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劇場版『Wake Up,Girls! 七人のアイドル』感想

2014/01/26 12:30 投稿

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ごきげんよう。有料メルマガ評論家の渡辺文重です。先日、「有料メルマガ評論家が2014年冬アニメ期待度を5段階評価」(http://ch.nicovideo.jp/sammy-sammy/blomaga/ar439597)という記事を公開したのですが、『Wake Up,Girls!』の期待度は、5段階評価で1。最低の評価だったのですが、ここまで評価が低いと、かえって気になってしまうもの。そこで、TV版の前日譚(たん)にあたる劇場版『Wake Up,Girls! 七人のアイドル』を鑑賞することにしたのですが……。期待度が低かったことも影響していたと思うのですが、意外にも面白かったで、レビューを執筆したいと思います。

以下、ネタばれありです。

◆劇場版は島田真夢の物語

劇場版は、仙台に拠点を置く弱小芸能プロダクション「グリーンリーヴス・エンタテインメント」の社長、丹下順子(声優:日高のり子)が、アイドルグループの結成を思い付くところからスタートします。そして、さまざまな方法で6人の少女が集まるのですが、劇場版に関しては、この6人は「十把一絡げ」です。TV版では、彼女たちの物語も描かれるのでしょうが、劇場版では、気にすべき存在ではありません。そう、劇場版は、七人目のヒロイン、島田真夢(声優:吉岡茉祐)の物語なのです。

島田真夢は、国民的アイドルグループの初代センターながら、何らかの事情により脱退。仙台で、普通の女子高校生として日々を過ごしていたのです。そんな彼女と、事務所のマネジャー・松田耕平(声優:浅沼晋太郎)と出会うシーンが秀逸です。

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公園のベンチで昼寝をしている松田。その横にあるブランコで、真夢が独り、立ちこぎをしながらアカペラで『大空のプリズム』を歌いだすのです。このシーンでは、島田真夢というキャラクターの全てが描かれます。元アイドルということで周りからは奇異の目で見られ、孤立していること。それと同時に、一度はあきらめたアイドルに対して未練を持っていることが分かります。そして、アイドル事情に疎く「島田真夢」を知らなかった松田ですら、「アイドルにならないか」と勧誘するほどの圧倒的なオーラ。しかし、島田真夢は、アイドルにならないかという誘いを、かたくなに断り続けるのです。

一方、夏に集まった6人の少女たちは、観客が誰1人いないイベントでのパフォーマンスや、さまざまなレッスンを重ね、12月のデビューライブへと向かって行きます。しかし、デビューライブの2週間前になって、事務所社長の丹下が失踪。「デビュー」自体が白紙になります。今後の活動をどうするか? 6人の少女とマネジャーの松田が話し合いをしている、まさにその時、島田真夢が現れ、「アイドル、やらせてください」と頭を下げるのです。

……このように書くと、唐突な印象を受けますが、これが全く唐突ではないのです。それは、6人の少女たちがデビューに向けて活動をしている様子とともに、島田真夢の心境の変化が丁寧に描かれていたからです。クラスメイトで、6人の少女の1人・林田藍里(声優:永野愛理)を通じ、島田真夢は彼女たちの様子をうかがっていたのです。林田藍里の相談を受ける時に見せる島田真夢の表情。そして、林田藍里たちがダンスレッスンをしている様子を遠くから眺めているうちに、自然とステップを刻みだす両足。

松田から手渡されたアイドル時代のDVDを再生し、映像の中の自分を見て涙を流した彼女が、「Wake Up,Girls!」の窮地を知り、雨の中、傘も差さずに自宅から事務所までを走り、「アイドル、やらせてください」と、頭を下げることは、何の不自然もありませんでした。

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◆輝く瞬間を止めないで

「この物語、どこかで見たことがあるなぁ~」と思ったのですが、それは、南青山少女歌劇団の『輝く瞬間を止めないで』でした。共通点は、一度は夢をつかみながら、それを手放した少女が、再び、夢を目指して行くということ。それを、まさに等身大の少女たちが演じているという点で、既視感を覚えたのでした。そういう意味で、まさに王道と言える物語だったのですが……。

この高揚感を持ってTV版の1話を視聴するのと、劇場版を鑑賞せずにTV版の1話を視聴するのでは、大きなギャップが生じることは間違いありません。TV版の1話は、あの高揚感に水を差す内容なのですが、いきなりTV版を見ると、ただ、水をぶっかけられただけ。面白くないと思われても仕方がないなという印象を受けました。『THE IDOLM@STER』ぐらいに認知度が高い作品であれば、こうしたTV版の1話もありだと思いますが、どうなんでしょうかね。

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この作品は、『THE IDOLM@STER』や『ラブライブ!』などとも比較されますが、1つ、大きく異なる点があります。それは、ファンの存在です。『Wake Up,Girls! 七人のアイドル』には、大田邦良(声優:下野紘)という仙台在住の島田真夢ファンが登場するのですが、彼の存在が、七人の少女たちを、「普通の少女」ではなく「アイドル」たらしめているのです。

やはり、アイドルはファンがいてこそアイドルなんですよね。それは先日、ももいろクローバーZのパフォーマンスを見て感じました。ももいろクローバーZは、もちろん、彼女たち自身のパフォーマンスも素晴らしいのですが、それ以上に、ファンの熱狂がすさまじいと感じたのです。

ファンを熱狂させるアイドルがすごいのか。それとも、アイドルに熱狂するファンがすごいのか。おそらく、ファンとアイドルは両輪の関係なのでしょう。その点にスポットを当てていることも、『Wake Up,Girls!』の魅力ではないでしょうか。この点は、『世界でいちばん強くなりたい!』とも共通しますが……。

◆山本寛氏について

この作品について語ると、少なくない確率で「ヤマカン(山本寛監督)が嫌い」と言われるのですが、私個人としては、特別な感情は持っていないと申し上げております。ぶっちゃけ、実際に会ったことない人は評価できないですよね。ただ、有料メルマガ配信者(http://www.mag2.com/m/0001575242.html)としては、未熟だと感じる部分はありましたが……。言うまでもなく、面白い有料メルマガを配信するスキルと、アニメ演出のスキルは、全くの「別物」ですから、アニメ作品への評価とは無関係としか言えないのです。

そういう意味で、現在、家入一真氏が2014年東京都知事選挙に出馬していますが、彼が過去、有料メルマガを遅配していたことと、彼の持つ政治家としての手腕は、「別物」ではないかと思っています。有料メルマガ評論家の私が言うのもなんですが、有料メルマガを配信できるかどうかなんて、人生において、大して重要な問題ではないのです。一度失敗したなら、再び挑戦すればいいのです。『Wake Up,Girls! 七人のアイドル』は、そんなことを教えてくれる映画でもありました。

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