今回は『女殺し油地獄』を取り上げる。
 さて、ここで少し近況報告を。拙著『鬼の筆 戦後最大の脚本家・橋本忍の栄光と挫折』(文藝春秋)が大宅壮一ノンフィクション賞を受賞し、先日、授賞式が開催された。この仕事をしていると「これで一区切り」という感覚はなかなか味わえないのだが、ここでは珍しく、そんな達成感を得ることができた。また、十月刊行予定の次回作の初稿もつい最近、書き終えている。
 そんなこんなで、十二年間抱えてきた「橋本忍」から少し解放された気分になった。
 ところが、だ。
 ふとAmazonのプライムビデオを眺めていたところ、オススメの欄に橋本忍脚本の本作が出てきたのだ。 
週刊文春デジタル