平安ミステリーを解決するバディは道真×業平
「うた恋い」のヒットで、絢爛たる平安時代の恋愛模様はずいぶん知られるところになりました。作者のこだわりと愛により、平安の風俗もしっかり書かれているところがすばらしいコミックです。
今回紹介するコミック「応天の門」は同じ平安の世を題に、クライムミステリーを描いた一冊です。平安の世にも犯罪はあり、検非違使は当時の警察に当たる任を京都で担っています。在原業平は、平安時代の恋歌の旗手として有名であると同時に検非違使でもあり、犯罪の解決に挑みます。
妖怪やたたりも信じられている時代ですから、単なる犯罪も迷信と結びつくこともあります。非合理的な様相を帯びることもあります。
そこに豊富な知識と理性で、科学的な光を当てるのが菅原道真です。
菅原道真と在原業平は同時代人だった!
このコミックでもっともおもしろいところは博識の学者として知られる菅原道真が10代のまだ未熟な若者として登場し、名うての恋愛巧者(かつ恋歌の読み手)として知られる在原業平が壮年を経た年齢で登場するところです。
ざっと調べてみたところ、確かにふたりは同時代人で、年齢差は20歳。ドラマ「相棒」に登場する新人と右京さんの年齢差を考えれば近いかもしれません。
在原業平は夜這いの帰りにたまたま道真と出会います。道真の博識はすでに世に知られるところで、業平は道真に犯罪解決の協力を求めました。業平の行動力と道真の知識が結びつくことで、犯罪に解決の光があたる。新しいバディの誕生です。まだ一巻ながら、一気に読ませる2つのエピソードは完成度も高く読み応え抜群です。
ちなみにもうひとり登場するおっちょこちょいの道真の友人は、百人一首にも登場するある歌人ではないかと思いますが、どうでしょうか。そのあたりも楽しみです。
陰陽師とも、うた恋いともまた異なる貴族の世界
貴族の時代を描いたコミックとしては「陰陽師」は外せないところです。「うた恋い」も完全に時代、キャラが重なる一冊。(往年の名作コミックとしては「なんて素敵なジャパネスク!」「あさきゆめみし」とかもオススメです)。
しかし、「応天の門」はこれらに負けず、考証もしつつ現代にマッチしたストーリーを紡ぎ出しています。身分(職階)が違う道真の衣装と業平の衣装もちゃんと書き分けており、お見事です。まだ一巻のみですが、続刊が楽しみな一冊です。ぜひ読んでみてください。