ)成功した」
ということです。

この成功ですが、具体的には二つあります。

一つはミクロなレベルであり、
日本を除く各国の民間の航空会社にたいして、
ADIZに侵入してくる際に
フライトプランを提出させることに成功したこと。

もう一つはマクロなレベルのもので、
中国は既存の国際秩序を
自国の好む方向に変更できる力があることを確認した、
ということです。

もちろん今回の一件で、
中国の国際的なイメージは低下しました。

とくに今回指摘されていたのが、北京政府がその発表当初に
「ADIZに入る民間の航空会社が
事前にフライトプランの提出がなければ
戦闘機でスクランブルをかけることも辞さない」という、
まるで「領空」のような「ランドパワー」的な考え方
をゴリ押ししてきた点です。

これに反発した日米両軍は、
すぐさま東シナ海上空の中国のADIZを
通告なしに通過して
中国側がスクランブルをかけてこないことを確認しました。

つまり軍事的なレベルでは、中国はメンツを潰されましたし、
国際的なイメージは悪化しました。

さらにこれが周辺国の中国にたいする疑念や恐怖を呼び起こして、
ルトワックの指摘するような「自滅する中国」への布石となる、
「大戦略」の失敗の可能性は高まったのです。

これは中国の「失敗」といえるでしょう。

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ところが最も重要なのは、今回は政治のトップのレベルで、
アメリカ(と日本以外のほとんどの国々が)が
引き下がった形になった、という点です。

とくに象徴的だったのは、今回の日中韓訪問で
バイデン副大統領が中国側にADIZの「撤回」を求めなかったことと、
ヘーゲル国防長官がデンプシー統合参謀本部議長
(米軍の制服組トップ)との12月4日の合同記者会見で
「防空識別圏の設定自体は問題ではない」
と認めざるを得なかった点の2つです。

たしかに防空識別圏というのは、
基本的に各国が国内法で設定しているものであるため、
尖閣の領土問題については一応「中立」である米国は、
中国にたいしてロジックの面で
正面から堂々と反論することはできませんでした。

もちろん安部首相も、最近東京で開催した
ASEAN諸国首脳との会合で、
彼らと脅威認識を共有するというチャンスがありました。
これ自体は非常によい動きだったと思います。

しかし私がある関係者から聞いたところによると、
中国との利害関係の温度差がある首脳(とくに親中国)
とのトップ対談で、日本側は、
おしなべて「反中国」の一本槍の対応をしていたといいます。

これは戦略的な柔軟性を残しておくという意味では、
少々まずかったかと。

なぜなら、日本はASEAN諸国を「反中国」という
スローガンだけでまとめる余裕はないわけで、
もっと各国のそれぞれの事情に合わせた
細かい対応をしておくべきだったからです。

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「アメ通」読者のみなさんならばよくご存知の通り、
国家というのは、それぞれが独自の「国益」を目指しております。

これは、表向きは"強い「絆」で結ばれている"
ということになっている日米間にとっても同じことが言えます。

そもそも日本とアメリカは違う国ですから、
「世界観」や「政策」が完全に一致することはありえず、
どこかに必ずギャップがあるからです。

今回そのとくに出てきたギャップは、
日本とアメリカの求めている東シナ海における利害関係の差であり、
しかも、ここには地理的な事情(地政学)が絡んでおります。

実のところ、今回の争点になっている東シナ海というのは、
現在のオバマ政権の上層部にとって、
それほど深刻な「脅威」ではありません。

日本が下手に中国を刺激した結果として、
自分たちが直接中国との戦争に巻き込まれても困る
という意識があります。

それを見越した中国は、
まるで対仏大同盟に直面したフランスのナポレオンのように
「相手の同盟相手は多ければ多いほど切り崩しやすい」
という考えを元に、日本とアメリカの利害の差に付け込む形で、
今回の宣言をしたといえるでしょう。

この防空識別圏(ADIZ)の件で判明したことが一つあります。
それは、"中国の「ハッタリ」が成功した”ということです。

さて、そうなると、我々日本側として気になるのは、
「アメリカは、中国の脅威に対する認識が薄いのでは?」
という点です。

私が思うのは、アメリカはにはその認識が薄いというよりも、
むしろその認識のスタートが、日本より遅れているだけ、
ということです。

どういう事かと言うと、
米国が日本と中国の紛争に巻きまれたくない、
と考えて曖昧な態度を取り続けると、
いつの間にか中国の脅威が大きくなって、
結局、アメリカが中国と直接対峙せざるを得ない事態に
陥る可能性があるからです。

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ここで読者の皆さんに(だけでなく日本政府に、ですが)
気付いて頂きたいとても大事なポイントは、

日本はアメリカから「ソフトなオフショア・バランシング」をやられている

という認識です。

「ソフトなオフショア・バランシング」とは、
アメリカが曖昧な言動を取ることで、
自らが揉め事の前面に立つことなく
日中を適度にぶつけさせておいて、
中国側の日米分断工作に(一時的にせよ)乗る、

というものです。

もちろんこのような「火遊び」は、
我々日本にとっては、大迷惑以外の何ものでもありませんが、
アメリカがいつまでもこのような「火遊び」を続けていると、
中国が東アジアで「地域覇権」を握ってしまうので、
いざという段階にまでテンションが高まったタイミングで、

"正義の味方"アメリカさんが、
"邪悪なドラゴン"中国のせいで窮地に陥った
"オトモダチ"日本を救うために颯爽と駆けつける!

というシナリオになりかねません。

そしてそうなる前になるべく自国のパワーを拡大して、
ADIZなど、拡大できるものは拡大しておく、というのが
中国側の基本的な方針であるということも同時に言えます。

中国も、いや、アメリカでさえも、
自分のビジネスとして国益を拡大しているだけであり、
そのためにはいざとなったら日本もどんどん裏切るぞ、
ということなのです。

このようなことを書くと、
「なんだ、おくやまは反米派か?」
などとも言われてしまいそうですが、
私はただ単純に「アメリカを敵視しろ!」
ということを主張したいのではありません。

私がここで言いたいのは、やはり、「リアリズム」ということです。

アメリカは自国民の利益を最大限に考えた「ビジネス」として
日本を中国にぶつけておきたいと考えているフシがあり、
それ以上でもそれ以下でもないということなのです。

そして、北京上層部は、アメリカなどの反応を見て
「圧力で押し切れば乗りきれる」と判断したはずですし、
そういう意味では、彼らの頭の中では、
かましたハッタリは「成功」したことになるわけです。

しっかりと肝に銘じておかなければならないのは、
私たち日本人がすっかり忘れてしまっている、
国際政治は冷酷な「危険なビジネス」であるということです。

切った張ったのシビアな舞台においては、
キレイ事だけで済むわけもなく、
今回の「危険なビジネス」において中国がやったような
「ハッタリ」も、当然、かまされます。

アメリカも中国も自らの「国益」の追求という
「リアリズム」に基いて、ありとあらゆる手段を駆使して迫ってきます。

それに対処するには、
我々日本人は「リアリズム」の本当の意味を理解し
その上で、有権者として政治家たちにその実践を迫るべきでしょう。

昨今の東アジア情勢の激動を目の当たりにして、
改めて、このことを強く想わざるを得ません。

( おくやま )
▼「奥山真司の地政学講座」 http://www.realist.jp/geopolitics.html

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最近、日本のメディアで「地政学」という言葉をよく目にします。

この言葉の本当の意味は何なのでしょうか? 
そして、そもそも「地政学」とはどういうものなのでしょうか?

「地政学」は一過性のブームなどには全く関係なく、
国家が国際社会の中で生き抜くためのツールとして、
日本以外の国々では
意識的/無意識的に活用され続けている学問です。

そして、昨今の日本周辺の混沌とした
国際関係の状況を冷静に分析する上で、
非常に役立つものなのです。

地政学とは、グローバル化した時代に、
国家が生き残っていくためのツールであり、
同時に国家の成功戦略のヒントとして
役立つものなのです。

しかし、日本では「地政学」は勉強できません。
「地政学」を専攻できる大学はありません。

そこで、英国にて「地政学」を学んだ奥山真司が
"禁断の学問"地政学を復活させるつもりで、語り尽くします。

▼「奥山真司の地政学講座」
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▼「リアリズム」の理論とは何か?
~ジョン・J・ミアシャイマー『大国政治の悲劇』から読み解く~
http://www.realist.jp/mea2.html

勃興する中国、混迷を続ける欧州、
そして、冷戦終結後の世界で覇権を握ったかと思いきや、
ここに来て、衰退の兆しも見え始めた米国。

その米国が、東アジアから撤退する可能性すら囁かれている現在、
これを読んでいるあなたは、
日本が大変な岐路に立っている、大変な状況に置かれている。
と言われれば、必ず納得するはずです。

では、そんな厳しい現状で、私たち日本人は何をすべきなのでしょうか?
それは・・・
古今東西、国際政治の底流に脈々と流れ続ける、
学問・学派としての「リアリズム」を真摯に学ぶことです。

しかし・・・
日本国内で一般的に言われているような、
ともすれば、"世俗主義"的な意味合いで語られる
いわゆる<現実主義>ではない、本当の意味での「リアリズム」を
しっかり学べる素材があまりにも少ない・・・
そんな想いの元に、今回のCDを企画・制作しました。

▼「リアリズム」の理論とは何か?
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