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春日太一の木曜邦画劇場 第598回「日活ロマンポルノ以上の作品を東宝が製作した、これがその背景だ」『櫛の火』

2024/09/05 05:00 投稿

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  • コラム
  • 春日太一
 今回は『櫛の火』を取り上げる。一九七五年に神代(くましろ)辰巳監督が撮った作品だ。
 この時期の神代監督は日活のロマンポルノで話題作を連発していた。といっても日活と異なり、これは東宝配給作品だ。本来ならば健全な娯楽作品が求められる。
 ところが、だ。本作はロマンポルノ級――というより、それ以上の割合で、上映時間の多くを濃厚な性描写が占めているのである。特に前半の三十分は状況説明もほとんどないまま、主人公の広部(草刈正雄)と、恋人の弥須子(桃井かおり)、人妻の柾子(ジャネット八田)という二人の女性とのセックスシーンが入れ替わりで映し出される。 

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