フリーランサーズ・マガジン「石のスープ」

渡部真【勝手気ままに】vol.4「本当に想定外だったのか!?」その1

2012/01/26 19:47 投稿

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週刊 石のスープ
定期号[2012年1月26日号/通巻No.24]

今号の執筆担当:渡部真


連載コラム【勝手気ままに】vol.4
「本当に想定外だったのか!?」その1

【おまけコーナー】今月の「何だかなぁ」
ジャーナリズムとは何か


※この記事は、2012年1月に「まぐまぐ」で配信されたものを、「ニコニコ・チャンネル」用に再配信したものです。



■三陸地域の被害を見たときの驚き

 2011年3月11日以降、原子力安全・保安院と東京電力本社の記者会見に参加したり、厚生労働省に取材したりしながら、その時に抱えていた仕事を仕上げて、ようやく16日から本格的に被災地の取材を始めた事は、以前書いたと思う。

  余談だが、3月12日から自由報道協会の借りたばかりの事務所(東京都麹町)は、保安院や東電の記者会見を合間の休憩所・待機所として機能していた。そこに、自由報道協会のメンバーが出入りしていて、その時にフリーライターの渋井哲也さんたちと一緒に、被災地取材に行こうという話になった事も、以前に書い た。

 この時、コンビニエンスストアには、食料品や飲み物が消えつつあり、会員の食料確保のためにスクーターで買い出しに出た僕も、何軒かのコンビニを周ってようやくおにぎりを数個確保できたような状況だった。
  そんな中、ジャーナリストの江川紹子さんが、僕らのために、お重いっぱいに、おにぎりを作って差し入れをしてくれた。ところがだ。フリーライターの小川裕夫さんが、ほとんど一人で平らげちゃった(笑)。とくに、会見に出席するだけじゃなく、みんなを車で送り迎えするなど、ヘトヘトに疲れていた畠山さんのために、他のメンバーが残しておいた分まで食べてしまった。かくして、みんなが小川さんに文句を言っているのを見ていた江川さんは、なんと!一旦タクシーで自宅に帰り、再度、おにぎりを作って持ってきてくれたのだった。
「自宅にお米はたくさんあるから、大丈夫だよ〜」
と、猫語ではなく、人間の言葉でおっしゃっていた。いくつかの種類のフリカケおにぎり、ノリを巻いたおにぎりなど、とてもおいしくいただいた。
 このたび、江川さんが自由報道協会をお辞めになるという事なので、思い出話を書いてみた。話を戻す──。

  さて、水戸から始まった取材は、宮城県仙台市、名取市、亘理町、七ヶ浜町、多賀城市、利府町、福島県相馬市、南相馬市など、何度かに分けて取材しているうちに、あっという間に3月が終わってしまった。ちょうど、今回の震災で津波被害が大きかった東北3県の半分から南側の沿岸地域を中心に取材をした事にな る。

 この段階で僕は、相馬市、南相馬市、仙台市、七ヶ浜町、それにいわき市などを今後の取材の中心にしようと考えていた。本来のフィー ルドワークである学校や教育現場を継続取材したい考えていて、そのうちいくつかは目星がついたところだった。今後のことを考えたら、あまり取材範囲を広げると大変になるし、時間的にも予算的にも、北に行けば行くほど負担が大きくなる。
 それに、相馬市や仙台市で津波被害の悲惨な状況は十分に見たつもりだったので、北に向かう事に、あまり興味がわかなかった。
 この頃は、ほとんど渋井さんと二人で動いていたので、渋井さんに対して、
「とりあえず、石巻には行くけど、それより北方面については、渋井さんの意思に任せるよ。『運転手として連れていけ』と言われれば、4月一杯は付き合うけど、基本的に僕は、仙台や七ヶ浜以南を中心に取材を続けるつもり」
と伝えた。

  3月31日、僕らは相馬市や浪江町にいた。浪江町は、警戒区域内(当時は避難指示区域)内で牛のエサやりを続けているエム牧場に行き始めた頃。相馬市は、 磯部中学校の生徒たちが集団で避難している避難所に何度か行き、僕の顔を覚えてくれた子が何人かできた頃だった。そのまま相馬や浪江にとどまって継続取材したいと思ったのが本音だった。だから、渋井さんから
「石巻市の被害は大きいというし、行くべきだと思う」
と誘われなければ、その時は宮城県石巻市に移動することすらなかったかもしれない。

 とにかく、4月1日、石巻市に向かった。
 松島町を通り過ぎ、東松島市を越えて石巻市にたどり着くのだが、この辺りが、南北に広がる三陸地方にあるリアス式海岸の南端だ。

 石巻市に入り、市役所の災害対策本部で基本的な情報収集をし、渡波地区に向かった。市役所の周辺でも地震被害や津波被害を見たが、渡波地区に行って驚いた。これまで仙台以南の沿岸部で見てきた津波被害とは、まったく別の悲惨な被害状況を目の当たりにしたからだ。

DSC_4781.jpg
[写真]石巻市渡波地区の住宅街


「ええ? ええ? これどうなってんの?」

 僕が最初に津波被害を見た仙台や亘理に訪れた時の驚きは、2週間以上経ってやや慣れてきていたが、石巻市の街中に密集している瓦礫の山は、改めて驚かされた。
 阪神・淡路大震災を取材した経験を持つ渋井さんは
「今回の震災取材で、初めて阪神の頃と同じような被災地の風景を見た気がする」
と言った。
 

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