シトシトと雨が降る、渋谷の夜。
雨のにおいをかぐと思い出す、あの街…。
先日、道玄坂にあるFabCafeにて、ポートランドをテーマにしたトークイベント「OpenCU×Roomie ポートランドが気になる理由 〜創造都市のサステナビリティ」が開催されました。
当日の様子をざっと振り返ってみます。
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当日は雨にも関わらず多くの人が集まり、入り口までいっぱいという盛況ぶり。ポートランドの関心の高まりを改めて実感しました。
ドリンクとして、ポートランドのHUBビール(ホップワークス・アーバン・ブリュワリー)やオリジナルの焙煎によるコーヒーもふるまわれ、お客さんは味覚でもポートランドを体験されていました。さらに、Jay Kogamiによる、ポートランドのバンドをフィーチャーした特別DJも楽しむことができました。
トークセッションでは、わたしルーミーの中島彩と、自由大学の岡島悦代さん、ルーミーの兄弟メディアである『ギズモード・ジャパン』編集長の尾田和実さん、3名がトークしました。
まず最初にわたしのパートでは、2年半にわたる自身の在住経験を交えつつ、コメディドラマ『Portlandia』と絡めて「ポートランドってどんな街?」といったお話をしました。
『Portlandia』は、サタデーナイトライブで人気のフレッド・アーミソンさんと、解散したロックバンド、スリーター・キニーのメンバー、キャリー・ブラウンスタインさんの2人が主役のコメディドラマ。ポートランドの”あるある”な出来事がコントのように繰り広げられていきます。
実際にポートランドでロケをしていて、地元のショップやローカルな人が巻き込んで作っている作品なので、ポートランドの気質や雰囲気を感じ取るにはうってつけのドラマなんです。
数あるエピソードの中から、シーズン1の一番最初のエピソードを紹介しました。
一見ダサいのですが、一周まわってかっこいい感もある。この絶妙な空気感がたまりません。
このオープニングにはポートランドの特徴がギュッと要約されています。簡単に説明すると…
アメリカの都市部の90年代はいい時代だった。みんなタトゥーが入ってて、バンドもやってて、地球を救おうって歌ったり、ヘンテコでいることがクールとされていて、若者は週に数回コーヒーショップで働きながら気ままに仲間と好きな事をして暮らす、車じゃなくて自転車やスケボーに乗る、みたいな時代だった。それがまだ現実に存在している街があって、それがポートランドなんだ。
このエピソードに出てくるピエロの格好をしている人たちや、パンクなおじさんたちは、実際にストリートフェアや街で見かけることがあります。
もうひとつは「DJ Night」というエピソードから、アーティストが生きやすい街、という側面についてお話しました。
街で会う人会う人に「今夜ぼくDJするから」って声をかけられまくって、二人がノイローゼ気味になっています(笑)
ポートランドにはDJをはじめとして「アーティスト」がたくさんいます。無名、有名問わず、自分のやりたいことを純粋に追いかけて表現している人が多いという印象です。
アーティスト達が活動しやすいのは、家賃や物価が安くて生活しやすい環境があるから。さらには、街の人がそれをサポートする姿勢をもっていることが大きな理由といえます。
表現する人がいれば、それを応援する人がいて、さらにお金を出す人もいて。大きい、小さいはありますが、そういったカルチャーシーンがビジネスとして成立するいい循環ができている気がします。
ポートランドのスローガン的な言葉として「KEEP PORTLAND WEIRED」というものがあります。「ずっとヘンテコなままでいようよ」という意味です。
ポートランドの人々は自分たちの街がヘンであることに誇りを持っています。それは、ローカル意識を強く持っているとも言い換えられます。そんな彼らの強い地元愛がポートランドをさらにユニークにしている気がします。
総体的にみたとき、ポートランドは「個性的」という表現が一番合うのでは、というのが個人的な見解です。
続いて、ポートランドの真実を探るガイドブック『TRUE PORTLAND』の編集・記事執筆を担当された、岡島悦代さんのトークです。
『TRUE PORTLAND』での現地取材を通じて見えた、ポートランドの街の性質について解説されました。
「ニューヨークのような大都市の先端にいた人が、あまりに忙しくなりすぎた環境に疲れて、もうこういうのは十分だと思った。次に大都市で培ったセンスは保ったまま、自分なりのペースで仕事と人生をバランスさせたい、と思ったときに見つけたのが西海岸のポートランドだった」
by John C Jay President / Executive Creative Director GX
ポートランドには組織の中で働くことに自己を見いだすのではなく、そこからドロップアウトして自己表現をしている人が多いのが特徴、と話す岡島さん。続いて、クリエイティブ都市について、おもしろいセオリーを紹介していました。
都市の創造性をはかる3つの「T」。
・Talent(人材)
・Technology(技術)
・Talerance(寛容性)
by『クリエイティブ資本論』リチャード・フロリダ(著)、井口典夫(翻訳)
ポートランドはこの3つが揃っているうえで、岡島さんは特にTaleranceが強いところに注目しているそうです。ゲイの市長が誕生したり、タトゥーを入れた人が街中にいたり。
DIY精神があり、高い文化的IQを持ち、さらに質の高い生活を求める人が他州から移住してくるケースが年々増えているとか。
そして、岡島さんが紹介した、世界的な規模のインデペンデント広告会社、ワイデン+ケネディが手がけたポートランドのPRムービーもシビれます。
最後に、『ギズモード・ジャパン』編集長、尾田さんのトーク。尾田さんの友人がイベントと同日にポートランドを訪れているとのことで、最新の情報を現地からレポートをしてくれました。
「自転車専用レーンや、スタンド、電車の中にも持ち込めて、自転車に回るには最高の街」
「髭モジャな人はポートランドの中心地から離れるとほぼ見かけない。局地的なファッションなのでは?」
「スバルの車がたくさん走っている」
「小さなブームが起きているとはいえ、現地で日本人はまったく見かけない」
尾田さんがポートランドに興味を持ったきっかけは、ロックバンドThe Smithの伝説的ギタリスト、ジョニー・マーがポートランドで暮らしていると聞いたこと。ドラマ『Portlandia』にも出演しています。
イギリスのイーストエンド、ニューヨークのブルックリンのように、話題になる都市の遍歴は、音楽シーンの盛り上がりと深くリンクしているとのこと。今後、都市ブームの先読みをするならば、音楽シーンに注目するといいかも、と話してしました。
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あっと言う間に2時間が経ち、大盛況のうちにイベントが終了。会場のお越しいただいたみなさん、Ustreamでご覧いただいたみなさん、ありがとうございました。
街を訪れた際、人それぞれ、受け取る印象は違うものです。日本からの直行便もあるので(2014年7月現在)、ぜひご自身のカラダでポートランドの空気を感じてみてください。
今年の8月ポートランドに行ってその魅力を体感しようという企画「CREATIVE CAMP in ポートランド」が開催されます。
2週間ポートランドに滞在し(1週間のみの参加も可能)、自分の興味に合うプログラムを選択して、そのクリエイティブな精神を学び取ろうというもの。現在参加者を募集中とのことですよ。
これからもルーミーではポートランドの情報をお届けしていきます。お楽しみに!