雨の日はなんだか頭が重かったり、急に寒くなった日の朝方はどんなに頑張りたくても体がいうことを聞かなかったり、生理前は些細なひっかかりが見逃せなくてイライラが止まらなかったり……。自分の心身を制御できるだなんて思うのは、おこがましいことだったなあと感じることが増えた。老いたのかもしれないし、経験から学んだのかもしれない。諦めから生まれた冷静さもあるだろう。だからこそ『楽園をめざして』を読んでいてどこか他人事とは思えない自分がいた。

 事故死した7歳下の弟・航平の葬式で、彼に今日子という妻と1歳にならない娘・結がいることを初めて知った芥原(くぐはら)昇司。 
週刊文春デジタル