最後に異国の地を踏んだのは、もう半年前のこと。そろそろここではないどこかへと飛び立たなければと心がそわそわしているのを感じている。『女ひとり、インドのヒマラヤでバイクに乗る。』を読んだら少しは落ち着くかと思ったのに、かえって旅情をかきたてられてたまらない。とんだ計算違い。ああ、どこかへ旅したい!
 旅とバイクとお絵かきが好きな三十代の会社員・はるかは、東京で働く中で「有用でなければ生きていけない」という呪いに苛まれ、いつしか自分が何を好きなのかも分からなくなっていた。 
週刊文春デジタル