夫の工(たくみ)さんのそんなやさしいひと言から動き出した、横田家のマイホーム計画。
ひとり息子の創吉くんの保育園や、ご夫婦の勤務先であるZOZOへのアクセスを考慮して、横田さん夫妻は千葉の団地の一室を購入しました。
お名前(職業):横田美穂さん(株式会社ZOZO勤務)、工(たくみ)さん(株式会社ZOZO勤務)、創吉くん(5歳)場所:千葉県千葉市
広さ:3LDK+WIC/72.90㎡
物件購入費用:約1200万円
リノベーション費用:1480万円
築年数:42年(1979年築)
間取り図:
現在のスタイリッシュな部屋からは想像できませんが、購入した物件は築40年(当時)で、中はボロボロだったそう。
妻の美穂さんが中心になり、構想から施工までに約半年の年月をかけてリノベーションをおこない、あたためていた理想のイメージを反映させた素敵な住まいに生まれ変わりました。
さっそくこだわりの詰まったお部屋を見せていただきましょう!
お気に入りの場所
思い切り料理ができる厨房みたいなキッチン料理がお得意の美穂さんが、いちばんこだわったのがこちらのキッチン。
「作業スペースが広めのステンレス天板のキッチンにしたかったんです」(美穂さん)
キッチンメーカーが販売するシステムキッチンの導入はまったく考えず、厨房のような質実剛健なキッチンを造作工事でつくってもらいました。
「引き出しがあるとしまう場所やしまうものが限定されてしまいそうなので、カウンター下はオープンに。自分で好きなように収納できるように、棚板は可動式にしてもらいました」(美穂さん)
以前の賃貸の住まいから使っているダイニングテーブルと高さと幅を合わせた、ステンレス製の作業台も造作。以前の住まいでは、キッチンの作業スペースが狭く、新居で念願だった広い作業スペースを叶えました。
ここで創吉くんと一緒にクッキーづくりを楽しむこともあるとか。
「天板の端の部分にコンセントを付けてもらったんですが、ハンドミキサーなどを使うときに便利。在宅勤務のときのPCの電源としても重宝しています」(美穂さん)
作業台の下もオープンなつくり。無印良品のステンレスユニットシェルフには食器類を、上段のステンレスワイヤーバスケットには食材をまとめています。
「設計時にこれを置きたいと伝えて、ぴったりのサイズにつくってもらいました」(美穂さん)
キッチンの床は、モルタルのような質感が表現できる左官材のモールテックス仕上げ。
「掃除のときに取り払うのが面倒なので」と、足元にマット類を敷かないのが美穂さん流です。
隅っこが落ち着く? 息子さんのコーナー広々としたLDKの一角に、ネットカフェ風!?の居心地のよさそうなコーナー発見。
こちらは創吉くんのお気に入りの場所で、「5歳で専用のテレビスペースがあるんです。もともとは椅子も僕のものだったんだけど……いつのまにかとられちゃいましたね(笑)」と工さんが羨望の眼差しを送ります。
ここは創吉くんが小学生になったら、学校の宿題をする場所になる予定だとか。壁のブックスタンドには今は美穂さんの料理本が並んでいますが、将来的には創吉くんの本を並べたいと考えています。
洗濯室も兼ねたウォークインクローゼット「以前の賃貸の住まいで、洗濯物をそれぞれの部屋にしまいに行くのがすごく面倒で。1カ所で完結できるようにしたんです」と美穂さんが見せてくれたのが、こちらの部屋。
基本的には広いウォークインクローゼットなのですが、同じ空間に洗濯乾燥機も置いて、乾燥まで済んだ洗濯ものはそのまま収納できる、という便利な仕組みです。
壁際には折りたたみ式の作業台も完備! タオル類をたたんだり、アイロンをかけるときに活用しています。
「ほとんどの衣類は洗濯乾燥機からそのままハンガーラックへ。洗濯物をたたむ、という作業が必要なくなりました」(美穂さん)
「飛び石」のある玄関「僕はこの飛び石が好きですね」と工さん。「え? 飛び石?」と取材班が不思議そうにしていると、玄関のたたきの部分に確かに「飛び石」が! 工さんがポンポンと軽快に飛び石を使って向こう側へ渡るところを見せてくれました。
玄関のたたきの部分を予定より広げることになり、向こう側にあるトイレ&浴室へ移動するときに素足でたたき部分を歩かなくていいように、リノベ会社のデザイナーさんが提案してくれたのだとか。
「玄関が広いと日々暮らしやすいなって感じます。自転車が置けるのもとても気に入っていますね。自転車はこの家を購入したときに、当時の上司に新築祝いに欲しいといってもらったものです(笑)」(工さん)
この部屋に決めた理由
入った瞬間の明るさが気に入って購入を決意工さんはなんとなく「30歳になるまでにマイホームを」と考えていたものの、実はそれほど住まいに対するこだわりはなかったのだそう。美穂さんを喜ばせたいと、ふと「家を買おう」と口にしたら、あれよあれよと現実になっていったとか。
いっぽうの美穂さんは、以前からリノベーションに興味があり、インスタグラムなどで施工事例をよくチェックしていたのだそう。新築マンションよりも、中古物件をリノベーションすることに魅力を感じ、ごく自然にこの選択肢に行きついたといいます。
リノベーションはnuリノベーションに依頼。
「施工事例に好きな感じのお宅が多くて、他の会社は検討せずにnuさんに決めたんです。物件探しからサポートしてくれることも決め手になりました」(美穂さん)
物件の内覧は10件ほどおこない、おふたりのお眼鏡にかなったのがこちらの築40年の団地の一室でした。
「入居前は壁紙がベリベリにはがれていたり、専用庭の植物が伸び放題で外が見えなかったりと、廃墟みたいだったんです」(美穂さん)
そんな「廃墟」のようだった部屋をどうして購入することにしたのでしょう?
「フルリノベーションしようと思っていたので、古さはそれほど気になりませんでした。部屋に入ったときにとても明るく感じられたのがいいなと思って、専用庭のある南側に間口が広いつくりが気に入りました」(美穂さん)
新居のどこかにガラスの扉が欲しいと思っていた美穂さん。LDKの出入り口に高さが天井まである迫力の引き戸を実現しましたが、物件の内見時の段階で「ここにガラス扉をつけられそう」と思ったのだとか。それもこの物件を選んだ大きな決め手になりました。
住まいのプランニングは美穂さんが主導権を握ったそう。
「コンクリートむき出しの感じが好きで、内装にモルタルを使ってもらいました。ステンレスのキッチンとか照明とか、理想のイメージをたくさん伝えて形にしてもらったという感じです」(美穂さん)
リビングの床はサイザル麻を採用。
「最初は夫からゴロンと寝転がれる素材が良い!と、畳を熱望されていたのですが、家のイメージとは不釣り合いで即却下しました(笑)。そこで、畳に代わる素材を検討していて、インスタグラムでモルタルとサイザル麻を組み合わせた空間を見て、相性がよさそうに感じたので、サイザル麻にしたいって私からデザイナーさんへ希望を伝えました」(美穂さん)
各部屋の照明にもこだわり、イメージに合うものをデザイナーさんに探してもらいました。寝室には省スペースで設置できる壁付けのブラケット照明を採用。
「子どもの調子が悪いときなどに、様子を見るために横になったまま手元で電源をつけられるのが便利です」(美穂さん)
残念なところ
「タンクあり」にしたトイレモルタルで仕上げたトイレは「カッコいいし、狭さがかえって落ち着く」と、工さんのお気に入りの場所でもありますが、今になって「残念」と思っているところも。
「本当はタンクレストイレにしたかったのですが、希望のメーカーでは予算内に収まるトイレの選択肢が一択しかなく、タンクつきのトイレにしたんです。本来はシルバー色のスイッチプレートを希望していたのですが、メーカーの制限もありごく普通の白いものになりました。トイレの形に凹凸があって掃除が大変だし、今となってはやっぱりタンクレスがよかったかなって」(美穂さん)
お気に入りのアイテム
中身が一目瞭然のフレッシュロック最近になって揃えたフレッシュロックが美穂さんのお気に入り。開け閉めが簡単にできる、軽くて扱いやすい、クリアなプラスチック製の保存容器です。
「今まではパッケージの袋のまま収納していたのですが、開け閉めしにくく、すぐ埋没するのでストレスがありました。夫が〇〇はどこ?とすぐ聞いてくるので、小さなケンカが起こったりして(笑)。これに移し変えるとどこに何があるかひと目で分かって便利です。無印のバスケットにぴったりおさまるのもうれしい」(美穂さん)
料理が映える波佐見焼の器もうひとつ、美穂さんのお気に入りがこちらの器。長崎の波佐見焼の老舗とL.Aを拠点にする日本人デザイナーが共同で開発したハサミポーセリンの器です。
「ドラマを見ていたらこの器が登場して、カッコいいな~と思って。ブランドをインスタで突き止めてネットで購入しました。スタッキングできるので収納しやすいし、盛り付けた料理がすごく映えるんです」(美穂さん)
お店気分でキンミヤを一杯、が至福の時お酒が好きな工さん。今はなかなか外に飲みに行けませんが、リノベーションしたこの部屋だと、毎晩お店気分で飲めるのがお気に入りです。
晩酌の相棒は、工さんが「無限に飲めちゃうんですよね」と太鼓判を押すキンミヤ焼酎。冷蔵庫で冷やしたキンミヤグラスもスタンバイ。
暮らしのアイデア
「吊るす収納」を徹底して掃除をラクに「水回りの掃除の手間をできるだけカットしたい」という美穂さん。洗面台まわりは歯ブラシも1本ずつ吊るす収納にして、水あかが発生しない工夫をしています。
リノベーションのときに取り付けた吊り下げ用のバーは、実際に歯ブラシを当ててみて、ちょうどいい位置につけてもらったそう。水栓を壁付けにしたのも、水あかの発生をおさえるためというからさすが!です。
こちらはキッチンのシンクの内部です。すぐにヌルヌルになるスポンジ用の受け皿は使わず、スポンジも「吊るす収納」に。マーナの製品を愛用しています。
これからの暮らし
専用庭をもっと充実させて、子ども部屋も整理したい植物が伸び放題で足の踏み場もないくらいだったという専用庭は、人工芝が敷かれた気持ちのいいスペースに様変わり。
「キャンプ道具を持ち出してここで食事をすることもあるんです。今後は日よけをつけたりして、もっとこの場所を充実させたいですね。できれば水道もつけて、子どもとプール遊びもできるようにしたいです。子ども部屋として設けた部屋も、今は倉庫状態になっているので、徐々に整えていきたいと思っています」(工さん)
理想の空間をつくるべくデザイナーさんとの打ち合わせに大忙しだった美穂さんと、それをあたたく見守っていた工さん。入居して数カ月後にコロナウイルスが発生し、外出もままならない事態になりましたが、家にいる時間が長くなったからこそ「テンションの上がる家になってよかった」と美穂さん。
来年の夏は専用庭から、プールで遊ぶ創吉くんの大きな笑い声が聞こえてきそうです。
Photographed by Kenya Chiba
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