この連載もそうですけど、私みたいに“お喋り”を仕事にしていると、何も考えてない時間というのがないんですね。
 例えばスーパーのレジでボーッと並んでいるつもりでも、前の人のカゴの中身が目に入ってきて「お買い得の牛肉をあんなにたくさん買うて、ネギに豆腐に……すき焼きやな! それも結構な大家族……」なんていつの間にか考えてます。危うく声に出して言いそうになりますもん。
「奥さん、今晩はすき焼きですよね!」って。絶対合ってる自信があります。
 で、そんなことばっかり長年やってますとね、あるときから耳がきゃんきゃん鳴るようになったんです。ぶーんと耳鳴りみたいな感じで特に夜がひどい。年いったからかな、と思ってお医者さんに行ったら、先生はこうおっしゃいましたね。
「ああ、これは……上沼さんは脳もお喋りなんですね」
 どういう理屈で脳がお喋りだと耳がきゃんきゃんいうのかわかりませんけども、そうらしいです。まあ「職業病」やと思ってます。
 しかしよく考えたら、あの先生、「も」ってなんか失礼やな(笑)。 
週刊文春デジタル