AURA~魔竜院光牙最後の闘い~ 設定資料集 監督 岸誠二 声 島崎信長

◆『AURA~魔竜院光牙最後の闘い~』
(満足度★★★★★/5段階評価)
いわゆる「中二病」をテーマにした作品。最近、似たような作品が発表されているが、中でも、特に優れた作品だと評価できる。「中二病」はギャグだけで語れるような話でなく、現実にはいじめや家庭不和なども絡む、深刻な問題なのである。その深刻さを真正面から受け止めていることを評価したい。

◆簡単なあらすじ
「中二病」を卒業した主人公(高校生)が、現役「中二病」の女子高生(通称「チョロニ病」)に付きまとわれる。

◆感想(ネタバレあり)

ノートに異世界やキャラクター、アイテムの設定などを書き殴った「中二病」を患っていた時期は、私にもあった。いや、「有料メルマガ評論家」を名乗り、いまだに浮ついた生活をしていることを考えると、ある意味、現役の「中二病」患者とも言える。

・・・このように、過去の痛かった自分を面白おかしく語ったり、「ある意味、現役の中二病なんだよね」と言ったりする人間にとって、「中二病」は、単なる「持ちネタ」の1つにすぎない。それは美化された青春の1ページであり、あるいは、ギャグや笑い話として消費するだけとなった、過去の出来事なのである。

しかし、現役の「中二病」患者や、「中二病」を卒業したばかりの人間にとって、「中二病」は生々しい痛みの記憶と隣り合わせの、まさに現在進行形の出来事なのである。

大人の私がアニメを好きだったり、「有料メルマガ評論家」を名乗ったりしているのは、自分の意志である。しかし、いわゆる現役の「中二病」は、必ずしも、自分から望んで「中二病」になっているとは限らない。家庭の不和であったり、学力の問題であったり、運動能力の問題であったり、友だち関係であったり、恋愛関係であったり、それこそ、いじめの問題だったりがあり、そうした問題から逃避した結果が「中二病」という場合もあるのだ。

『AURA~魔竜院光牙最後の闘い~』は、そうした現役の「中二病」患者が持つ痛みの部分に、しっかりと踏み込んでいる印象を受ける。クラスメイトから浴びせられる罵詈(ばり)雑言や冷ややかな視線、トイレの個室に閉じ込められ、ホースで水を浴びせられる屈辱など、忘れてしまいたい出来事が描かれているのだ。

また、現在ならではの問題にも踏み込んでいる。インターネットで検索すれば、簡単に怪しげな都市伝説を見つけることができるし、デジタル化した写真は、永遠に消えることなく存在し続ける。それに、これは過去も現在も同じだが、高校生は親の支援なしには生活することはできない。場所を変えても、時がたっても、いつまでも「やり直し」ができない絶望感に、劇中、何度も胸を締め付けられることになる。

そうしたつらい現実から逃れるため、壮大な儀式を行うヒロインに対し、主人公が、まさに「魔竜院光牙最後の闘い」を挑むクライマックスは、カタルシスを生み出す。多少、強引な気もするが、寛容であることの素晴らしさや、勇気を持って行動することの大切さなどがストレートに伝わってくる、前向きな気持ちになれる作品なのである。