みなさん、こんにちは。
ストップいじめ!ナビの弁護士チームでは、中学校での連携に向けた活動を行なっています。
今回は、中学校のPTAの方々に向けたセミナーの模様をご紹介します。
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弁護士チーム プロジェクトメンバー
井桁 大介、石垣 正純、朴 貴玲(文責)
近ごろ、ラインやツイッター上での無視、仲間外れなど、電子メールやアプリなどでいじめが行われる、いわゆる「ネットいじめ」がマスコミにも取り上げられ、問題視されています。多くの子どもにとってネットは身近なもので、実際に、しばしば保護者よりも子ども達の方が使い方をよく知っているということもあります。そのような状況もあって、保護者としては、「ネットいじめ」がどのくらい危険なのか(かなり危ないのではないか)、どう対応していいか(いっそのことネット禁止にした方がよいのではないか)、よくわからないところも多いと思います。今回は、そのような「ネットいじめ」について、マスコミなどでいわれているのとは少し違う観点から、井桁弁護士がお話をさせてもらいました。以下、セミナーの内容に触れつつ、私の感想を書かせていただきます。
◆ 「ネットいじめ」は新しいいじめ?
「ネットいじめ」というと、従来の実生活でのいじめ(教室を中心とした学校生活での基本的に生身のやり取りでのいじめ)よりも、いじめが陰湿化・深刻化する危険が高いとか、誰もがターゲットになり得るとか、いじめている者の特定ができないだとか、いじめられる者のストレスがより高いとか、とかく、これまでの子ども社会には存在しなかった新しいいじめの形である、というような印象があるように思います。マスコミ報道も、このような論調ではないでしょうか。
でも、そのような印象は必ずしも的を射たものではないようです。安心ネットづくり促進協議会の「インターネット使用といじめ・暴力の関係性に関する研究」(2013年11月)は、次のようなデータを発表しています。統計上、実生活でのいじめ被害を経験したことがないのに「ネットいじめ」だけ受けたことがあるという子どもは、小学校で約0.54パーセント(5人/925人)、中学校で約0.81パーセント(14人/1728人)、高等学校で約3.79パーセント(56人/1476人)となっています。また、統計対象を「ネットいじめ」の被害経験がある子どもに絞った場合でも、実生活でのいじめは受けたことがない(が「ネットいじめ」だけ受けたことがある)という子どもは、小学校で約15.15パーセント(5人/33人)、中学校で約13.20パーセント(14人/1728人)、高等学校で約35.44パーセント(56人/158人)とされています。これらの数字は、「ネットいじめ」は実生活でのいじめと連動して、またはその延長で、行われていることが多いことを示しています。つまり、「ネットいじめ」の実態は、新しいいじめというよりは、これまでも学校で、口頭によって、手紙によって、落書きによって、行われていたいじめ(悪口、陰口、脅迫など)が、それらの手段に加えて、電子メールやライン、ツイッターによっても行われるようになった、と捉える方が正確とも思われるのです。
このように考えると、「ネットいじめ」をことさらに問題視して、その特殊性を議論することは本質的なことではなく、むしろ、根本的な人間関係を見つめ直しそれについて対策をすることこそが重要だといえます。
◆ 中学生ケータイ所持率60パーセントのいま必要なこと
いま、子どものケータイ所持率は、小学校で3割・中学校で6割・高等学校で9割といわれています。ケータイを使う以上、子どもが電子メールやライン、ツイッターを利用して友人らとコミュニケーションをとることを止めてしまうということは現実的ではありません。
そもそも、ラインやツイッターはそんなに危険なものなのでしょうか。保護者の中には利用されている方が余り多くないかもしれませんが、これらは使い方によってはとても便利な機能ですし、電子メールのように特定の相手に限って受信可能にすることもできます。大学生などがアルバイト中の不適切な写真を投稿したことなどでツイッターが炎上する事件や、個人情報の流出、フィッシング詐欺など、オンラインに関するトラブルは後を絶ちませんが、これらは、全てといっていいほど、オンラインを利用する際のリテラシー(利用能力)やマナーの欠如に起因したものといえます。
子ども達は、これからずっと、オンラインを利用しながら生きていくこととなるでしょうから、自分の身を守るための正確な使い方を学ぶことは必須だと考えなくてはなりません。私も機械音痴なので頭の痛いところではありますが、ケータイのアプリを悪だと決めつけるばかりではなく、子ども達にオンラインに関するリテラシーとマナーを身につけさせてあげることを、大人の役目として実践していく必要があると感じます。
◆ いじめられる側も悪いか
セミナー後、数名の保護者から井桁弁護士に対して質疑がありました。皆さん、ご自分の子供が被害者にも加害者にもなり得るということをとても心配しておられることが伝わってきました。
質疑の中で、「『いじめられる側も悪い』ということがいわれることがありますが、それについてはどうお考えですか」というご質問がありました。皆さんも、このような言葉を聞いたことがあるのではないでしょうか。井桁弁護士の回答は、「Aという子どもがBという子どもをいじめた事実があった場合に、もしも先だって、Bに何らかの問題行動があったとしても、AのBに対するいじめと、Bの問題行動とは、別個に考えるべき問題です。それをいっしょくたにして『あなたも悪いことをしたのだからいじめられても仕方がない』などという指導をして、Bが納得するはずはない。Aに対していじめについてきちんと指導をして、Bに対しては別個、問題点について的確に指導すべき」という明快なものでした。「落ち度があるから(集団で)攻撃してもよい」という理論は、一見筋が通っているようですが、本来はそのような場面でこそ、井桁弁護士のように一つ一つ問題点を解きほぐして対応すべきなのでしょう。子どもを追い詰めないためにも、大人の方が、問題点を明確化してあげることが必要だと感じました。
◆ ネットといじめ(結び)
ネットに関するリテラシーとマナーを習得してもらうために、子ども達に十分な知識を与える場を用意すること、そしていじめを巡る生き方や人間関係についてそれぞれに考えを深めてもらうために、子ども達と向き合い経験の中でたくさんの価値観に触れてもらう社会にすること、この両方とも、当面の大人の課題といえます。前者は特に、一つの取組みによって大きな進歩が期待できますし、短期集中で議論して、実現すべき問題であると感じます。
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