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『それが声優!』は、新人声優である3人のヒロインが、それぞれ「理想の自分」「現実の自分」「求められている自分」を持っていて、そのギャップから生じる迷走がユーモアに描かれている作品となっています。ただし、それだけではなく、声優業界ならでは特殊な慣習だったり、声優・浅野真澄の仕事論だったりが込められており、毎回、うならされてしまいます。
新刊『それが声優!鈴ちゃんと神谷さん』のあらすじをざっくり説明すると、ヒロインの1人である小花鈴(15歳)が進路に悩む過程で、先輩である人気声優・神谷浩史の芝居に対する熱意に触れ、ある決断を下す、となります。実在の声優である神谷浩史さんがカッコイイことを言っているのですが、個人的にポイントだと思った箇所は、鈴ちゃんが監督からオーダーされた「リアルな十五歳」に悩むシーンでした。
鈴ちゃんは「5歳で子役デビューし、今年で芸歴10年目をむかえる、ある意味ベテラン」という設定。おさない時から芸能活動をしていることはアドバンテージに思えるのですが、仕事のため、部活動もしたことなければ、修学旅行にも体育祭にも参加したことがない。そのため、「リアルな十五歳」が分からないと悩むのです。
そこに、神谷浩史さんが登場して良い話をするのですが、ここで重要なことは、鈴ちゃんが「リアルな十五歳」を理解できたという描写がないことです。ただ、神谷さんの仕事に臨む姿勢から「そっか…それが声優―」と気付くのです。このシーンには、さまざまなヒントが隠されているのですが、のちの決意に至る過程は明確に文章化されていないため、この部分の解釈をどうするかが、最大のポイントなのだと思っています。
私は、悩みのレイヤーが変化したのだと解釈しました。つまり、小花鈴という「リアルな十五歳」の持つ悩みと、小花鈴という「声優」の持つ悩みが異なる階層にあることを理解し、それぞれに解決の道筋をつけたという考え方になります。
もちろん、自身の夢を自覚したことで、演じるキャラクターの気持ちが理解できたという側面もあるでしょう。また、これまで気にしていなかった制作の過程に気付くことで、責任感が増したという側面もあると思います。しかし、それらを含め、作品タイトルである「それが声優」という言葉で表現したことは、1つのクライマックスだと感じられました。
・はじめまして。
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私の仕事はライターで、声優のようなキラキラした人気職業ではないのですが、最後のアウトプットを任されているという責任を感じることは、しばしばあります。例えば、インタビュー記事などであれば、私が書いたことが、インタビューイの話したこととして、世間に広がることになります。
もちろん、インタビューイによる原稿のチェックがあればいいのですが、「ノーチェックでいいですよ」というケースも多々あります。それはそれで、やりがいはあるのですが、インタビューイからの信頼を裏切らないようにとのプレッシャーも強まることになります。
ただ、ライターが書く文章の場合は、文法のチェックや事実確認などを行えば、「間違いではない」ものは比較的簡単に作成でき、それで問題ない場合がほとんどです。しかし、声優の場合は、「間違いではない」ではなく「正解」が求められるため、そのプレッシャーは、いかばかりでしょうか。
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