週刊文春デジタル

春日太一の木曜邦画劇場 第587回「バラエティや『悪役』だけではない中尾彬は卑小な男を演じても抜群だ」『内海の輪』

2024/08/28 07:00 投稿

  • タグ:
  • コラム
  • 春日太一
 中尾彬といえば、晩年はバラエティ番組への出演が目立っていたが、俳優として多くの方が印象を抱くのは、やはり「悪役」だろう。
 貫禄たっぷりの顔とシルエット、野太い声、ギラついた眼差し――全てにおいて押し出しの強さを感じさせ、多くのテレビドラマや時代劇などで主人公たちの前に立ちはだかってきた。ただ、彼の演じる悪役は、たとえば小沢栄太郎や安部徹が演じるような「頭の先から足先まで徹頭徹尾、揺るぎない悪」というのは意外と少なかったりする。
 強面な表側の一方、その裏側に巣くう不安や見栄といった「人としての小ささ」を奥底から醸し出す芝居が抜群に上手く、そのことが演じる役柄になんともいえない人間臭い魅力をもたらしていた。
 今回取り上げる『内海の輪』でも、そうだった。悪巧みをしながらも不安に駆られ、それでもなおその心情を必死に隠そうとする――そんな、中尾彬の「追いつめられ芸」ともいえる名演を堪能できる。 
週刊文春デジタル

ここから先は有料になります

チャンネルに入会して購読する

月額:¥880 (税込)

  • チャンネルに入会すると、チャンネル内の全ての記事が購読できます。
  • 入会者特典:月額会員のみが当月に発行された記事を先行して読めます

ニコニコポイントで購入する

  • この記事は月額会員限定の記事です。都度購入はできません。

コメント

コメントはまだありません
コメントを書き込むにはログインしてください。

いまブロマガで人気の記事

週刊文春デジタル

週刊文春デジタル

月額
¥880  (税込)
このチャンネルの詳細