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The VOCALOID Times #172

2024/04/01 12:00 投稿

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#172 2024年4月1日発行  発行者 ドロイド

【1】はじめに

 こんにちは、ドロイドです。いよいよ4月になりました。超会議まであとわずか。皆様、いかがお過ごしでしょうか。4月1日という新年度の始まりという事で、新しい企画を始動致します。以前ご紹介をしました、世界電力さんのコラムを月に1回掲載をさせていただき、本日第1回となります。

 今回はこのコラムを皆さんにみてほしいという想いがある為、楽曲紹介はお休みとさせていただきます。2週間後の発行号から楽曲紹介を再開いたしますので、お待ちください。

【2】新企画コラム 世界電力のボカロ蓄電中 #1

 はじめまして、ボカロPの世界電力です。
 この度、こちらのニコニコサポーターズSmiles(VOCALOID Times)にて、月に一度のコラムを連載する運びとなりました。うれしい!

◆自己紹介

 初回ですので、簡単な自己紹介をさせてください。

 自分は、「世界電力」という名義で活動しているインターネットの音楽家です。無色透名祭に投稿した『ポストずんだロックなのだ』や、ボカコレ2023夏の『警報のあった日』など、バンドサウンドを軸とした音楽作品を制作・発表しています。前回のボカコレでは『アンサーアントーカー』という楽曲を公開いたしました。

 また、ニコニコ半公式ボカロ曲レビュー企画「ぼかれびゅ」の公式部員としても活動しており、投稿した楽曲レビューや、出演した生放送番組などでぼくを知ったという方もいらっしゃるかもしれません。本コラムでも、お世話になります!



◆本コラムについて

 今回の連載は、コラムという扱いのようです。自分の場合、コラムと聞いて先ず思い浮かぶのは、あの「星のカービィ」シリーズや「大乱闘スマッシュブラザーズ」シリーズを手掛けたことでお馴染み、有限会社ソラの桜井政博さんが週刊ファミ通に連載していた『桜井政博のゲームについて思うこと』というコラムです。

 連載期間は18年9ヶ月、話数にして640話を書き上げられており、連載分をまとめた単行本も刊行されています。ご本人も自身のYoutubeチャンネルにて「ゲームクリエイターがゲーム雑誌に連載したものとしては世界最長だと思います」と言及していましたが、あの初音ミクが今年で16周年ということを考えると、とんでもない長期連載です。

 桜井さんによると、こういったコラムは気負わず書くのがよいんだそうです。ありがたいことに、今回のコラムには多い方にも少ない方にも文字数の制限がなく、テーマも自由で、月末までに書き上げた文章がそのまま掲載される、というかなりフレキシブルな形で枠を頂けています。こう聞くと、まさに気負わないコラムにぴったりだな、と一瞬思うのですが、裏を返すと、校閲というフェーズを通過しないため、変なことを言っていてもストップがかかりません。これはちょっとキケンです。

 なので、広い意味での「ボカロ」をテーマにした連載ではありますが、あまり大きなテーマを扱わず、気負わず気張らずで、ほどよく気の抜けたコラムにできたらいいな、という心持ちで臨みますね。どうぞよろしくお願いします。

 と、このようなことを考えていたところ、本コラムをご担当頂く方から、ちょうどよいタイミングでコラムタイトルのご提案をいただきました。それが表題にあります『世界電力のボカロ蓄電中』です。

 ご本人曰く「ファミ通のコラムのようないい感じのダサさが出たらと思って!」とのこと。コラムと聞いて考えることはある程度似るんだなぁ――という気持ちと、これはこれでチカラが抜けているな、という観点からそのまま話を進め、表題の通りとなりました。

 というわけで、あまり縦長になりすぎても恐縮なので、毎月だいたい2000字くらいを目標に、ボカロ関係のお話と自身の活動報告を兼ねて、ミニコラムをしたためたいと思います。

 前置きが長くなりましたが、ここからが本編です。今月は「ボカロシーンと二次創作」について、思ったことをすこし書き進めていきますね。

◆二次創作容易性 (fan-madebility) の話

 ボカロシーンにおける2024年1月〜3月の四半期トピックについて考えたとき、吉田夜世さんの『オーバーライド』のブレイクが先ず浮かぶ方も多いかと思います。
 このことについて、『オーバーライド』がビルボードチャート1位を獲得した際に、「近年、特に勢いづいた楽曲は、二次創作のやりやすさが起爆剤のひとつになっている」という趣旨の記事がニコニコニュースにて公開されました。

参照:【重音テト】ビルボード18週連続1位の『人マニア』を抜いて『オーバーライド』がトップに! ブルアカやフリーレンを絡めた二次創作もバズり中の“オーバーマッド”ブームを解説してみた - ニコニコニュース Original
https://originalnews.nico/449036

 実際に、この傾向はボカロシーンのみならず、バズありきのコンテンツすべてにおいて顕著です。ボカロシーン外の例で言うと、『全方向美少女』がTikTokで大流行した乃紫さんのインタビューに「制作意図として、バズを狙って、TikTokというプラットフォームで二次創作しやすい楽曲を作った」という旨のコメントがあることからも、その傾向が伺えます。

参照:乃紫 インタビュー 「全方向美少女」がTikTokを席巻、話題のシンガーソングライターに迫る - THE MAGAZINE (TuneCore Japan)
https://magazine.tunecore.co.jp/stories/362494/

 ボカロシーンから見た二次創作は、昨今の「歌踊コレOK」タグに象徴されるように、歌ってみた・踊ってみた・演奏してみた、などの「楽曲主体の二次創作」が先ず頭に浮かぶかと思います。

※このうち「歌ってみた」のやりやすい作品(≒この場合は、映像フォーマット)に関する内容は、以前にFrog96さんがものすごく詳細にまとめられていますので、そちらを拝読して頂くと知的好奇心がとても満たされると思います。

 一方『オーバーライド』の二次創作は、「オーバーマッド」タグに代表される通り、楽曲主体の利用と言うよりむしろ、楽曲と映像をひとつのパッケージとした「動画フォーマット転用型」の二次創作が支配的です。

 「オーバーマッド」タグのニコニコ大百科を見ても、ブルアカや、フリーレンや、ウマ娘や、振付師(真島茂樹さん)などのMADが同時多発的に制作され、ボカロ界隈を飛び越えて、あらゆる界隈にクロスオーバーしていったことが、時系列に沿う形で記録されています。

 考えてみれば、Vtuberの方による歌ってみたがボカロ作品にとっての起爆剤となるのは、ボカロ界隈の外側にあるVtuber界隈に楽曲が輸出されることで、いわゆる横展開的な形で楽曲認知面積が広まるからであるわけで、流行りのMADフォーマットというポジションを複数の界隈で同時期に総取りした『オーバーライド』が、驚異的な横展開によって、当時不動の王座にあった『人マニア』からビルボードの1位を奪い取ったのも、起こるべくして起こったことなのかなと感じます。

 加えて、上述したFrog96さんのまとめにも通ずることなのですが、最近のもうひとつのトレンドである「全編通してたくさん動くアニメーションMV」の場合は、二次創作のコスト(≒労力)も高くなりがちなので、『オーバーライド』のフォーマットそのものが、低コストで多くのキャラクターを載せやすい、いわば「二次創作容易性 (fan-madebility) 」の高いパッケージであったことも、高い波及性を生み、メガヒットに繋がるエンジンになっていたのではないかな、とも思います。ちょっと硬いですかね。もっとキャッチーに””ニジソーサカビリティ””とかのほうがよいのかも。

 というわけで、いわゆる「バズ」に二次創作は欠かせませんし、二次創作ドリブンでなにかに火を付けたい!と思うなら、そのような導線ありきのグランドデザインを描くことが必要なのかもしれませんね。(DECO*27さんとか、このあたりがものすごく巧い印象です)

◆世界電力の活動報告

 さて、本コラムの結びを兼ねて、直近の活動報告を以下にまとめさせてください。
 今月のトピックは3本建てです。

①『歩行訓練』WebCM放映のお知らせ

 「ボカコレ」アプリWeb広告の放映楽曲として『歩行訓練』が放映されています!
 放映期間は、1月中旬から4月16日までです。もしかしたら、もうご覧いただけている方もいらっしゃるかもしれません。たくさんの人気作品とともに『歩行訓練』ver. も放映して頂けることがとても嬉しいです!

歩行訓練 - ずんだもん



②『アンサーアントーカー』地上波放映のお知らせ

 テレビ神奈川「関内デビル」4月度EDテーマとして『アンサーアントーカー』が放映中です!
 ボカコレ2024冬「関内デビル賞」の受賞特典として、EDテーマに選定いただけました。帯番組のため、なんと月〜金で流れます。自分も過去に深夜番組のEDテーマから知ったバンドもいたりするので、とても感慨深いです!ありがとうございます!

アンサーアントーカー - ナクモ&めろう



③超会議出店のお知らせ

 「ニコニコ超会議2024」内にて開催される「THE VOC@LOiD 超 M@STER 55(超ボーマス55)」および「超オフ会ブース」に、それぞれ以下の通り出店/顔出しを予定しています。

<超ボーマス55>
4月27日(土) F-14 「世界電力」ブース
旧譜EP、新譜EP、バンドスコアを頒布します。
4月28日(日) い-01,02 「ボカロックコンピ2024」ブース
コンピ参加者として売り子を担当します。

<超オフ会ブース>
4月28日(日) 14:00〜15:00 「ぼかれびゅ超会議」ブース
ぼかれびゅ公式部員として、当日の企画に参加します。

 今回、頒布物としてバンドスコアを追加していますが、バンドスコアの頒布決定には、ちょっと勇気が必要でした。
 体感ですが、いまのボカロシーンの主流が電子音楽で、超会議でのボカニコをはじめとして、大型投稿祭と同時に開催されるDJイベントなどを鑑みても、公式的にもDJ/クラブカルチャーがメインストリームである印象を受けています。

 ぼくが主に制作しているバンドサウンドの強みはライブにあるのですが、生演奏にはプレイヤーと相応の設備が必要で、それを実施するのはすこしコスト高ですし、一方で、バンドサウンドをクラブカルチャーに持っていくと、楽器構成上どうしてもサウンドの圧で負けやすい、という状況で、本コラムの文脈を借りて言うなら「演奏が持ち味のバンドサウンドは、持ち味を活かした二次利用容易性 (fan-playability)が低い」と考えられるわけです。ムムム。

 ……と、ここで発想の転換が起きました。クラブカルチャーはクラブカルチャー、バンドカルチャーはバンドカルチャーなので、むしろ「軽音楽部やバンドサークルでコピーできるボカロ曲」という形であれば、バンドカルチャーのなかのボカロジャンル楽曲として、持ち味を活かした形で新たな強みが生まれるの……かも……?

 加えて、バンド楽曲は手法の共有がすこしむずかしいジャンルでした。正確には、楽器に対するリテラシーや技術と、譜面が存在しない場合は相応の音感が要求されるため、言ってしまえばDTMビギナーに優しくないんです。だからこそ、バンドスコア形式に書き下ろされた譜面に対応する形で、音作りや歌詞や使用プラグイン等の解説が書かれていると、バンドサウンドを志すDTMビギナーの方が、いったんぼくのプロダクトレベルまでは高速道路に乗れるの……では……?

 というわけで、需要があるかどうかはさておき、未来のある選択だなと考え、バンドスコアを頒布することにしました。昨今は、メジャーアーティストさえも「バンドスコアは採算が取れない」と公言しておりそもそも発行されることが少ない時代で、5曲入り、おそらく150〜200ページくらいのA4冊子を個人で刷る時点で採算が合うわけはなく、どうせ採算が合わないならと思い切って、会場限定で、大学生以下1000円という超学割プライシングをつけています。

 もしちょっとでもご興味のある方は、励みになりますので、ぜひご贔屓に………!
 せっかくなので、本コラムの締めとして、作成中のバンドスコアを先行公開します。けっこういい感じになっているので、新譜ともどもよろしくお願いします!それではまた来月お会いしましょう!

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【3】最後に

 #172。いかがだったでしょうか?皆様にとって、少しでも気になる楽曲との出逢いに繋がれば幸いです。

 次回はインタビュー記事公開となります。次回もお楽しみに。

 いよいよ4月となり、超会議に向けての企画やそれ以外にも様々な企画準備を行っていますので、公開されましたらよろしくお願い致します。それではまた、#173でお逢いしましょう(`・ω・´)ゞ

エディター(執筆者&構成&発行等) サポーターNO.118 ドロイド
コラム執筆:世界電力

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