理想の歯科衛生士像【DHブログ】Vol.2
『オーラルフレイルだった義母』
3月22日は義母の命日。まもなく三回忌を迎えます。
義母は農家だったので、毎日畑仕事をして体力もあり、とても元気でした。しかし、年齢と共にだんだんと体力は衰え、畑仕事も出来なくなり、気づけば、カートが無ければ自宅の中も歩けなくなりました。そんな義母を心配して、義兄が一緒に暮らすようになりましたが、要介護2と認定されてからは、昼間はショートステイへ通うようになりました。
年齢を考えると自然な流れのようにも感じますが、私は違いました。義母の体力が落ちたのは、年齢のせいだけではなく、「食事」にもあったのではないかと。
農家なので、主食はお米。野菜もたくさんありました。しかし、摂食・嚥下機能低下が始まっていた義母の食事は、糖質や脂質が多い軟食ばかりになっていました。少しでも野菜や果物を食べてもらおうと持参しても、「後で食べる」と言って結局食べていませんでした。
なぜこのような食生活になってしまったのか。それは、義歯が合わず食事の時には外していたからです。義母は総義歯でしたので、食事の時に義歯を外していては当然、繊維質の多い食材や、固い食品は食べることはできません。口腔機能の低下で食事の量は減り、カロリーの質も低下し、筋肉量は落ち、体力も減っていくばかりだったのです。
思い起こせば、35年前に義父が脳梗塞で倒れた時からその兆候はありました。義父は寝たきりになり、7年間も入院生活が続きました。義父は話すことができず筆談、口から食事することも出来きず点滴。そんな入院生活で、義母も衰弱していきました。
元気を取り戻したのは、義父の二十回忌を迎えた頃くらいからでした。しかし、痩せ細った顎に、昔作った義歯は合うはずがありません。この頃から義歯は全く機能していないモノになっていたのだと思います。
義母は83歳で亡くなりました。世間で言われている「健康寿命」と「平均寿命」で生涯を終えましたが、オーラルフレイルから始まり、フレイル・サイクルを止められなかった「不健康な期間」は苦しかったと思います。
今振り返ると、食生活や口腔機能においてサポートできたことはもっと沢山あったと思います。しかし、当時の私にはその知識も知恵もありませんでした。今の私にできることは、歯科衛生士として、同じ悩みを抱えている患者さんやそのご家族に、正しい情報を提供し、健康へ導くことだと思います。
そして、1人でも多くの歯科衛生士さんに共感してもらえたら、と今日も思いを書き留めます。
~素敵な私たちでありますように~
長岐 祐子
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