本田圭佑を成功させた言葉⑤ 「だんだんとホンダのチームになってます」

 

 

「それぞれが、もっとカッコ良い男になった時に、その男たちが一つの集団になった時に、それぞれの技術論が、そこで初めて戦術になり、結果的にすごい集団になると思うんです」

 

「毎日のように言ってますよ。ホンダが毎回毎回言うことで、だんだんとホンダのチームになってます」

 

「例え1点を取られて劣勢になってもあせるな。オレがなんとかするから大丈夫や」

 

「チームメイトとこうやろうぜと言っていたことが、実際に表現できた時。これは自分だけで達成できることじゃないですし、だからこそチームとして連動して表現できた時はうれしい」

 

本田は本物のエゴイストにはなれない男だ。最終的にはチームのために何ができるかを優先してしまうのだろう。CSKAモスクワでは自分勝手なプレイをする選手が多く、チームとして機能していなかった。本田はチームの勝利のために献身的なプレイや練習姿勢をチームメイトに示し、何度も話し合うことでチームプレイを重視するチームに変えていった。星稜高校時代はキャプテンをつとめチームをひっぱっていった。高校生活最後の全国高校サッカー選手権では、初戦から岡崎慎司、森島康仁を擁するシード校の滝川第二とあたった。試合前のミーティングで選手だけで組んだ円陣の中で言ったのがこの言葉だ。

 

「例え1点を取られて劣勢になってもあせるな。オレがなんとかするから大丈夫や」

 

宣言通り強豪を相手に本田は2得点を決め、決勝点は本田―込山のホットラインから奪った。決勝進出を賭けた市立船橋戦はPK戦までもつれこみ、星稜高校6人目のキッカーが枠を大きく外し敗退が決まった。その場に倒れ込み号泣する同級生の肩を抱き、エスコートしたのがキャプテンの本田だった。チームのために檄を飛ばし、チームメイトに寄り添うのが本田の本当の姿だ。

 

また、一人ひとりが実力を伸ばし、それが結合された時に飛躍的にチーム力があがると思っていることも以下の言葉から読みとれる。

 

「それぞれが、もっとカッコ良い男になった時に、その男たちが一つの集団になった時に、それぞれの技術論が、そこで初めて戦術になり、結果的にすごい集団になると思うんです」

 

これは、ドラッカーの「一人ひとりの強みを活かすことによって組織の成果と個の自己実現が両立する」と通じるものがある。

 

著作「経営者の条件」から抜粋する。

 

成果に向けた一人ひとりの自己啓発こそが、組織として社会のニーズに応え、個として自己実現するための唯一の方法である。それこそが、組織の目標と個のニーズを合致させる唯一の方法である。一人ひとりの強みを活かすことによって、組織の成果と個の自己実現が両立する。それぞれの専門能力が組織にとっての機会となる。加えて、貢献に焦点を合わせることによって、一人ひとりにとって価値あることを組織の成果に変えることができる。 

 知能労働者も経済的な報酬を必要とする。報酬の不足は問題である。だが、報酬だけでは十分ではない。知識労働者は、機会、成果、自己実現、価値を必要とする。しかるに、自らが成果をあげることによってのみ、これらを満足させることができる。

 成果を通じてのみ、現代社会は二つのニーズ、すなわち個から貢献を得るという組織のニーズと、自らの目的の達成のための道具として組織を使うという個のニーズを調和させることができる。

 

自分の強みを活かすこと、組織の中で最大限に成果を出せるように個人個人が実力を伸ばし、それが同じ目的に向かうことで大きな成功を生むのだ。

 

本田にとっての大きな成功とは世界一になることだ。そのために、少年時代から自分自身が何をすべきか、チームとして何ができるかを考え続けている。

 

ドラッカーの言葉でこの様なものがある。

 

「世の中に違いをもたらすためには、いかなる成果を生み出すかを考えなければならない」

 

著作「明日を支配するもの」から抜粋する。

 

何に貢献すべきかを知るためには、世の中に違いをもたらす成果をどこで生み出せるか、いかにして生み出せるかを考えなければならない。

 考えるべきことはいろいろある。目指すべき成果は難しいものにしなければならない。背伸びさせるものでなければならない。だが、可能なものでなければならない。目に見えるものであって、できれば数字で表せるものであってほしい。

 自らの貢献は何であるべきかとの問いに答えを出すには、三つの要因を考えなければならない。第一に、何が求められているのかである。第二に、自らの強み、仕事の仕方、価値観をもって何に最も大きな貢献をなしうるかである。そして第三に、世の中に違いをもたらすためには、いかなる成果を生み出すかである。ここから、行うべきこと、始めるべきこと、始め方、目標、期限などのアクション・プランを明らかにすることができるようになる。

 

世の中に違いをもたらす、世界を変えるには、実現できる可能な限り高い目標をかかげ、求められているもの、最も貢献できるもの、そしてどの様な成果をあげられるかを考えなければならない。そこから、具体的な始め方、期限、数値目標を設定していくのだ。

 本田は少年時代に練習ノートを書き始めた。練習内容を出来るだけ具体的に書き、就寝時間、起床時間、脈拍数、体重、食事メニュー、排便について記録するようにした。高校時代のノートには「世界一まであと○○日」と書いてあった。

 本田は少年時代から世界一という高い目標を掲げ、自己革新やチームの勝利について考え続けてきたのだ。

 まさに、ドラッカーの言葉、「一人ひとりの強みを活かすことによって組織の成果と個の自己実現が両立する」「世の中に違いをもたらすためには、いかなる成果を生み出すかを考えなければならない」の実践者なのだ。

ここまで、本田の言動をドラッカーの言葉を用いて解説してきたが、本田がただの才能だけのサッカー選手ではないことを理解できたと思う。ドラッカーは現代経営学の唯一無二の巨匠と呼ばれたが、本田圭佑が日本サッカーの歴史上屈指のプレイヤーになる日も遠くないかも知れない。

 

 

 

 

参考・抜粋文献

実現の条件 本田圭祐のルーツとは 本郷陽一著 東邦出版

本田の男は骨で闘う 本田大三郎著 あさ出版

本田にパスの36%を集中せよ 森本美行著 光文社新書

サッカー日本代表の少年時代 伯井寛 巴康子 赤澤竜也著 PHP文庫

本田圭祐 本郷陽二著 汐文社

フットボールサミット 本田圭祐という哲学 カンゼン

現代の経営 ピーター・ドラッカー著 ダイヤモンド社

非営利組織の経営 ピーター・ドラッカー著 ダイヤモンド社

ドラッガー・中内往復書簡 挑戦の時/創生の時 ピーター・ドラッカー著 ダイヤモンド社 

明日を支配するもの ピーター・ドラッカー著 ダイヤモンド社

イノベーションと起業家精神

未来企業 ピーター・ドラッカー著 ダイヤモンド社

創造する経営者 ピーター・ドラッカー著 ダイヤモンド社

経営者の条件 ピーター・ドラッカー著 ダイヤモンド社


ドラッカー 365の金言 ピーター・ドラッカー著 ダイヤモンド社

      

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・ホンダを超えた長友佑都
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著者プロフィール
1976年神戸市生まれ 明治大学農学部卒業後、2009年にチャンスメディア株式会社設立。
代表取締役社長に就任。

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