◆今回の概要
「今週のあいさつ」では『ガッチャマン』と『CASSHERN』について熱く語っています。あと、中川淳一郎氏にお会いしたのですが、きちんと禁酒をされていました。
◆今週のあいさつ
先日、映画『ガッチャマン』を鑑賞してきました。正直な感想を言わせてもらえば、面白くなかったです。その理由を、同じくタツノコプロのアニメ作品を実写化した『CASSHERN(キャシャーン)』と比較して考えたいと思います。なお、世間的な評価は分かりませんが、私にとっての『CASSHERN』は日本映画(アニメ以外)の中で、最高傑作の1つだと思っています。
この2作品における最大の違いは「敵」の描かれ方にあります。これは、あらゆる作品に言えることなのですが、「敵」の目的は大きく2つに分類できます。それは「世界征服」と「人類抹殺」です。この2つの言葉からは同じような印象を受けますが、実際には全くの別物です。「世界征服」は、言い換えると「人間社会を支配すること」になりますが、「人類抹殺」は文字通り、地球上から人間の存在を消し去ることが目的となります。
映画『CASSHERN』の「敵」であるブライキング・ボスの目的は「人類抹殺」です。ネタバレになるため細かい言及は避けますが、ブライキング・ボスとその仲間たちは人間たちからひどい仕打ちを受けたことを理由に、人間に対する復讐(ふくしゅう)を誓うことになります。そのため、彼らの味方となるのは、偶然に発見したロボット兵器だけとなります。
これは、オリジナルの『新造人間キャシャーン』にも通じる設定です。公害処理用ロボットBK-1は雷に打たれたことで自我を持ちます。そして、ブライキング・ボスを名乗り、公害の元凶となる人間を抹殺しようと、ロボット兵器「アンドロ軍団」を率いて、人類に宣戦布告をするのです。細かい設定は異なりますが、『CASSHERN』と『新造人間キャシャーン』のブライキング・ボスは、同じ目的を持っているのです。
一方、映画『ガッチャマン』の「敵」であるベルクカッツェの目的は不明瞭です。ベルクカッツェの正体は、被差別的な立場に置かれた人間「適合者」で、敵組織「ギャラクター」の目的は、「適合者」が「自由」を得ることだと主張します。これは「世界征服」に類する目的ですが、その活動の描写は、まさに「人類抹殺」です。もし、「適合者」がエリートとして優雅に暮らしたいのであれば、その富を支える「奴隷」である人間は、可能な限り殺すべきではありません。「ギャラクター」の破壊活動により人間の文明レベルが低下すれば、そこから得られる「富」も減少するからです。
なお、『科学忍者隊ガッチャマン』(1期)の「敵」の目的は、非常に複雑です。まず、ボスである総裁Xの目的は、最後まで不明となっています。ちなみに2期の『科学忍者隊ガッチャマンII』では、太陽を恒星爆弾として利用する「ソーラーシフト計画」を実行します。これは「人類抹殺」に類する目的と言えます。また、3期の『科学忍者隊ガッチャマンF』では総裁Zは、反物質小惑星を地球にぶつけようとします。
しかし、総裁X(総裁Z)の目的が最初から「人類抹殺」だったとしても、敵組織「ギャラクター」は「世界征服」を目的に動いていたと考えられます。1期の「敵」であるベルクカッツェは、被差別的な立場に置かれた人間のため、人類に対する復讐を望んでいた可能性はあります。しかし、「ギャラクター」は人間で構成された組織です。そのため、「人類抹殺」までは望んでいなかったと推測すべきでしょう。なお、2期のゲルサドラも、3期のエゴボスラー伯爵も、総裁X(総裁Z)の目的が「人類抹殺」と判明した後は、反旗を翻しています。
オリジナルの『科学忍者隊ガッチャマン』では、総裁Xとベルクカッツェで目的が異なっているのですから、映画『ガッチャマン』では、その目的を明瞭に説明すべきだったと思うのですが・・・。少なくても、私には最後まで「敵」の目的が分かりませんでした。
しかし、人にはお勧めできない作品ではありますが、それなりに楽しむことはできました。仮に「ギャラクター」の目的が「世界征服」だとするならば、ガッチャマン側の態度は納得できなくもありません。この世界観では、必然的に「ギャラクター」と「ISO(国際科学技術庁)」による「適合者」の争奪戦となるからです。そうなった場合、「ISO(国際科学技術庁)」側がガッチャマンに対して過度に厳しい姿勢で臨めば、造反される危険性が生じます。そう考えれば、恋愛に夢中な大月ジュンをいさめることは難しいでしょう。そういうことは、実際にもよくあることですから、指揮官らしき南部博士には悲哀を感じることができます。
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