おかげさまで、本連載は六百回を迎えることができた。旧作邦画一筋で、これだけ続けられたのは、何より読者の皆様のご愛顧のおかげ。改めて、御礼申し上げたい。
 今でこそ、このように邦画を専門にしているが、映画を好きになった頃は苦手だった。一九八〇年代半ばに『グーニーズ』で映画の面白さに目覚めたため、以降は派手な楽しさを求めてハリウッド映画ばかり追っていた。一方、同時期の邦画は重かったり、暗かったり、貧乏臭かったり――という印象があり、小学生の身には取っつきにくかった。中学に上がる前後に名画座などで旧作にはハマっていくが、新作は苦手なままだった。
 そうした中で「え、新作邦画もハリウッドみたいに楽しく作れるんだ」と公開時に驚かせてくれたのが、今回取り上げる『大誘拐 RAINBOW KIDS』だ。今年で生誕百年となる岡本喜八監督によるコメディ映画である。 
週刊文春デジタル